改正点のポイントは、
(1)正社員と差別的取扱いが禁止されるパートタイム労働者の対象範囲の拡大
(2)「短時間労働者の待遇の原則」の新設
(3)パートタイム労働者を雇い入れたときの事業主による説明義務の新設
(4)パートタイム労働者からの相談に対応するための事業主による体制整備の義務の新設
パートタイム労働法の対象である「短時間労働者(パートタイム労働者)」は、「1週間の所定労働時間が同一の事業所に雇用される通常の労働者の1週間の所定労働時間に比べて短い労働者」とされている。よって、会社内で「パートタイマー」「アルバイト」「嘱託」「契約社員」「臨時社員」「準社員」などと区別していても、この条件に当てはまる労働者は、すべてパートタイム労働者である。
そこで、自社のパートタイム労働者の労働条件について考えてみてほしい。正社員と同じようにフルタイムで働いている有期雇用の労働者(※)は、いないだろうか。
パートタイム労働者と正社員が同じ仕事をしている、むしろパートタイム労働者が正社員に仕事を教えている、という状況はないだろうか。
※フルタイムで働いている有期契約者については、パートタイム労働法の適用やそれに基づく支援措置等の対象として位置づけられていないため、別途、厚生労働省がガイドラインを定めている。
今回は、パートタイム労働法の対象となる、1週間の所定労働時間が同一の事業所に雇用される、通常の労働者の1週間の所定労働時間に比べて短い労働者について検討する。
パートタイム労働法が改正されるということで、すでに就業規則の見直しを検討している会社も多いことだと思う。まずは、次の検討を行ってほしい。
上で述べた改正ポイントの(1)正社員と差別的取扱いが禁止されるパートタイム労働者、即ち正社員と同視すべきパート労働者が、自社に存在するのか、あるいは今後存在する可能性があるのかを確認することである。
・存在するのであれば、今後、対象者を全員正社員化する予定はあるのか。
・対象者のなかで正社員を希望しない者を、パートタイム労働者のままにしておくのか。
これらを検討しなければ、パートタイム労働者の就業規則を作ろうとしても、どこまでを対象とした就業規則を作るのか、それぞれを分けて、別規程とするのかが決まらない。気をつけたいのは、パートタイム労働法だけでなく、労働契約法も念頭に置くことが必要だ。
労働契約法は、2013年の改正で、有期労働契約が通算5年(2013年4月以降の契約からカウント)を超えて雇用されることになった者が、無期労働契約を申し込んだときは、無期労働契約に転換するとなった。無期=正社員ではないが、だからこそ、パートタイム労働者に有期だけでなく、無期の者も存在することになり、それぞれについて、どう処遇するのかを決定しなければならなくなった。
全労働者のうち3割以上を非正規労働者が占め、パートタイム労働者を、一様に補助的業務の担当者と位置付けることは現実的ではない。実際に企業の主力として、責任ある業務を担っている者も多い。
今回の改正では、有期、無期に関わらず、
・職務の内容が正社員と同一、
・人材活用の仕組みや運用などが正社員と同一であれば、
⇒正社員と同視すべきパート労働者 ---- 差別的取り扱いが禁止とされた。
具体的には、正社員に住宅手当や家族手当を支給していれば、正社員と同様に支給対象となる、ということである。
研修や賃金、評価制度も正社員と同様の対応が必要になることを考慮して、人件費負担の増加は避けなければならないが、自社で運用可能な雇用管理の改善に着手する必要がある。
今から準備しておいて早すぎるものではない。
鈴木社会保険労務士事務所 鈴木 早苗