企業のデジタル活用には「地域格差」が生まれている
デジタル革新と多様な人々の想像・創造力の融合によって社会課題を解決し、価値を創造する社会「Society5.0」の実現に向け、国をあげた取り組みが進んでいる。しかし、東京都・大阪府・愛知県などの大都市圏と比べ、地方では未だに「取り組み自体が限定的」というのが現状だ。その背景として、地方には企業のデジタル化に対応できる人材が少ない上に、企業が高度デジタル人材と接点を持つ機会も少ないという理由がある。実際に、地域中小企業の中には、大都市圏の高度デジタル人材の支援を期待する声も多い。一方で、高度デジタル人材の中には「副業・兼業」といった多様な働き方を視野に入れ、新しい活躍の場を探す人も増えている傾向にあるという。
経産省はこれらの事情に着目し、地域中小企業と高度デジタル人材が、デジタル技術を活用した新たなビジネスモデル案を協働で作成する「ふるさとCo-LEADプログラム」の実施を決定した。「地域中小企業」と「高度デジタル人材」の出会いの場を提供して両者のマッチングを図り、地方における「デジタル技術活用の促進」と「地域課題解決」を目指すという。
地域中小企業と高度デジタル人材との「マッチングイベント」を開催
本プログラムでは、主に3つの取り組みを実施する。それぞれの具体的な事業内容は以下の通りだ。(1)地域中小企業と高度デジタル人材の出会いの場および関係構築の場の創出
全国105地域に存在する「地方版IoT推進ラボ(以下、ラボ)※」の中から3地域を選び、15名程度の高度デジタル人材との「ミートアップイベント」を開催する。ラボ側は、地域産業における課題やデジタル化に意欲のある地域中小企業等の紹介や、「フィールドワークツアー案(現地視察、関係者へのヒアリング)」を示す。また、高度デジタル人材はセッションを通じて自分のスキルをPRできる場とする。実際に、ミートアップイベントでマッチングしたラボと高度デジタル人材は、その後2泊3日程度の「フィールドワークツアー」を開催。デジタル技術を活用した新たなビジネスモデルを検討する地域中小企業の現場を、高度デジタル人材が視察する。両者は意見交換を行った上で、高度デジタル人材が自身のスキルが生かせる見込みのある地域中小企業を決め、その企業のビジネスモデル案の実現につながるデジタル技術やアイデアをプレゼンするという流れを想定している。
(2)地域中小企業の新たなビジネスモデル案の作成
マッチングした高度デジタル人材のサポートのもと、地域中小企業が新しいビジネスモデル案を作成する。(3)高度デジタル人材の実績等の見える化
ラボをはじめ、その他の地域コミュニティと、関連するスキルや実績を持つ高度デジタル人材がつながりを持てる仕組みとして、高度デジタル人材紹介サイトの構成案を提案する。一連の流れは以下の「ふるさとCo-LEADプログラム事業全体像」に示されている通りで、2021年8月にかけて実施地域の募集・選定を実施し、10月を目処にミートアップイベントを開催。2022年2月には最終報告会を行う予定だ。