去る2019年7月24日、東京・神保町で「新卒採用フォーラム2019」を開催。経団連が「就活ルール」を廃止し、新卒採用の大きな転換期にある今、実のある人材を確保するためにはどうしたらいいのか。本稿では、「採用学」の第一人者であり、書籍「日本企業の採用革新」の著者でもある、神戸大学大学院経営学研究科 准教授 服部泰宏氏の講演をレポートする。人材の獲得競争が激化する中で、企業がいかにして採用戦略を構築し、また採用した人材を育成すべきか、「採用学」の知見からお話しいただいた。

講師

  • 服部

    服部 泰宏氏

    神戸大学大学院経営学研究科 准教授

    神奈川県生まれ。 国立大学法人滋賀大学専任講師、同准教授、国立大学法人横浜国立大学准教授を経て、 2018年4月より現職に就く。 日本企業における組織と個人の関わりあいや、ビジネスパーソンの学びと知識の普及に関する研究、人材の採用や評価、育成に関する研究に従事。 2010年に第26回組織学会高宮賞、 2014年に人材育成学会論文賞などを受賞。

学生に選ばれる企業は近い未来の成長イメージが明確。育成の鍵は何度も挑戦できる環境構築と周囲のフォロー体制にある

学生が求めているのは「2~3年先のキャリア」が明確な企業

学生に選ばれる企業は近い未来の成長イメージが明確。育成の鍵は何度も挑戦できる環境構築と周囲のフォロー体制にある
経団連の就活ルールの廃止により、学生の就職活動時期が分散するのはもはや避けられません。1年生のうちからインターンシップに行き、早くも就職に向けて動き出している学生もいます。それに伴い、企業側から学生への早期接触や早期採用が増加することも考えられますが、「内定後、学生側の気持ちを3年も維持できるのか」という問題もあり、早期接触が定着するのはなかなか難しいと感じています。

上の世代は30~40年働く前提で就職先を決めてきましたが、最近の学生はキャリアを2~3年の短期スパンで考えています。彼らにとって「自分にとって今しかできない経験は何か」ということが重要で、知名度のある大企業に採用された学生でさえ、「ここでの肩書きは転職時に役立つだろう」といった感覚です。ですから彼らに対し、入社後数年間の“近い未来”をいかに明確に見せていけるかが、「選ばれる企業」になるためのキーポイントです。

一方で、企業は面接の際に学生のどこを見ていけばいいでしょうか。彼らは1年生のときからインターンシップに参加したり、授業の一環で企業人と接したりする機会が多いため、大変場慣れをしていて、面接も筆記試験も非常に優秀です。学生の就活テクニックが向上しているがゆえ、企業にとって通常の面接だけで優秀な人材を見極めるのは難しいのが現状です。

ちなみに面接の機能は3つあり、1つ目が「能力を見抜く」、2つ目が「互いに相手を知る」、3つ目が「情報のフィードバック」です。3つ目は、その人が知らない情報を提供することが大切です。例えば、「あなたの志望動機は筋が通ってない」「話の前後が違う」など、論理的に流れを正してあげると有り難がられます。また、その人が見えなかったことを教えてあげる「目線変えフィードバック」も有効で、例えば商社の面接に消費者目線で挑む学生に、「あなたは売る側に来るのだから逆でしょう」と伝える。このようなフィードバックを与えると、学生は「この会社なら成長できる」と思います。これは大切なポイントです。

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