理系でも複数内定保有者が昨年よりも増える
続いて理系について見てみましょう[図表10]。「0社」の割合は前年とさほど変わらないものの、「1社」の学生割合は41%から33%に減少し、「2社」「3社」「4~6社」「7~9社」がいずれも増えています。文系と同様、複数社から内定を取得している学生が増えているのが分かります(27%→35%)。
理系の全体割合では、未内定32%、1社だけ内定33%、2社以上内定35%となっており、文系と同様、内定者の過半数は複数内定を持っている状況となっています。
※内定保有者に占める複数内定保有者率 2013年卒 43.2%→2014年卒39.7%→2015年卒51.5%
早慶クラスの6割は複数社の内定を取得
内定保有社数を大学層別に見ると、こちらも内定取得者の割合が大学層により明らかに異なるのが分かります[図表11]。「早慶クラス」では88%が内定を取得しており、複数内定の保有者も6割近くに上っています。一方、「その他私大」では内定保有者は45%と5割を切っているとともに、複数内定の割合も26%にとどまります。推薦制度の利用者の多い「旧帝大クラス」や「上位国立大クラス」では、「1社」のみ内定保有者の割合が4割前後と高くなっています。内定保有者に占める複数内定保有者率で見てみると、「上位私大クラス」は71.9%と7割を超え、「早慶クラス」も66.7%と高くなっています。「上位国公立大クラス」では、複数内定保有者率は45.0%にとどまります。内定者の中では、1社のみの内定を保有している学生が55%と過半数になります。
内定保有者に、内定した企業の従業員規模を尋ねたデータが[図表12]です。「1001~5000名」「5001名以上」の大企業の割合で比べてみると、「旧帝クラス」の73%に対して、最も割合が低い「中堅私大クラス」でも44%と、差はあるものの文系ほどの開きはありません。理系学生の内定先の多くはメーカーであり、現業職までを含めた企業規模では大企業に分類されるメーカーの割合が多いことや、求人ニーズの高い理系の方が大企業から内定を取得しやすいことが考えられます。
依然として厳しい既卒者の就職活動
政府は卒業後3年以内の既卒者を新卒枠で応募受付し、新卒学生と同様に選考することを求めていますが、その実態はどうでしょうか。過去3年間の状況をまとめたものが[図表13]です。2013年卒と2014年卒の比較では「内定者が出た」割合が大きく伸びていますが、これは単に選考スケジュールの前倒しによるものになります。2013年卒では「選考中または未選考」が21%もありましたが、選考の前倒しが図られた2014年卒では「選考中または未選考」は9%しかありません。要は選考の結果が出た企業が多く、「内定者が出た」6%→14%、「内定には至らなかった」13%→17%と増えているわけです。「内定者が出た」「内定には至らなかった」「選考中または未選考」の企業、つまり「新卒枠で受け付け、新卒枠で選考する」企業の割合は、過去3年間ほぼ4割で変化はありません。また、「内定者が出た」企業は、今年も昨年と同じく14%にとどまります。
各企業の求人意欲が高まり、企業にとっては採用難になってきているというのに、既卒者をめぐる環境には変化がないようです。「今年がだめでも来年があるさ」という甘い考えを学生が持たないよう、大学の強い指導力が望まれるところです。