HRの分野でも、「データ活用」や「データマネジメント」を導入しようという流れがありますが、これらの導入にあたっては、“元となるデータの信憑性”が鍵を握ります。その観点で前回、性格検査として“パーソナリティ検査の最終回答”と言われている「ビッグファイブ(特性5因子)」の活用をお勧めしました。今回はその流れでもう一つ、「MBTI」についてご紹介いたします。
第14回:Z世代にもブーム! 「MBTI」は経営幹部の人材鑑定力とマネジメント力にも効果大
HRの分野でも、「データ活用」や「データマネジメント」を導入しようという流れがありますが、これらの導入にあたっては、“元となるデータの信憑性”が鍵を握ります。その観点で前回、性格検査として“パーソナリティ検査の最終回答”と言われている「ビッグファイブ(特性5因子)」の活用をお勧めしました。今回はその流れでもう一つ、「MBTI」についてご紹介いたします。

「MBTI」は、昨年マイナビが発表した「【2022年】ティーンが選ぶトレンドランキング」でも「モノ部門」の7位に入り、ティーンズにも話題となって再び脚光を浴びています。

7位 『MBTI診断』
16の性格タイプに分類でき、的確かつ事細かな結果が出るとティーンを中心に話題となった。通常の診断では結果まで10分以上かかってしまうため、5分程度で完了する簡易版のMBTI診断も出現し、そちらも人気となった。診断結果(性格タイプ)をInstagramのプロフィール欄に記載するユーザーが続出した。

(マイナビ「【2022年】ティーンが選ぶトレンドランキング」より引用)


BTSがYouTubeで受検し結果を公開したことでも話題となりましたが、もともと全国各地の高校生たちの間で流行したことから広まったようです。実は筆者も、2021年12月に関西の高校生から「MBTIについて教えて欲しい」とインタビューを受けましたが、当時かなり普及していることに驚きました。

「4つの指標、16タイプ」で従業員理解ができる

「MBTI(Myers-Briggs TypeIndicator)」は、1962年に米国のマイヤーズ(Myers,I)とブリッグス(Briggs,K)によって研究開発された、類型論に基づいた自己理解メソッドです。
※「類型論」については、前回記事(『第13回:“パーソナリティ検査の最終回答”と呼ばれる「ビッグファイブ(特性5因子)理論」を使いこなす経営幹部を育てる』)を参照ください。

MBTIでは、ユングの心理学的類型論に基づく6つの因子(外向:E、内向:I、感覚:S、直観:N、思考:T、感情:F)に、「判断的態度:J」と「知覚的態度:P」という独自の因子を加えて、8因子4指標16タイプで性格を捉えます。「外向:E」と「内向:I」、「感覚:S」と「直観:N」、「思考:T」と「感情:F」、「判断的態度:J」と「知覚的態度:P」がそれぞれ対抗因子となり、図のように解釈されます。
第14回:Z世代にもブーム! 「MBTI」は経営幹部の人材鑑定力とマネジメント力にも効果大
第14回:Z世代にもブーム! 「MBTI」は経営幹部の人材鑑定力とマネジメント力にも効果大
出典:『性格の研究』木原武一 著(PHP文庫)

「外向:E」と「内向:I」は、エネルギーの方向が「外の世界および人や物に向かうか、内的世界および観念や思考に向かうか」。「感覚:S」と「直観:N」は、知覚の方法が「五感を通して実際に起きていることおよび現実に向かうか、直感で事実を超えて可能性や未来に向かうか」。「思考:T」と「感情:F」は、判断の方法が「頭で考える・論理的・客観的か、ハートで感じる・感情的・主観的か」。「判断的態度:J」と「知覚的態度:P」は、ライフスタイルについて「計画好きで定められた行動を好むか、自由で流れに任せるか」を、それぞれ表します。

かつてリクルート社員たちは「MBTI型」でお互いのタイプを共有・認識していた

40歳前後より上の世代で、新卒採用などでリクルートの適性検査「SPI」を受検したことのある方や、人事などで取り扱っていた方はご記憶かと思いますが、このMBTIは、開発された当初にリクルートのテスト開発チームライセンス供与を受け、日本版にローカライズしてSPIに組み込まれ、「TI型」として使われていました(ライセンス供与終了に伴い、2000年代半ばにTI型はSPIから外されています)。筆者自身、かつてリクルートに在籍していましたが、当時のリクルートの社員紹介冊子などには、このTI型も記載されており、社員同士でそれぞれ何型かなどと会話されていたのです。こうした性格因子を全社員で共有し、お互いのキャラクター理解の一助としていたのも、リクルート創業者である故・江副浩正氏の考える「組織活性化集団」の作り方の方策であったのだと思います。

相手の個性を大掴みにでも知ることで、「その人がどのような思考傾向、行動傾向にありそうか」ということも察しつつ、コミュニケーションする。そこに、対応上手・指導上手なリーダーが生まれるという側面は確かにあると思います。

MBTIについては現在、こちらで無料診断できるものが公開されています。
MBTI性格診断テスト

経営幹部に教えたい、「MBTI」のマネジメントでの実践活用

具体的に、経営幹部がMBTIをマネジメントに活用する際、どのように見ればよいのか。以下に、8因子の解釈を簡単にご紹介します。

【知覚の方法】
「感覚:S」タイプ:現実的・具体的な会話が伝わりやすい
「直観:N」タイプ:様々なイマジネーションを湧き起こすようなディスカッションが盛り上がる

【判断の方法】
「思考:T」タイプ:揉め事が起きた際に「どうした?」、「何があったんだ?」、「原因は?」などと、理性的に対応する
「感情:F」タイプ:揉め事が起きた際に「なに?」、「大丈夫?」、「それは酷いな!」などと、エモーショナルな対応をする

【ライフスタイル】
「判断的態度:J」タイプ:きっちりルールを決めて動かないとイライラする
「知覚的態度:P」タイプ:ざっくばらんな動きをするため、細々と言われるとストレスになる


上司・部下関係においても、取引先やパートナーとの関係においても、タイプが異なれば考え方や動き方、感じ方が異なります。こうしたパーソナリティ因子タイプを把握しておくことは、「どのような人には、どう接すればよいか」をわかりやすく判断し行動できるようにしてくれる有用なツールなので、専門家のように具体的に学ばずとも、因子の種類とタイプを頭に入れておくと非常に便利です。MBTIは幹部のみならず全従業員に対して導入し、お互いのパーソナリティの特徴を相互に理解する一助とすることが非常に効果的ですね。ぜひ、御社の幹部育成およびチームビルディングにも導入ください。

おわりに

TI型のローカライザー、SPIの開発者でもあるリクルート創業メンバー、故・大沢武志さんの著書『心理学的経営 個をあるがままに生かす』(プレジデント社)には、創業時から90年代まででリクルートを中心に実証実験された、これらの活用法について紹介されていますので、ご興味があるかたはぜひ手に取ってみてください。また、古本でしか入手できませんが、古今東西のヒーロー達がそれぞれ何タイプだったかを分析・紹介した『性格の研究』木原武一 著(PHP文庫)は、「なるほど、あの偉人はこのタイプだったのか!」と楽しく読みながらタイプ理解を深めることができますので、こちらもご興味があれば入手してみてください。

折しもいま、HRTechが盛り上がり科学的人事に注目が集まっていますが、その祖はMBTI~TI型にあったとも言えるでしょう。
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