上位校の学生ほど「面接」とは別の名目で呼び出し
経団連の指針では、面接選考の解禁は6月1日とされており、経団連加盟の大手企業の間では、解禁前の5月末までは「面接」という表現を使わずに学生との接触を重ねている企業が多くなっています。そこで、「面接」以外の名目での呼び出しにもかかわらず、実質的には面接だったことがあるかを学生に聞いてみたところ、やはり大手企業の選考を多く受けている上位校ほど、そのような事実が裏付けられました[図表8]。旧帝大クラスでは87%もの学生が、「面接」以外の名目で選考会に呼び出された経験を持ちます。早慶クラスでも81%と8割を超え、上位国公立大や上位私大クラスでも7割を超えます。
具体的にどんな名目が使われたかを自由記述方式で回答してもらったところ、最も多かったのは「面談」でした。さらに、それ以外にも「社員面談」「リクルーター面談」「キャリアマッチング面談」「ジョブマッチング面談」「マッチング面談」「事前面談」「模擬面談」「個別面談」など、さまざまな表現が使われているようです。中には、「一次面談、二次面談、人事面談、役職者面談、最終面談」など、明らかに「面接」を「面談」と差し替えているだけの例もあり、大いに笑えます。最も笑えたのは「人事部長との選考前面談」です。そこまで細かく表現していながら、面接とは決して呼ばないその姿勢に脱帽するしかありません。その他の名目で学生からの回答が多かったのは、「座談会」「お茶会」「キャリアミーティング」「懇談会」「懇親会」「個別説明会」「質問会」「社員訪問」「就職相談会」「食事会」「対話会」などです。
年々増加する複数内定保有学生
6月後半(6月14~25日)時点での内定保有状況を聞いてみました[図表9]。こちらも経年比較してみると、「0社」、すなわち未内定者は2017年卒:20%→2018年卒:15%→2019年卒:14%と着実に減少しています。逆に言えば、2017年卒:80%→2018年卒:85%→2019年卒:86%と内定保有者が増えているということです。
さらに、内定を「1社」のみ保有する学生の割合も、2017年卒:32%→2018年卒:30%→2019年卒:27%と年々減少しており、6月後半時点で2社以上の内定を保有する学生が年々増えているということになります。複数内定を保有する学生の割合は、2017年卒:48%→2018年卒:55%→2019年卒:58%と、ここ2年間で10ポイントも増加していることになります。特に「4~6社」の内定を保有している学生の伸びが高くなっています。
内定率では大学間格差が減少
内定保有社数を大学グループ別に比較してみると、未内定者の割合は旧帝大クラスや早慶クラスといった上位校と、中堅私大やその他私立大では10ポイント前後の差が見られます[図表10]。ただし、かつて面接選考解禁日が4月1日だった時代(2015年卒採用まで)と比較すると、大学間格差はこれでも劇的に解消しているのです。
参考までに、経団連倫理憲章の最終年であった2015年卒学生を対象に実施した4月下旬時点の調査データを見てみると、早慶クラスの未内定率が21%だったのに対して、その他私立大のそれは実に61%にも達していました[図表11]。
4月の選考解禁ですぐに内定を出していたのは大企業がほとんどで、中堅・中小企業の選考・内定出しは5月以降に本格化していたためです。つまり、当時の選考解禁月に内定を持っていたのは大企業からの内定が大半で、中堅・中小企業からの内定はまだこれからというように時期が明確に分かれていたのです。それに対して、近年はインターンシップもそうですが、中堅・中小企業の選考も比較的早くから実施され、大企業との選考時期の棲(す)み分けがなくなってきたと言えます。