しかし、その実現は、社員一人ひとりの成長があってこそ。ニトリでは人材への投資を経営の重要戦略と位置付け、社員一人ひとりの経歴やスキル、キャリア志向などの情報を管理し、個別最適化された学習環境の提供を進めています。
2019年には、米国発のクラウド型ヒューマンキャピタルマネジメントプラットフォーム「Workday」を導入し、事業規模が拡大し続けるなかでも「多数精鋭」を推進できる体制をつくっています。
今回は米国Workday社の宇田川氏を迎え、世界的な人事の潮流や、ニトリが目指す姿についてWEB対談をおこないました。
【プロフィール】
■Workday, Inc. グローバリゼーションエンジニアリング プロダクトマネジメントディレクター 宇田川 博文氏
2014年2月から日本におけるWorkday HCM製品の戦略、マーケティングおよびデリバリーの責任者を務める。現在は、グローバリゼーション部門で製品マネジメントを担当。
■(株)ニトリHD 組織開発室 室長 兼 人材教育部 マネジャー 永島 寛之
2013年入社。店長を経て、2015年より採用責任者、2019年3月より現職へ。テクノロジーを駆使した「多数精鋭教育」の実現に向けて陣頭指揮を執る。
「個」に寄り添うキャリア開発こそが、ニトリの人材育成の要
永島 本日はよろしくお願いします。宇田川さんの幅広い人事の知見から、ぜひグローバルでのHRテクノロジー活用の潮流や、ニトリへの期待感など、さまざまなお話をお聞かせいただきたいと思います。宇田川 こちらこそ、お招きありがとうございます。早速ですが、私は企業の人事戦略は、ビジネス戦略そのものだと感じています。だからこそ、ニトリさんの「会社の成長は、社員一人ひとりの成長があってこそ」という考えに、深く共感しています。
個の成長を促すため独自の人事施策を進めるニトリさんが、Workday導入に至ったのは、なぜでしょうか。
永島 ニトリでは、「個」を活かした多数精鋭のスペシャリストの育成に取り組んでおり、社員一人ひとりが自らの手で「ありたい姿」や「将来解決したい社会課題」を描くことを重視しています。
しかしながら、年々社員数が増えるなかで、そうした「個」に寄り添うキャリア開発をどう進めるか、課題を感じることが多くなりました。人の手で地道に進めていることが多かったからです。そこで、Workdayを導入し、テクノロジーの力を活用することで、社員の可能性をさらに押し広げられると感じたからです。
永島 宇田川さんは海外の企業にも精通していらっしゃいますが、世界、特にアメリカの組織でも、こうした課題があるのでしょうか。
宇田川 AmazonやGoogleといった世界で成功している企業は今、国を問わず共通の人事課題を抱えています。それは「自律」です。自律的に仕事ができる優秀な人材に、長く会社で活躍してもらうにはどうすればいいのか。転職が当然であったジョブ型組織から変わりつつありますね。
また、組織が大きくなっていっても、求心力を維持しながら、自律意識をもつ人たちをいかに惹きつけるか。百人規模ではできていたことが、事業規模が拡大し従業員の多様性が広がるほど、難しくなります。ニトリさんはまさに世界的企業と同じような課題をいち早く意識し、取り組んでいらっしゃるのだと思います。
HRテクノロジーの活用で、人事のパーソナライズを実現する
永島 「自律」は、ニトリも強く意識しているところです。一般的に、日本は比較的その自律意識が低いといわれています。そこを、リアルな研修やテクノロジーで刺激して、将来解決したい社会課題を明確にし、自分の足で歩んでいくことが大切ですね。宇田川 まさにその通りです。多くの日本企業の従業員は、「自分のキャリアは会社が決めてくれる、あるいは決められてしまう」という風に考えていると思います。それは、自律とは正反対ですよね。
永島 ニトリでは、社員が将来解決したい社会課題を見据え、逆算してキャリアを考える「エンプロイージャーニーマップ」を年2回作成しています。こうしたキャリア志向などの人材データをWorkdayで管理することで、社員の自律性やキャリア形成を、適切に支援できると考えています。
宇田川 とても素敵ですね。 ぜひ、人事と社員、上司と部下とのコミュニケーションツールとして、Workdayを活用していただきたいと思います。そうすることで、人事のパーソナライズ、つまりニトリさんの「個」に寄り添うキャリア開発が、テクノロジーによって実現しやすくなるはずです。
※本記事は『ニトリン』に掲載された記事の転載です。
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