昨今は「採用難の時代」と言われ、求人の募集をかけても応募すら来ないというケースも珍しくありません。こうした超人手不足の中、派遣社員の地位は、同一労働同一賃金の実施により、日々高まりつつあります。そんな派遣社員の方を、正社員として迎え入れれば、定着率がアップするのですが、それはいったいどういうことなのでしょうか?どのように進めていけばいいのかと合わせて見ていきましょう。
派遣社員を正社員へ登用すれば、定着率アップ? その理由とは?

採用とは「お見合い」です!

新卒の社員やアルバイトの人に来てもらったはいいものの、なかなか定着せず、すぐに退職してしまう ── そんな経験はありませんか? それは企業側と従業員側で、ミスマッチが起こってしまっている可能性が高いです。

企業側からすれば、面接や適性検査をしたはずなのに、「期待していた人材ではなかった」。新人従業員の方からすれば、いざ働いてみると、想像していた職場とは違っていたため慣れることができず、「こんなはずではなかった」ということになります。

しかし、企業側からすれば、退職されてしまうと、また採用業務が始まりますから、これまで採用のためにかけたコストも無駄になりますし、また募集をかけても、すぐに応募者が集まる保証はありません。

そこで、「派遣社員に来てもらう」という選択肢が、強力な武器になります。派遣会社と契約し、労働者を派遣してもらうわけですが、通常のアルバイトとは違い、派遣会社の看板を背負って派遣されてきますから、ある程度のスキルを持った状態で会社に来てくれることが多いです。

また万が一、その派遣社員が来なくなったとしても、別の派遣社員に来てもらうようにすれば、自社で採用業務を行わなくてもよいので、コストもかかりません。

しかも、雇用保険や社会保険などの保険料は派遣会社が負担しますので、通常のアルバイトよりも時給は高くなりますが、保険料の負担や手続きから解放されるということもあって、気軽に利用できるでしょう。

採用とは「お見合い」のようなもので、派遣とはいえ仕事をするのは人間ですから、相性というものがあります。派遣社員を利用するということは、期間中にその派遣社員さんの人柄をじっくりと見ることが出来ます。

そこでもし、その派遣社員さんを「ぜひ我が社に!」ということになれば、契約期間が切れるタイミングでスカウトをされてみてはいかがでしょうか。

派遣社員さんもあなたの会社で働いている間、あなたの会社を見てきたわけですから、あちら側も「ぜひ!」ということであれば、きっと長く働いてくれるのではないでしょうか。

もちろん派遣会社さんの立場もありますので、良好な関係を保てるよう配慮することを忘れてはなりません。

派遣社員を自社の正社員にすると、助成金がもらえます!

厚生労働省が管轄している「キャリアアップ助成金」というものがあります。

その中に「正社員化コース」というものがあり、これはアルバイトやパートなどの非正規労働者の方を6ヵ月以上継続して雇用した上で、無期雇用や正社員へ転換した場合に支給される助成金です。しかも、派遣社員を自社の正社員に転換した場合は、通常より助成額が優遇されます。

通常、中小企業でアルバイトなどの有期雇用契約労働者を正社員に転換した場合は57万円が支給されますが(生産性要件を満たせば72万円)、派遣社員を自社の正社員に転換した場合は、上記の金額に28万5,000円が加算されます。これは1人当たりの助成額ですから、2人適用すれば当然倍になります。

派遣社員の契約期間中にしっかりとお見合いをした上で、相思相愛になれば助成金まで支給されるわけですから、検討してみる価値が充分にあると言えるでしょう。

ただし助成金の受給にはさまざまな要件があり、申請もいくらか複雑ですので、一度お近くの社会保険労務士に相談してみることをおすすめいたします。


社会保険労務士有資格者 山口善広

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