「人材育成」分野の取り組みで経営層と現場社員の認識に10ポイント以上の差
2023年3月期決算から、上場企業等を対象とした有価証券報告書について、人的資本の情報開示が義務化された。義務化からおよそ1ヵ月半経った調査時点で、人的資本開示に関する取り組みへの認識に、経営者・人事(以下、経営層)と一般社員・管理職(以下、現場社員)との間で差はあるのだろうか。調査の中でリクルートマネジメントソリューションズは、「人的資本開示の7分野19項目の中で、勤務先で取り組むことができていると思う項目はあるか」を尋ねている。すると、経営層と現場社員では、全体的に回答のギャップが見られた。特に「人材育成」分野の3項目においては10ポイント以上の差があり顕著だった。また、現場社員の回答が最も多かったのは「取り組むことができている項目はない」(40.5%)で、経営層の回答率(21.8%)より18.7ポイント高く、大きなギャップが生じていた。
他方で、「流動性」(採用・維持・サクセッション)の項目においては、経営層・現場社員ともに回答率が低かった。
19項目中18項目とほぼ全ての項目で経営層と現場社員の間に認識の差があることから、同社では「取り組む内容自体の改善だけでなく取り組んでいる内容を社内に伝達することも必要だと考えられる」との見解を示している。
“効果あり”項目は経営層・現場社員とも「労働慣行」。“効果なし”項目には差異あり
次に同社は、「勤務先で取り組んでいる項目がある」との回答者を対象に、人的資本開示の7分野19項目のうち、「取り組んで効果が出ている項目」と「取り組んでいるが効果が出ていないと感じる項目」を尋ねた。「取り組んでいて効果が出ている項目」を見ると、上位5つは経営層と現場社員ともに「労働慣行」分野(組合との関係、賃金の公平性、児童労働・強制労働)が多くあげられた。対して、「取り組んでいるが効果が出ていない項目」を見ると、経営層では上位5つの中に「流動性」分野(採用・サクセッション)の2項目、現場社員では「人材育成」分野(リーダーシップ・育成・スキル・経験)の全項目があがった。
これを受け、同社では「経営層では経営視点での人材確保や後継者育成に課題感をもつ一方で、現場レベルでは人材育成に課題を感じており、視座の違いでの差が生じていることが考えられる」とした上で、人材の採用や育成は「取り組んでいるものの効果が出ていないと感じる項目」として、企業は他項目よりも課題を多く感じていると推察している。
「離職率」と「休職率」の平均は1割前後、「育児休業取得率」は約4割に
続いて同社は、経営者および人事を対象に、「ダイバーシティ」の分野において「離職率」、「休職率」、「育児休業取得率」を調査した。すると、「離職率」の平均は11.5%で、「5%未満」が31.5%と最も多く、「10%以上20%未満」が26.9%で続いた。「休職率」は平均7.8%となり、最も多かったのは「0%以上5%未満」の48.6%でおおよそ半数を占めた。
また、「育児休業取得率」の平均は38.1%となり、「20%未満」が47.6%で最多、次いで「80%以上」が25.1%だった。育休取得率は、二極化していることがうかがえる。