「従業員体験の向上」が多くの中小企業で遅れか。求められるテクノロジー整備
近年、世界各国の経済成長において中小企業の発展が不可欠であると考えられている。それは、従業員1,000人未満の中小企業に務める労働人口が90%にも上ること、また、多くの先進国におけるGDPの55%を占めていることからも明らかだ。レノボ・ジャパンの国際調査によると、調査対象の中小企業に在籍する従業員の40%が「労働環境に不満を感じている」という結果だった。また、従業員の41%は「柔軟な働き方をするためのテクノロジーが不足している」と回答している。この背景としては、時間や場所にとらわれずに働くことができる「テレワーク(モバイルワーク)」を導入する企業が増加したことがあると考えられる。従業員が、共同作業およびワーク・ライフ・バランスや仕事とプライベートを統合するワーク・ライフ・インテグレーションの実現に必要なテクノロジーを利用したいと希望している一方で、中小企業は「従業員体験の向上」という面で立ち遅れているという課題があるようだ。
以前公開された、「Forresterレポート」からも、従業員体験の向上が業績の改善や離職率の低下といった効果が期待できることがわかっている。企業に求められるのは、従業員が働きやすい環境の構築とそれに向けたテクノロジーの整備であり、作業効率の低下を解消することが双方のギャップを埋める鍵となるだろう。
フレキシブルに働ける環境構築には最適なテクノロジー選択が必須
同調査では、雇用主の約77%が「従業員体験の向上」を最優先事項として考えていること、また、購買部門の30%がテレワーク時にも有効なスマート会議ソリューションの導入を拡大したいと考えていることもわかった。一方で、実際に職場のテクノロジー環境を最新の状態にリニューアルする際には、多くの問題が生じる場合もあるという。実際に、企業の購買部門の45%は「すべての要求を満たすための予算がない」と回答している。この他「社内のIT部門がリニューアル後に生じる問題に対応できる技術や経験がない」、「デバイス・ベンダーから適切な情報が得られない」、「製品サービスの区別が困難」といった声も上がった。さらに、中小企業の従業員のうち71%が仕事でデスクトップPCを使用している一方、74%はクラウドベースのツールを利用していないという現状も明らかになった。調査では、従業員の約38%が「ファイルの転送や読み込みに時間がかかることで仕事にも支障が出る」と回答している。従業員には業務に最適なテクノロジーを選択できる余地がないことから、企業側がテクノロジーの改善をはかることは急務であると推測できる。
従業員体験を向上するためには、最適なデバイス選択が必要だ。ノートパソコンやスマートフォン、2-in-1といった携帯可能なデバイスに加え、ARやVRといった次世代のスマートデバイスへの投資が企業のIT意思決定者に求められる。これが実現すれば、遠方からの作業もスムーズに進み、従業員のワーク・ライフ・インテグレーションも実現できるのではないだろうか。中小企業においては、フレキシブルな働き方の実現やテレワークができる環境創出を目的とした積極的なテクノロジーやツールの活用がより一層必要となるだろう。