株式会社フリーウェイジャパンは2023年2月15日、「インボイス制度に関する調査」の結果を発表した。調査期間は2023年1月19日~25日で、中小企業と小規模企業者のうち課税事業者である計436名より回答を得た。これにより、令和5年10月1日のインボイス制度開始に向けた“適格請求書発行事業者”の登録申請状況や、開始時からの実務対応に向けた準備状況が明らかとなった。
10月のインボイス制度開始を前に、中小課税事業者の6割が「対応不可能・わからない」と回答。“請求書の電子化”に課題か

適格請求書発行事業者を「既に申請済み」は7割に迫る

消費税の仕入税額控除の方式として「インボイス制度」が令和5年10月1日より開始される。インボイス(請求書)の発行には、適格請求書発行事業者の登録が必要となるが、制度開始日からの請求書発行に向けた課税事業者登録はどの程度進んでいるのだろうか。

はじめにフリーウェイジャパンは、「適格請求書発行事業者として申請しているか」を尋ねた。すると、「既に申請済み」が68.6%、「申請する予定」は16.5%となり、全体の85.1%が申請済み、もしくは申請予定であることがわかった。
適格請求書発行事業者の申請状況

インボイス制度の理解度は6割超。申請状況に比べて低い傾向に

次に同社は「インボイス制度の理解状況」を尋ねた。その結果、「深く理解している」は7.1%、「理解している」は59.6%で、合計66.7%となり、先述の「適格請求書発行事業者」としての申請状況に比べて理解度は低いことがうかがえる。
インボイス制度の理解状況

申請理由は本来の目的である「正確な消費税額の把握」が1割以下に

続いて同社は、適格請求書発行事業者登録の「申請済み/申請予定」とした回答者に「登録する理由」を尋ねた。すると、「取引先との契約継続のため」(46.6%)が最も多く、以下、「国の方針だから」(42.6%)、「取引先からの要請があったから」(19.7%)と続いた。

一方で、「消費税額を正確に計算できるから」(8.4%)は1割に満たず、“正確な消費税額を把握できる”という制度本来の目的を理由とした事業所は少数となっていた。
適格請求書発行事業者の申請理由

インボイス制度の対応状況は企業によってバラつきあり。2割弱は「情報収集」の段階

次に同社が、全体に「インボイス制度の対応状況」を尋ねたところ、「既に対応済みである」は23.3%で、「対応に向けて既に具体的な準備を始めている」は18.6%だった。その他、「具体的な対応方法を検討している」が15.8%、「対応の必要性を感じているものの未対応」が12.6%、「まだなにも動いていない(対応していないし予定もない)」が9.9%と、いまだ対応状況にバラつきがあるようだ。また、「対応方法について情報を収集している」という課税事業者も18.3%と、2割弱いることがわかった。
インボイス制度の対応状況

制度開始までの対応は「不可能」と「わからない」を合わせて6割に

続いて、何らかの準備を進めている(検討中含む)という回答者に対し、「10月までの制度開始の対策を行っているか」を同社が尋ねた。その結果、「行った(行う予定)」が63.1%で、「行っていない」が36.9%だったという。

さらに、「10月の制度開始までに、請求書の電子化およびその保存対応を行うことが可能か」を尋ねたところ、「可能」が39.7%だった。反対に、「不可能」(18.8%)と「わからない」(41.5%)は、合わせて60.3%と6割にのぼった。
制度開始までに完全な請求書の電子化・保存対応が可能か

申請時の課題は「経理業務の煩雑化」が最多

続いて同社は、「適格請求書発行事業者の申請済みもしくは申請予定」という課税事業者に、「申請にあたって困ったことや悩んだこと」を尋ねた。すると、「経理業務が煩雑化すること」(37.5%)が最も多く、他にも、「消費税の控除額が減少する恐れがあること」(19.7%)、「取引先に申請が必要か確認する必要があること」(14.6%)が上位にあがった。
申請にあたって困ったこと・悩んだこと

制度対応の課題は「紙と電子の請求書の混在」がトップに

最後に同社は、インボイス制度の対応を進めている課税事業者を対象に、「インボイス制度対応にあたっての課題や大変だと感じる点」を尋ねた。その結果、4割以上が回答した上位は「紙と電子の請求書の混在」(48.1%)と「取引先が適格事業者であるかの確認」(44.8%)、「請求書の電子化およびその保存対応」(44.3%)となった。
インボイス制度対応にあたっての課題や大変だと感じる点
インボイス制度の開始にあたり、適格請求書発行事業者への申請登録を進める課税事業者は8割となったが、制度の理解度や実務対応への準備状況にはバラツキがみられる。また、多くの企業で「紙と電子の請求書の混在」が対応へのハードルとなっていることもうかがえた。10月の制度開始に向けて、自社での課題をいま一度洗い出しておきたい。

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