株式会社ラーニングエージェンシーは2023年1月11日、「『人事の課題』実態調査(人事の取り組み編)」の結果を発表した。本調査は、同社の研究機関であるラーニングイノベーション研究所とともに、2022年10月26日~11月30日に実施し、企業の人事責任者および人事担当者277名(従業員数300人以下:207名、301人以上:70名)から回答を得ている。調査結果から、企業の人事部が取り組みたい課題や、OJTおよびリスキリングの実施率などが明らかとなった。
「人材育成・組織開発」に意欲的な人事が9割超も“リスキリング実施率”は2割未満に。現場の課題や求めるスキルは?

人事部が取り組みたいテーマは企業規模に関わらず「人材育成・組織開発」が最多

生産年齢人口の減少や早期離職が問題視される今、人手不足に悩む企業も多いと考えられるが、人事部はどのような課題にフォーカスして取り組んでいるのだろうか。はじめにラーニングエージェンシーは、「人事部として取り組みたいテーマ(課題)」を尋ねた。すると、「人材育成・組織開発」については、企業規模300人以下(以下:300人以下)の企業で90.1%、企業規模301人以上(以下:301以上)の企業で93.7%となり、人事の9割以上が人材育成や組織開発を課題に感じていることがわかった。
人事部として取り組みたいテーマ

大多数の企業でOJTを実施するも「担当者のやり方や精度のバラつき」などに課題か

次に、同社が「OJTを実施しているか」を尋ねると、「実施している」との回答は企業規模にかかわらず95%以上にのぼったという。

そこで、「OJTを実施している」とした企業に対し、「OJTを実施する中で、現場からどのような課題が聞かれるか」を尋ねた。その結果、「OJT担当者によってOJTのやり方や精度にバラつきがある」(300人以下:68.1%、301人以上:77.9%)が、企業規模を問わずトップだった。以下、「OJT担当者は業務指導者のみで、メンタルケアをする仕組みがない」、「OJT担当者任せになっており、各部署内でのフォローやサポートがない」、「OJTの全体像やゴールがわからず、場当たり的になっている」の項目が、企業規模に関わらず多く選ばれた。
OJTを実施している中で現場から聞かれる課題

「リスキリング実施率」は2割未満。取り組んでいるスキルは?

次に同社が、昨今注目が集まっている「リスキリング」の実施率を探るべく、「リスキリングの実施有無」を尋ねた。すると、「実施している」が300人以下/以上ともに2割に満たなかったという(300人以下:12.6%、301人以上:17.9%)。

そこで、リスキリングを「実施している」とした企業に対し、「どのようなスキルについて実施しているか」を尋ねた。その結果、300人以下では「デジタルリテラシー全般」(52.2%)が最も多く、次いで「DXに関する知識」(47.8%)が多かった。一方、301人以上では「DXに関する知識」(58.8%)が最も多く、次いで「デジタルリテラシー全般」(47.1%)となった。301人以上の企業では、「汎用的なビジネススキル」や「プロジェクトマネジメント」のリスキリングも見られ、幅広い分野にて実施していることがうかがえる。
どのスキルについてリスキリングを実施しているか

リスキリング未実施の企業では「習得してほしいスキル」が企業規模によって異なる

また、「リスキリングを実施していない」と回答した企業に、同社が「現業のほかにどのようなスキルを習得してほしいか」を尋ねた。すると、300人以下では「プロジェクトマネジメント」(43.4%)が最も多く、以下、「DXに関する知識」(34%)、「デジタルリテラシー全般」(31.4%)と続いた。一方、301人以上では、「DXに関する知識」および「デジタルリテラシー全般」(いずれも50%)が最も多く、300人以下と比べて「汎用的なビジネススキル」や「OAスキル」が多く選択された。このことから、リスキリングで習得してほしいスキルには、企業規模によって差異があることがうかがえる。
リスキリングにより現業以外で習得してほしいスキル
本調査から、人事部の9割以上が“今後最も取り組みたいテーマ”として、「人材育成・組織開発」をあげていることがわかった。また、新入社員に対するOJTの実施率は高いものの、担当者によって精度が異なるなど課題も多いのが現状のようだ。新年度を迎えるにあたり、既存の従業員へのリスキリングを含め、今後人事部では長期的な人材戦略や人事戦略が必要となりそうだ。

この記事にリアクションをお願いします!