ラグビー流・次世代リーダー育成術
株式会社HiRAKU 代表取締役 廣瀬俊朗氏
ラグビーは多国籍な人たちが集まって行うスポーツです。2015年のワールドカップでは、15カ国の地域の選手、スタッフが集まって、日本代表として戦いました。選手たちは一人ひとり、身長も体重も全然違いますし、ポジションも15個ある中で、それぞれが専門性を活かしながらチームを作っていきます。色々な役割のメンバーたちが1つの目的・目標に向かって団結する。これはビジネスも一緒です。ラグビーの話を起点に、皆さんの組織や人生に何かヒントになることがあれば嬉しいなと思っています。日本のラグビー界は長年厳しい時代を過ごしました。しかしなかなか勝てない状況が続く中、2012年にエディーさん(エディー・ジョーンズ氏)が監督に就任し、僕がキャプテンに指名され、チームは大きく変わっていきました。エディーさんは非常に努力家で、常に良いものを得たい、常に学んでいきたいと考えている方です。本講演のタイトルにもなっている「メンバーの心をひらくリーダーシップ」という観点でいうと、リーダー自身が学び続けるというのは非常に大事なことだと実感していますし、またそういうリーダーにチームを率いていただいたことに我々選手も大変感謝しています。
そんなチームにおいて、キャプテンに指名された僕自身も非常に重要な役割を担いました。チームの大きな方向性はエディーさんが決めるのですが、ラグビーは試合中に選手がイニシアティブを握るシーンが多いため、ゲーム中はキャプテンがどんどんリーダーシップを取っていかなければなりません。では、具体的に何をしたのかというと、メンバーの心をひらくためには、お互いのことを知り、好きになることがとても大事だと思ったんです。目標に向かってみんながフラットに意見を言い合える、そんな人間関係を築いていこうと思いました。さらにそのためにはリーダーである僕自身がオープンであることが大事だと感じ、毎日メンバー全員に声をかけたり、ニックネームで呼んだり、具体的に褒めるなどしました。
もう一つ重視したのが「場づくり」です。例えば、選手だけのミーティングを頻繁に行い、ラグビーの話はもちろん、日常会話やパーソナルな話も交わし、お互いを好きになったり、共通理解を深めたりしました。また多国籍な集団だったので、合宿の度に国歌斉唱の練習も実施。海外出身の選手は、「みんな俺のこと受け入れてくれているのか」と不安になることもあるでしょう。そんなときに、一緒に君が代を歌うことで、「仲間として認められた」と感じることができると思います。さらに居場所を作ることも大切にしました。それぞれが活躍できる居場所を用意することで、力も発揮しやすくなりますし、チームのために頑張れるようになります。なかでも選手にとって一番の居場所は試合に出ることなので、試合に出られない選手をサポートするために、メンター制度を導入したり、プロジェクトリーダーに若い選手を起用したりするなど、さまざまな工夫をしてきました。
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