それは、「忙しすぎる」ことです。
忙しいということは、たくさんの仕事をこなしているのだから、優秀なマネジャーではないのかと思われるかもしれません。確かに、優秀なマネジャーは忙しい。しかし、「忙しすぎる」マネジャーは成果を出すことができません。
もしかすると、部下の能力を信じておらず、自分でやった方が間違いないと思っているのではないでしょうか?
毎日毎日忙しいと、マネジャーとして自分が仕事の出来る優秀な人材に感じてきます。逆に部下には物足りなさを感じる。
「部下がいつまでも成長しないから、自分は忙しい」と嘆いたりします。
部下も部下で、「上司がやってくれるから・・」と自分から難しい課題に取り組むことをしなくなる。気づかないうちに上司に依存するようになります。
上司が風邪で休んだりすると、何をすればよいか分からない・・・。現場は大混乱。
これでは、チームを組んでいる意味がありません。
上司が一人で仕事をしたつもりになっている。もちろん、部下が成長するチャンスも奪っています。
成果を挙げている上司は、思い切って部下にエンパワーメント(権限委譲)しています。
最初はリスクがありますが、それでも思い切って権限を振ってしまう。
権限を振られた部下は、はじめのうちは四苦八苦します。
しかし、失敗したりうまくいったりを繰り返し、段々と成長し、いつの間にか上司がやっていた仕事をこなせるようになる。
実は私も、この仕事を始めて数ヶ月経ったある日、上司から大きな企画を丸投げされました。当時の私は企画など書いたこともなく、何がなんだか分からない・・・。一つの企画をつくるのに、1週間近く掛かったこともあります。
しかし、汗をかきかき取り組んでいるうちにスピードが上がり、そのうち数時間で企画を作成できるようになりました。当時の上司に本当に感謝しています。
思い切ってメンバーにエンパワーメントできる上司は、部下の成長を早め、マネジャーとしても本来業務に集中できるようになり、結果としてチーム力を強化できます。
そこで、一度今抱えている業務を全てポストイットに書き出してみてください。まずは深く考えずにとにかく書き出してみます。
書き出しが終わったら、まずはマネジャーしかできない仕事を抜き出します。例えば「マネジャー会議への出席」「目標管理の面談」等はマネジャーしかできません。
今度は、残ったポストイットの中から、「自分ではなくても出来ること」を選びます。 ここで注意したいのは、「自分がやった方が正確だ」とか「自分がやった方が効率が良い」と言った主観は排除してください。あくまで、仕事として自分ではなくても出来ることを客観的に選びます。
これをやると、「自分でなくても出来る仕事」を結構抱えていたことが分かります。
次に、選んだポストイットの仕事一つ一つを見て、「今のメンバーの誰にその仕事を振ることが効果的か?」を考え、その人の名前をポストイットの余白に記入してください。
「効果的」とは、各メンバーの強味を考えた際に、一番効果的に行なってくれそうということと、そのメンバーの成長に役立つという点で効果的という2つの側面です。
そこまで作業が終わったら、後は部下の現状のキャパシティなどを考慮して、実際にエンパワーメントする仕事を決めます。
もちろん、エンパワーメントする際は「これをやりなさい」といきなり振るのではなく、「○○さんに、この業務を任せようと思っているんだ。理由は・・・。○○さんにとってのメリットは・・・」と、理由とメリットをしっかり話し、その後メンバーの意見も聞いた上で決定してください。
部下に業務をエンパワーメントすることで、マネジャーとしてチーム全体を考えた仕事をすることができ、チームが強くなります。
また、エンパワーメントされたメンバーは一歩上の仕事に取り組むことで、成長が望めます。
エンパワーメントするときの考え方は「60点主義」です。その仕事を任せたら60点くらいの完成度しか期待できない。その時に「60点出来るなら任せてみよう」と思い切って仕事を振る。
このような上司は、思い切ったエンパワーメントを行うことができます。
一方でエンパワーメントできない上司は100点主義。100点が期待できる仕事しか任せない。
100点を簡単に出せる仕事はその部下にとって難しいものではありません。試行錯誤し、いろいろと考える必要もありませんので、成長は望めません。
では、60点主義と100点主義の違いは何か?
60点主義は、常に業務と育成を結びつけて考えています。「この業務は、○○さんの力を伸ばすのに役立ちそうだ」と思い切って任せます。
一方で100点主義は、業務をこなすことにしか目が向いていません。「余計な事をされて、業務が停滞したら困る」と守りに入っています。
そのため、「部下に任せてミスされるくらいなら、自分がやってしまおう」となるのです。
そこで、「よし、60点主義で任せよう」と思い切ってエンパワーメントしたとしましょう。
すると、部下は難しい業務に取り組むことになりますので、悩むことも出てきます。
「課長、この点はどうすればよいでしょうか?」
と聴いてくることもあるはずです。その際は、熱心に耳を傾け、
「なぜ、うまくいっていない?」「どうすれば、良いと思う?」
と質問をいって、部下からアイデアを引き出します。もちろん、
「例えば~というやり方もあると思うが、どう思う?」
とアドバイスも行ないますが、押し付けることはしません。
部下に任せた仕事なのですから、部下の考えで動いてもらうように方向付けます。
最後に、「色々アイデアが出たが、どうする?」と決断を迫ってください。自分でジャッジする事が出来る部下を育てるのです。
ここで、「では、~をやりなさい」という指示を出してしまうと、本当の意味のエンパワーメントとはいえません。
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