エンゲージメントに関する研究が発展途上の日本で、共同研究に至った背景
ヨーロッパ諸国においては、「ワーク・エンゲージメント(エンゲージメントの学術的表現)」がもたらす「生産性の向上」、「健康増進への影響」に関する研究が進んでおり、十分な結果を得ることができているという。一方、日本では同様の研究はさほど進んでおらず、エンゲージメントがもたらす影響や効果などについては、まだ研究途上である。中には学術的に定義された「ワーク・エンゲージメント」とは違った理解がなされている例も見受けられるという。今回のトランスコスモスとアトラエの共同研究は、前者のデジタルエクスペリエンス本部に在籍する従業員に対して行われ、マネジャーやディレクター、デザイナーやエンジニアなど、幅広い職種が対象とされた。調査では、オランダのユトレヒト大学で提唱された「ワーク・エンゲージメント指標」との関連性・妥当性が示されている「wevox」のエンゲージメントスコアを利用しており、海外の先行研究を日本人向けに行った形だ。
エンゲージメントと生産性には相関関係が「ある」と確認
2019年第1四半期の結果を見ると、管理職のエンゲージメントスコアが10ポイント上昇するごとに、前年対比売上伸長率が12.5%程度上昇するという相関関係が認められた。調査対象は、広告運用やシステム開発などに担当している従業員で、職種をまたいで協力し合う「チーム」であったため、チームワークの労働がエンゲージメントと生産性に関連性を生み出すことが認められたとしている。この結果、エンゲージメントと生産性には因果関係があることが示されたといえよう。「昇格」はエンゲージメントスコアを向上させ、離職防止の効果が期待できる
さらに同年の「昇格対象者」に注目すると、エンゲージメントを構成する5要素のうち「待遇」と「組織への共感」の2要素が大きく向上しており、残る3つの要素「仕事への熱中」、「チームワーク」、「健康的な職場」についてもわずかながら向上したことがわかった。昇格には、「エンゲージメントスコアの向上」、「離職防止」、「生産性向上」に効果が期待できることが確認できたという。人材定着と生産性向上のカギは「エンゲージメントの向上」
今回の研究結果で、「エンゲージメントスコアの向上」が「生産性の向上」に繋がること、そして「昇格対象者のエンゲージメントスコア向上」が「離職防止」に繋がることが明らかとなった。働き方改革関連法の施行が間近となり、企業では「生産性向上」や「離職率防止」など、さまざまな目標が掲げられている。その反面、具体的な改善方法や明確な数値化が曖昧なままになっていた。この研究結果が、より効果的な働き方改革を実現していくヒントになることが期待される。