大学で働くようになって約10年経ちますが、いろいろな学生と接する中でも、やはり頭の中で直感的に「優秀な学生」と「そうでない学生」のような分類をしている自分がいます。その一方で、直感的に感じる「優秀さ」って、もう少し具体化するとどういうことになるのだろう、ということを考え続けてきました。
また最近は、留学生の就職支援にかかわる機会も増えてきていますが、日本語はあまり上手じゃないけどこの学生は優秀だな、と思える留学生と出会うことも多いです。これらのことを交えて、少し自分の考えをまとめてみたいと思います。
「優秀さ」を一言で具体化するのは難しいのですが、いくつかの項目に分けて整理してみます。
【優秀さの定義 その1】
頭の良さ
これはいわゆる「地頭の良さ」とでもいうべき部分だと思っています。例えばSPI(総合適性検査)の知的能力などで如実に表れるのではないでしょうか。「限られた時間で効率的に物事を理解し処理していく能力」とも言い換えられます。大学入試、もしくは高校入試時の難易度が、これを図る指標としては結構近いのではと思います。
【優秀さの定義 その2】
知的好奇心の旺盛さ
大学で学生と接していると、この部分についてかなり個人差があると感じます。「なぜこうなるのか?」、「どうしてこのようになっているのか?」という理由や原因を突き止めないと納得できないという志向の程度に、かなりばらつきがあります。この志向(思考といってもいいでしょう)の弱い学生は、情報をそのまま鵜呑みにしてしまうので、例えばフェイクニュースなどに惑わされやすく、就活でも「正解探しモード」に入ってしまい、マニュアル依存型の活動になってしまうようです。
現代の若者は物心ついた時からインターネットの圧倒的な情報量の中で育ってきているためか、そうした情報を受け身的に取り入れ、鵜呑みにする癖がついてしまっている学生が増えているように感じます。そのあたりをどうやって指導するか?が、最近の大学教育の課題であるかもしれません。
【優秀さの定義 その3】
課題解決のための自律的な思考スキル
一言でいうと、PDCAサイクルの自律的な運用スキルを有しているかどうか、ということだと考えています。経験を通して学ぶスキルと言い換えることができると思うのですが、これが弱いと社会人基礎力のような汎用的なコンピテンシーである自律的な成長スピードが高まらないと考えています。
人事をやっていたときに、よく「地方の公立高校から難関大学に入学している学生を狙え」という話を聞きましたが、そうした学生は自分の目標とする大学に入学するためにどう工夫すればよいかを考えて勉強し、結果を出してきている可能性が高いので、こうした思考スキルを自修できているのでは?という根拠に基づいているのだと思います。
これはスキルですので、教育によって修得できると考えております。手前味噌で恐縮ですが、金沢大学ではこれを鍛える科目(キャリアデベロップメント)を選択科目として開講しており、この科目を中心とした科目群で、2014年に経済産業省の選定する「社会人基礎力を養う授業30選」に選定されております。
【優秀さの定義 その4】
自律性とチャレンジマインド
指示待ちでなく、自分で考えて行動するというコンピテンシー(行動特性)、つまり「自律性」と、失敗を恐れずにやったことがないことに取り組むことができる「チャレンジマインド」の有無、と定義付けます。一見、自律性とチャレンジマインドは、異なるコンピテンシーではないかと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、優秀だと思える学生のほとんどはこの2つをセットで有しています。私見としては、根底の部分で「自己肯定感」がそれなりのレベルに育っていないと、こうした行動はとれないのかも、と考えております。
いかがでしょうか?私は現在、今回まとめた4つの要素を大学でどうやって伸ばすべきかということについて、各種取り組みを行っています。スキル、コンピテンシーなどが混在しているので、整理と具体化、教育による変化の状況などの“見える化”などを検討しております。さらに、大学卒業後の経年変化(どのような経験や学習機会を経てどのように変化するのか)なども、ぜひ見ていきたいと思っています。
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