子どもが3歳までは所定労働時間を短くして働ける制度がある。子育てのための離職を防ぎ、仕事と子育ての両立を支援する制度で、利用者が増えているが、一方では時短が仕事に及ぼす影響など企業に波紋も呼んでいる。
子育てのための時短制度を知っていますか?

 会社は「育児のための短時間勤務制度」を設けなければならないわけだが、制度の内容は意外に知られておらず、ママ友との情報交換で制度を知った労働者から人事部に問い合わせがあることなども多いようだ。自社の制度についてこの機会にぜひ確認していただければと思う。

 「育児のための短時間勤務制度」では、1日の所定労働時間は多くの企業が7~8時間であるが、これを原則6時間(5時間45分~6時間)とする措置を設けることが義務となっている。
 子育てをしている人にとって、所定労働時間は「短いほうが助かる」ように思える。しかし、時短で働かない分は無給とする会社がほとんどなので、労働時間を短くすると収入が少なくなってしまう。だから、短縮後の所定労働時間が5時間しかない、というのは認められない。原則6時間とする短縮があったうえでなら、選択肢を増やすという意味で4時間や5時間を設けることも、逆に6時間半といったあまり短縮しないパターンを設けることもOKだ。
 1日の所定労働時間を原則6時間とするという内容であって、所定外労働(残業)させてはいけないということではない。よって、残業はさせても良い、ということになる。しかし、子育ての時間を確保するというのが本来の目的なので、頻繁に残業があるのは望ましくないので、会社としての配慮が必要だ。
 どうしても残業できない労働者もいるだろう。この場合、労働者が3歳未満の子の養育のために「所定外労働時間の免除」を会社に求めると、会社はその労働者を残業させることはできなくなる。労働者は、時短している期間に、あわせて残業もできないということを会社に求めることができるのだ。

 短時間勤務をするとフルタイム勤務者に比べてスキルアップの機会などキャリア形成上のマイナスがゼロではないという問題がある。また、仕事の内容は労働時間に正比例するとは限らないが、フルタイムの人に仕事の負担が偏りがちでそれが職場全体の不満につながるといった面があるのは否めない。多くの会社では短時間勤務中の労働者にどのように活躍してもらったらよいかという悩みを持っている。
 働きやすい職場作りために会社と労働者はコミュニケーションをよくとることが大変重要だ。そして職場全体の働き方を中長期の視点で考えていく必要がある。それを踏まえて会社は労働者のサポートという意味も込めてキャリアデザインを立てさせるのがよいだろう。労働者も時短を単に権利ととらえるだけではなく、人生のステージごとの節目やイベントを織り込んだライフデザイン=人生設計を立てて、将来を思い描いてそれを現在の働き方にフィードバックさせていくことが望まれる。


HRプロスクール 講師 富山節子
(株式会社ブレインコンサルティングオフィス 取締役)

この記事にリアクションをお願いします!