やりたいことってなんだ?
私の世代では、目標を持って生きることが当たり前でした。何かを手に入れるために頑張るということが普通でしたし、特に高度経済成長期は、頑張れば頑張っただけ、きちんと報われる時代だったと思います。頑張って欲しいものを手に入れることで、幸せを感じていました。シンプルに言うと、より多くの収入を得ることが目標になっており、多くの年収を稼げば稼ぐほどより幸せになれる、だからみんな頑張れ!みたいな感じでしょうか?しかし今の若者は、この考え方とは別の価値観で生きているように感じます。例えば、代表的なのは、お金はあまり気にしないとか、大きな会社でなくてもよいとか、そのような価値観を持っていて、就活なんて最低限の活動量で得た内定先に決め、早めに終えてしまおう、というタイプですね。
彼らは働くことに前向きになれないから、就職活動もあまりしたくないのだろう、内定をもらえそうならどこでもいいや、といった考えなのだろう、と受け止めていました。働くことに対するリアルなイメージが掴めないから、仕事といえばすべて、きついバイトのようなイメージで捉えてしまうのだろう、と。だからこそもっと「仕事」や「働くこと」に対しての情報を提供する場を増やすべきなのだと考えていました。
ミニマリストという考え方
そんな折、アドレスホッパー(ミニマリスト)の方とお会いし、いろいろお話をさせていただく機会があったのです。アドレスホッパーとは、定住場所を持たず、必要最低限の荷物を持って、ゲストハウスやシェアオフィスを転々としながら生活している方々です。そんな生活をできるのは、フリーランスで働いている人だけだと思っていたのですが、先日お会いしたアドレスホッパーの方は、企業経営者と、一部上場企業で上級管理職をされている方でした。私たちの世代とはいくらか価値観が合わない部分があることを前提として、楽しくお話をさせていただいたのですが、そんな彼らが最も大切にしているのは、自分が自分らしく生きることでした。あくまでも“自分らしく”働くことに喜びを感じるのです。
うまく整理できていないかも知れませんが、私たちの世代が求めるものは、モノであったり、地位であったりしたわけなのですが、彼らの求めるものは、自分らしく生きるコトであったり、仲間であったりするわけです。
そんなことを漠然と考えていると、なるほどというまとめ方をされている方のコメントに巡り合いました。ピークパフォーマンス・コンサルタントと名乗り、企業研修などを手掛けている平本相武氏によると、日本人には「ビジョン型」と「価値観型」の二つのタイプがあるのだそうです。
私たちの世代に多い考え方は「ビジョン型」タイプです。ビジョンや目標を明確に持ち、未来から逆算して現在の行動を決めていくタイプです。一方の「価値観型」は、キャリアプランを立てるのに、何と、ビジョンや目標は必要ありません。
平本さんの考えでは、日本人の多くは、ビジョンや目標を持つのがあまり得意ではない「価値観型」タイプで、その代わり、日々の生活の中で、自分の行動の指針となる価値観や自分らしさに沿っているかどうかを重要視しているのだそうです。
平本氏は、もともと日本人はそうであると述べていますが、私は、最近の「モノ消費」から「コト消費」への消費マインドの変化にみられるように、世代による価値観の変化もあるように感じています。今の大学生は、明らかに私たちの世代より「価値観型」の志向の人が多いように感じますから。(声なき声が拾われていない可能性もありますが)。
にも関わらず、資本主義社会において、企業のマネジメントのほとんどは「ビジョン型」となっています。ですから、日本企業の多くは新卒にも「やりたいこと」を聞いてきます。そしてそれに対して戸惑ってしまう若者が多いということなのです。
ですがそんな中にあって日本でも、循環型社会への移行が求められるとともに、少しずつ「価値観型」の志向が求められているような気がします。若者に「価値観型」の志向が多いのは、そうした時代の雰囲気を敏感に感じ取っているためである、と受け取ることもできるのではないでしょうか?
やりたいことが見つからない若者が、もし「価値観型」タイプだとすると、「ビジョン型」の志向でやりたいことを見つけるのは、やはり難しいのかも知れません。さらにそんな若者は、ビジョン型の思考フレームでやりたいことを見つけられない自分を、否定的に受け止めてしまうために、なかなか働くことに前向きになれないのではないでしょうか?
この見解を踏まえて次回は、ではどうすればよいかについて、個人的な意見を述べてみたいと思います。
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