「オリジナル」の等級基準を作成する
評価基準を作るとき、「何かひな形ありますか?」とよく聞かれます。自社とよく似たような業種や規模の基準を使えば、それらしい基準にはなります。ただ、評価基準はその企業ごとで異なるはずです。規模や業種が同じでも、その会社のポリシーや目指す方向でまったく違うのです。ですから、一般的ではなくオリジナルでなければなりません。この基準が今後の人事評価制度で運用のキモになります。前回、従業員に順位を付けて明らかに能力差が認められるところに、線を引いていただくことをお伝えしました。それにより、明らかに格の違うところを発見できたと思います。線を引いたところが能力の分かれ目です。この能力の分かれるところが等級となります。
例えば、上位から3等級(管理職)、2等級(中堅社員)、1等級(一般職)です。相撲で言えば、横綱、大関、関脇のようなものです。相撲は番付で大きく能力が異なります。これは格が違うという意味です。等級も同じです。そのグループで実在する従業員の共通項を探し出します。そして探し出した共通項を等級の基準とします。
基準を言葉で表すポイントは、その等級の従業員が具体的に「~することができる」という具合に箇条書きで結構です。「3等級の管理職であれば、〇〇はできてほしい」といった企業側の希望を入れないようにしてください。今いる従業員から作ることがよりリアルになります。現実的でないスーパーマンのような基準を作っても、モチベーションは上がりません。
評価基準を作成する
次に評価基準の作成ですが、まず「社内にどのような仕事があるか?」を確認します。これは職務調査や職務分析とも呼ばれていますが、難しく考える必要はありません。仕事の棚卸しを行うイメージです。実施するのは部門(営業部、製造部、総務部など)単位で、部門内でも職種(営業、営業事務、製造加工・研磨など)とします。実施者はその部門責任者がベストですが、経営者の方が行っても構いません。また、実際にその仕事を既存の従業員の方ができているかどうかは問いません。
それぞれの実施者が、月・週・日という期間に合わせて仕事を棚卸します。仕事の数も、各部門すべて同じ数にする必要はありません。できるだけ簡単に実施してください。
本来、評価とは目の前の業務を具体的にどのように行動(職務行動と呼んでいます)して、どれぐらい達成したかを見るものです。まず、与えられている業務の成果を上げなければ業績は向上しません。積極性、協調性、柔軟性、誠実さなどを評価する必要はないとはいいません。ただ、これらは能力の名称にすぎず、具体的な評価基準ではないのです。評価とはある職務行動を見ることで、その職務行動によってどのような結果になったか? を見ることが重要となります。
これが、「今いる従業員から作る」ということです。一般的によく見かけるこのような評価基準で評価するためには、ある職務行動を見るはずです。
この棚卸しされた仕事を評価基準に利用します。そして、できるだけ判断に迷わないぐらいまで落とし込んでください。「評価する人で点数にバラツキがある」とよく聞きます。それは、評価する基準があいまいだからです。誰が見ても評価の結果を「〇」と「×」に判断できるのがベストです。
そして、一度作って終わりではありません。企業には経営方針があり、経営目標があり、それを達成するために経営戦略があります。経営戦略にあたる部分が棚卸しされた仕事になります。目標が変われば、戦略も変わるはずです。常にメンテナンスが必要です。