あなたは「最近の若手は……」という言葉を口にしたことはないでしょうか。「最近の若手は元気がない」や「若手がすぐ会社を辞める」そんな悩みを抱えている方もいるかもしれません。また、40代以上の方では、「正直なところ、最近の20代の考えがよくわからない」という方もいるかもしれません。ところで、「若手」あるいは「最近の20代」について、あなたはどう理解していますか。若手や20代といっても、実はひとくくりにできるものではないのです。そこで今回は“イマドキの20代”を考察してみます。
世代別のトリセツ第3回:イマドキの若手とは? デジタルとパーパスに生きるミレニアル世代【66】

マイペースな印象をもたれがちな「ゆとり世代」と「さとり世代」とは

第2回までは、「就職氷河期世代」の特徴をお話しました。

この第3回は「20代」です。20代というと、あなたはどのようなイメージを抱きますか。2021年時点で20代の社会人を指す場合、日本では2つの世代名があります。「ゆとり世代」と「さとり世代」で、彼らはいずれも1987年以降に生まれています。「ゆとり世代」は、2002年(平成14年)の改定学習指導要領の施行により、完全学校週5日制の「ゆとり教育の時代(以降、2010年代前半まで継続)」が義務教育期間にあたる世代のことです。「さとり世代」は一部ゆとり世代と重なりますが、脱ゆとり教育以降の人々です。彼らの生き方は「まるで人生を悟っているかのようだ」と評され、この呼び方がインターネットの某有名掲示板から広まりました。

「ゆとり教育」は、文部科学省の方針で「基礎・基本の確実な定着と個性を生かす教育の充実」を目指しました。“どちらかというと無理はしなくてもいい、自分の能力以上の難しいことはしなくてもよい”と育ったためか、マイペースな方が多い印象です。実際に、仕事でも自分の任された内容が終われば、業務を終えて帰宅することも普通です。プライベートも昭和世代のように熱心に遊んでいるかと言うとそうでもなく、友人関係もほどほどに、ゆるい付き合いをしながら、自分の時間を大切にするという人が多いようです。

昭和世代と大きく異なるのは、「ゆとり世代は大学でキャリア教育を受けてきた」という点です。最近の大学では、終身雇用制の終焉やキャリアの選択肢機会の多様化に伴い、授業でキャリア教育を実施している学校も多いそうです。昭和世代は「有名大企業でバリバリ働く」ことをキャリアの目標としましたが、現代の20代は大学生のうちから「転職は当たり前」、「キャリアをつくるのは自分自身」という意識が芽生えている世代なのです。彼らは、マイペースで自分本位であるように見えていますが、実は「自分自身の人生や生き方について」昭和世代よりも深く考えているという傾向がうかがえます。

「デジタル技術の発展」と「東日本大震災」をどちらも経験しながら育ったのがミレニアル世代

世界的には2000年代以降に成人を迎えた世代を「ミレニアル世代」と呼び、さらにその中で、1996年~2015年に生まれた世代を「Z世代」と呼んでいます。皆さんもご存知のとおり、この「ミレニアル世代」はSNSやスマートフォンといった最新デジタル技術の発達と共に成長し、青春時代を過ごしました。特に「Z世代」は、いわゆる「デジタルネイティブ」で、物心ついた時には携帯電話やスマートフォンが既に手元にありました。戦後・高度経済成長期を過ごした昭和世代と比べると、物質的にも満たされ、SNSを利用した人と人の精神的な繋がりも発達している世代です。同時にリーマンショックや、東日本大震災も経験しています。

日本のミレニアル世代やZ世代から感じる特徴は、「若いうちから確固たる使命や人生の目的がある」いうことです。多感な時期に「東日本大震災」という大きな出来事を経験し、自分の能力を世の中や社会のために活かそうという考えが強い方も多いのかもしれません。私が最近、お話した20代の方の中には、震災を高校時代に経験したことがキャリア選択の指針になり、公的機関や企業で社会インフラや人々の救助に関わる仕事に就いたという方も多くいました。

また、20代の特徴として、彼らのメインの情報源は「テレビや新聞ではなく、もはやインターネットである」ことが挙げられます。最近も、新入社員と会話した際「ネットで世界中のニュースを見て勉強している」と話す方もいました。デジタルを駆使して周りを見ながら、自分の人生の目的を明確にして生きているのが最近の20代の特徴と言えるでしょう。

多様な20代の特徴を理解し、特有の価値観が活かせるように導くのが「大人」の役割

とはいえ、20代といってもひとくくりにできるものではありません。日頃、20代の方と接して、当たり前ですが実に様々な考え方を持つ方がいると感じます。それに反して、昭和世代と話していると「皆どこか共通認識や共通の価値観をもっているな」と感じることがあります。20代の方にはそう感じないこともよくあります。

2010年代から日本は「ダイバーシティ」の取り組みが進み、最近は人々の考え方や価値観にも多様性がみられるようになってきました。SNSやブログで自らの価値観を気軽に発信する方が増えてきたのも要因としてあるかもしれません。

以前お会いしたある20代の方は、「仕事は本当に楽しいこと、自分の好きなことを追求するべきだ」と考え、会社を辞め実際に好きなことを仕事にしています。収入はそこまで気にしていないそうです。ある方は、今注目の「FIRE:経済的自立と早期リタイア(Financial Independence, Retire Early)」を目指して「資産形成」に力を注いでいました。株やFX、仮想通貨を運用して、そこそこ利益を出しているそうです。また別の方の将来の夢は、家庭を持ち落ち着いた生活することだそうで、安定を求めインフラ系企業で働いています。

このように多様な考え方のもと、「自分自身の価値観に合う仕事や働く環境」を忠実に選ぶという傾向が強いように感じます。上司からすると、会社で与えられた責務や仕事を優先してこなしてほしいと考えがちです。しかし、多様な価値観を持つ彼らを「会社のルール」で縛り、「会社が目指す方向性へ導く」のは非常に困難です。20代を活かすのに大事なのは、しっかりと深く彼らと対話することです。彼らが大切にしていること、目指していること、楽しいと感じることなど、まず価値観を聞き出すことが重要なのです。彼らが喜ぶのは自分の人生に「気づき」があることです。仕事上も、自分の人生が豊かになるような気づきが得られることを大切にしているように感じます。

もし、30代以降のあなたが20代との接し方に悩んでいるようでしたら、“まずは対話”を重視してみてください。そして彼ら・彼女らが何を望んでいるのかを聞き出してみましょう。時には人生の先輩の立場からアドバイスをしてもよいですが、押し付けにならないようにすることが重要なポイントです。あくまでも本人が自分で気づいて選択できるように、視野を広げる質問を通して「今後の可能性」を伝えてみてください。

20代が活躍できる場をつくるのは、私たち「大人」の役割です。ここでは、大人の論理を押し付けるのではなく、20代の考え方や価値観に寄り添ってみます。
現代社会の象徴はまさにこの世代です。この世代の理解を深めることは、あなた自身が「現代社会を理解する」ことにもつながっていきます。

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