就職情報サイト「リクナビ」が学生の内定辞退率を算出し、データを企業に販売していた問題で、政府の個人情報保護委員会は、サイトを運営するリクルートキャリアに対し、組織体制の見直しや個人の権利、利益の適切な保護を勧告。またデータを第三者に提供する際に必要な同意を取っていなかったと認定し、個人情報保護法違反と判断した。このような企業の不祥事のたびに出てくるのが「コンプライアンス」という言葉である。コンプライアンスは企業活動のさまざまな場面に関わるが、今回は採用時に問題となりうる「採用コンプライアンス」にフォーカスし、その内容とともに、よくある違反例と遵守ポイントを紹介したい。
ベテラン人事でも陥りやすい「採用コンプライアンス」の落とし穴

「採用コンプライアンス」を正しく理解しよう

「コンプライアンス」とは「法令遵守」のことである。今回問題となった個人情報保護法違反だが、個人情報とは、特定の個人を識別することができるものを示し、採用に関する応募者の連絡先データや、採用選考において入手した履歴書などの情報すべてが個人情報保護の対象となる。取得した個人情報は、法令に基づく場合など以外では、本人の同意を得ないで第三者に提供することはできない。(個人情報保護法23条)

個人情報の中でも、「本人の人種、信条、社会的身分、病歴、犯罪の経歴、犯罪により害を被った事実その他本人に対する不当な差別、偏見その他の不利益が生じないようにその取扱いに配慮を要するもの」は法令に基づく場合など以外では、あらかじめ本人の同意を得ないで取得することができない。(個人情報保護法17条2項)

また、職業安定法第5条の4に基づく指針において、「労働者の募集を行う者等は、収集目的に照らして保管する必要がなくなった個人情報を破棄又は削除するための措置を講ずるとともに、応募者からの求めに応じその措置の内容を説明しなければならない」とされている。そのため、応募者から提出された書類の取扱いについては、あらかじめ企業としての対応方法を定め、それを応募者に周知し確実に実行することが必要となる。

そもそも採用選考は
・「人を人としてみる」人間尊重の精神、すなわち応募者の基本的人権を尊重すること
・応募者の適性・能力のみを基準として行うこと
の2点を基本的な考え方として実施する必要がある。

日本国憲法第14条で「すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。」と法の下の平等を保障している。そして日本国憲法第22条で「何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。」と職業選択の自由を保障している。

一方、雇用主にも、採用方針・採用基準・採否の決定など「採用の自由」は認められている。しかし、「採用の自由」は応募者の基本的人権を侵してまで認められているわけではないということを知っておく必要がある。

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