株式会社マイナビは2023年7月18日、「2024年卒企業新卒採用活動調査」の結果を発表した。同調査は2023年6月時点の2024年卒(以下、24卒)の採用活動および、2025年卒(以下、25卒)の採用計画について行われた。調査期間は2023年6月2日~20日で、上場企業254社、非上場企業2,848社の計3,113社より回答を得ている。これにより、24卒生の採用活動の実態や、採用における問題点が明らかとなった。
24卒採用の課題は7割が「エントリー数の不足」、母集団形成が困難に。求職者へのアピールとして「初任給引き上げ」を行う企業も

6月時点で採用充足率「5割以上」の企業は約4割。コロナ禍初年度の2021年卒を下回る

企業の24卒採用活動は選考や内々定の時期に入り、本格化する採用活動の中で新卒採用に課題を抱える企業もあるだろう。2023年6月時点での、企業の24卒採用はどのような状況にあるのだろうか。

はじめにマイナビは、「6月時点での採用充足率」を尋ねた。すると、「5割以上」は前年比4.8ポイント減の39.5%で、新型コロナの影響が大きかった2021年卒の40.9%を下回った。

また、インターンシップの実施有無別に見ると、インターンシップを実施した企業で採用充足率を「5割以上」としたのは、50.1%だった。一方で、実施しなかった企業は「0割」が53.5%だった。同社によると、「就活の準備期間に学生と十分に接点が持てたかどうかが採用充足率に影響する一つの要素となっているようだ」との見解を示している。
2023年6月時点での採用充足度

採用課題には7割が「母集団の不足」と回答。学生はインターン時点で企業を選定か

次に同社は、「採用活動における現時点(同年6月時点)での問題点」を尋ねた。その結果、「母集団(エントリー数)の不足」(70%)が最も多く、2年連続で増加した。2022年卒(23.3%)と比較すると2倍以上増加しており、直近2年で「母集団の不足」が企業にとって深刻な課題となっている様子がうかがえる。

また、同社が「学生のエントリー社数とインターンシップ参加社数」を尋ね、平均値をとったところ、学生のインターンシップの平均参加者数は増加傾向であるのに対し、エントリー社数は年々減少傾向にあったという。このことから、学生は就活の準備期間からすでに応募する企業を絞り込んでいると考えられ、企業の母集団の不足につながっていると推測できる。
採用活動における現時点での問題点

学部卒生・総合職採用の初任給を「引き上げる」企業が7割

続いて同社は、学部卒生の総合職採用について「初任給の引き上げを実施したか」を尋ねた。すると、「引き上げた」が70%と7割にのぼった。
学部卒生・総合職採用の初任給を引き上げたか

給与引き上げの理由は「給与制度の見直しによる全社員の給与引き上げ」が最多に

そこで同社が、初任給の引き上げを行った企業に「引き上げ額」を尋ねたところ、最も多かったのは「5,000円から1万円未満」だったという。

「引き上げの理由」を尋ねると、全体では「給与制度の見直しで全社員の給与を引き上げたため」(53%)が最も多く、次位に「求職者へのアピールのため」が続いた。他方で、上場企業では2位が「定着率を高める・離職を防ぐため」(44.1%)となり、「既存社員のモチベーションアップ」(38.6%)も4割に迫った。就活生へのアピールのみならず、従業員全体のモチベーション・定着率向上や、離職防止に配慮した給与制度の見直しを行った企業もあるようだ。
給与引き上げを行った理由

「生成系AIの活用を実感」する企業は1割に満たず。使い方に配慮を求める声も

さらに同社は、「学生がAIを活用して就活している実感はあるか」を尋ねた。すると、「実感がある」は4.6%、「実感はない」が95.4%と、実感があるとした企業は1割に満たなかった。

学生を対象に行った「マイナビ2024年卒大学生活動実態調査(5月)」によると、就活で生成系AIの利用経験がある学生は約2割だったという。このことから、学生の利用経験と企業の利用実感には差があることがうかがえる。

自由回答を見ると、「面白い使い方をした学生がいれば評価したい」や「効率化のために上手に使用することは推奨する」と、好意的に捉える声があがったという。一方で、「面接等で実際に話した際に齟齬のある発言をしてしまう可能性がある」や「入社がゴールではないので自分を誇張しないように配慮して使用してほしい」など、“選考の通過を目的とした選考書類の作成”をするためにAIを活用することで、就活生本人の意見と乖離した内容にならないよう注意を求める声が寄せられたとのことだ。
学生がAIを活用して就活している実感はあるか
本調査結果から、6月時点での24卒生の採用充足率が「5割以上」とした企業は、4割程度にとどまることがわかった。また、学生のエントリー平均社数は5ヵ年で年々減少傾向にあり、「母集団の不足」が企業の深刻な課題となっていることが明らかとなった。初任給の引き上げにより求職者へのアピールを行う企業も多い中で、今後も24卒採用を進める企業や25卒生の採用計画を立案する企業では、学生のエントリー前までに自社の魅力を発信することや、求職者の特徴を見抜いていくことが重要となるだろう。

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