株式会社パーソル総合研究所は2022年6月30日、「女性活躍推進に関する調査」の結果を発表した。同調査は企業調査と従業員調査から構成されており、企業調査は2021年12月20日~24日に実施。全国の、従業員規模50名以上の日本企業に勤務する20~60代の男女で、経営企画担当を含む人事担当者400名、経営層400名の合計800名から回答を得ている。従業員調査は2022年3月25日~30日に実施され、従業員規模50名以上の企業に属する20~50代の男女5,170名から回答を得ている。これにより、企業における女性管理職の割合の実態や、女性活躍を推進するうえでの課題などが明らかになった。
「女性管理職」の割合は6割以上の企業で10%未満に。“管理職意向の向上”には組織的原因の解決が有効か

女性管理職比率が「0%」の企業が2割超など、1割未満の企業が6割以上を占める

2022年4月より、「改正女性活躍推進法」が従業員規模300名以下の企業にも適用されているが、実情として女性管理職はどの程度いるのだろうか。はじめにパーソル総研は、企業調査において女性管理職の実態を調べている。従業員規模50人以上の企業800社を対象に、各社の女性管理職の比率に基づいて、0%の企業を「フェーズI」、1%~10%未満を「フェーズⅡ」、10%~20%未満を「フェーズⅢ」、20%以上を「フェーズⅣ」とし、あてはまるフェーズについて尋ねた。すると、「フェーズI」が25.3%、「フェーズⅡ」が41.5%で、女性管理職の比率が10%未満の企業の合計は66.8%となった。
女性管理職の割合(比率のフェーズごと)

女性活躍推進における課題は「女性の昇進意欲がない」が最多

続いて、企業の人事・経営層に対し、「女性活躍を推進するうえで、感じている課題」について複数回答で尋ねると、「女性の昇進意欲がない」が42.4%で最も多かった。以下、「十分な経験を持った女性が不足している」が41.6%、「登用要件を満たせる女性が少ない」が40.8%と続いた。これらの課題は、フェーズ(女性管理職の比率)別に見ても、共通して課題感が高かったという。
女性活躍を推進するうえで、企業の人事・経営層が感じている課題

「管理職意向保有者」の割合は「女性管理職比率」に関わらず横ばいに

また同社は、女性活躍が進んだ場合に、女性の管理職意向に変化はあるのかを探るべく、個人を対象に「管理職意向保有者」の割合を調べ、フェーズごとに回答を比較している。その結果、「フェーズI」が14.3%、「フェーズⅡ」が16.9%、「フェーズⅢ」が16.2%、「フェーズⅣ」が13.4%で、いずれのフェーズでも大きな差はなかった。組織内の女性管理職比率の高さと、管理職意向のある女性の割合は、相関していないことがうかがえる。
管理職意向保有者の割合

企業での残業対策は“管理的な施策”が多く、“組織的原因の改善施策”は少数に

次に同社は、「企業の実施する残業対策」と「管理職意向」に関連性があるのかを調べている。まず、経営・人事層に対し、「企業における残業対策」について聞いたところ、「退勤管理の厳格化、チェックシステムの導入」(70.5%)や、「ノー残業デーの設定」(45.8%)、「残業の原則禁止ないし事前承認制」(40.8%)といった、労働時間の上限を厳格に管理する施策は実施率が高かった。

一方で、「人事評価への時間あたりでの成果観点の包含」(27.3%)や「残業削減のためのマネジメント層への研修」(29%)、「管理職の短時間勤務制度」(21.1%)といった、残業を生じさせる組織的な原因にアプローチするような施策の実施率は、2~3割程度と低いことがわかった。
企業における残業対策の実施率

残業に関する「組織的原因の改善」に努める企業は「管理職意向のある女性の割合」が高く

上記の結果をふまえて、同社は「組織的な残業対策」の実施有無と、管理職意向がある女性の割合との関連性を調べている。すると、「人事評価への時間あたりでの成果観点の包含」を実施している企業では、管理職意向がある女性の割合が、実施なしの企業の1.9倍だった。また、「管理職の短時間勤務制度」や「残業削減のためのマネジメント層への研修」を実施している企業では、同割合が2.6倍となった。
組織的な残業対策の有無と管理職意向保有者の割合

女性が知りたい転職先企業の「人的資本開示項目」は「男女別の平均賃金」や「女性管理職比率」

続いて、同社は個人を対象に、「転職先企業について知りたい主な人的資本開示項目」について尋ね、回答を男女で比較した。すると、女性では「男女別の平均賃金」や「女性管理職・役員比率」が高く、男性では「次世代経営者の育成計画」や「重要ポストの内部登用率」が高かった。
転職先企業について知りたい主な人的資本開示項目
本調査より、企業における女性管理職の割合や、管理職意向のある女性の割合などがわかった。女性活躍をより推進したい企業では、既存社員の管理職意向の向上に有効な施策や、求職者に対して開示する情報などについて検討してみてはいかがだろうか。

この記事にリアクションをお願いします!