海外企業とのM&Aの増加などを背景に、グローバルなビジネス環境が加速しています。現地で活躍する人材のみならず、国内においても海外取引先との折衝や外国人社員との協働が必須になりつつある昨今、英語で様々なビジネス課題を解決できる「グローバルコンピテンシー」を獲得した人材が求められています。そこで、英語力とコンピテンシー形成を一体化して教育するラーニングシステムを開発した日経FTラーニングの坂東治忠氏に、グローバル人材を育成するために必要なポイントをお話しいただきました。

講師

  • 坂東 治忠氏

    坂東 治忠氏

    日経FTラーニング 日本代表

    大手総合商社に入社後、大手外資系日本法人立ち上げに参画。 後に外資系企業日本法人代表としての立ち上げや数々の外資系IT/ソフトウェアベンダーにおける要職を歴任。 米国タレントマネジメントソリューションの大手コーナーストーンオンデマンド社の日本法人社長を経て、KPMGコンサルティングの人事コンサルティング部門ディレクターに就任。 多数のHRトランスフォーメーション支援を行い、現職に至る。


競争が激化するグローバル市場で勝ち抜く人材とは ~グローバル人材育成のために必要な要諦をご紹介~

日本人社員のグローバル化は成長企業の必須条件

 本日は、グローバル市場で勝ち抜く人材を育成するにあたり、実際にどのような点に留意すれば良いのか、私の考えを述べさせていただければと思います。
 その前提として、まずビジネス環境のグローバル化を見ていきましょう。我が国における外国人労働者数は年々増加しており、2008年には約50万人程度だったものが、2017年には約127万人と3倍近くに膨れ上がっています。事実、街を歩くとショップの店員に外国人の姿が目立つなど、目に見える変化が起きています。

 さらに日本企業における外国人役員数も近年増えています。例として大企業を挙げると、日立製作所では2012年以降、外国人役員が急増しています。最近でも同社が海外企業を買収したというニュースがありましたが、恐らくヘッドクオーター機能は日本にあっても、事業ごとに主力拠点を海外各国に置くフォーメーションを組んでいると思われます。また武田薬品は2014年から外国人役員が増え、2016年には15人中4名と全体の27%に達しています。

 1985年以降におけるマーケット別のM&Aの推移を見ると、日本企業が外国企業を買収するIN-OUT型のM&A、外国企業が日本企業に対して行うOUT-IN型のM&Aのいずれも増加傾向にあることがわかります。特にこの10年の間は、M&A総額の大半を海外関連が占めるようになりました。したがってIN-OUT、OUT-IN型とも現場では日本人と外国人社員の交流が必須になりますが、特にOUT-IN型の場合は、ある日突然、上司が外国人になるというマンガのような場面が実際に発生している状況です。外国人上司にとっても日本人社員をどのようにグローバル対応させるか、非常に苦慮されていることと思います。

 また、IN-OUT型のM&Aもかなりの数に上っています。PMI(Post Merger Integration:M&A後の統合プロセス)を特に進めず、そのまま放置している会社も多く見受けられますが、やはりM&Aによるシナジー効果を図って業績を向上するにはPMIを行うことが必要であり、そのためにも日本人社員のグローバル化が必須であると考えます。
競争が激化するグローバル市場で勝ち抜く人材とは ~グローバル人材育成のために必要な要諦をご紹介~

グローバル化の段階により変わる必要な能力

 人材のグローバル化といっても、企業によってそのステージは異なります。レベル別に見ると第一段階はドメスティック企業。海外取引はしているものの、まだまだ国内オペレーションが中心の会社です。輸出や輸入品の調達といった、限られた部門の人のみが外国人とコミュニケーションを取る必要がある、すなわちグローバル化が迫られるという段階です。
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