「人的資本経営」に関する企業の課題解決や、取り組み事例の発信を目指す
「人的資本経営」に関しては、国際的に先進的な取り組みが行われている。2018年には、国際標準化機構(ISO)が企業・組織における「人的資本の情報開示」に特化した国際規格「ISO30414」を発表し、人的資本報告に関する国際標準ガイドラインが定められた。その後2020年には、米証券取引委員会(SEC)が上場企業に対し、「人的資本の情報開示」を義務付けている。日本でもこうした流れを受け、2020年に経済産業省より「持続的な企業価値の向上と人的資本に関する研究会報告書」(通称「人材版伊藤レポート」)が発表され、持続的な企業価値の向上を目指す方針が示された。また、政府は2023年から、全ての上場企業に対し「人的資本情報の開示」を義務付ける方針だ。その一方で、国内における「人的資本経営の具体的な実践例」はいまだ少なく、各企業が手探りで準備を進めざるを得ないのが課題となっている。
そうした課題を解決するべく設立されたのが、「人的資本経営推進協会」だ。同協会では、各企業の先進的な実例の研究および情報発信を行い、より一層の「人的資本経営」の普及を図るという。また、人的資本経営の推進における現場の課題を取り上げ、解決策を模索することで普及を支援する考えだ。
なお、同協会の代表理事には、株式会社ZENKIGEN代表取締役の野澤比日樹氏ら3名が、理事には株式会社i-plug代表取締役の中野智哉氏ら3名がそれぞれ就任した。また、顧問は一橋大学CFO教育研究センター長/人的資本経営コンソーシアム会長である伊藤邦雄氏が務めている。
同協会は今後、行政や企業と連携し、「人的資本経営」に関するさまざまな取り組みの情報収集および発信を行っていく考えだ。
2023年に義務付けられる「人的情報開示」への準備等に課題を抱えている企業にとって、同協会は心強い存在となるだろう。今後発信される他社の実践例などに注目し、自社の経営・人事戦略に役立てていきたい。