面接は学生からも見られている
1次面接は受験学生数も多く、人事部門だけではとても対応できずに、他部門の管理職やスタッフにも面接官として協力してもらうことが多くなります。ただし、学生にとってはあくまでも会社代表の「面接官」であり、人事部門であろうが、その他の部門であろうが関係ありませんし、その区別もつきません。「面接官」の態度、印象がそのまま会社のイメージ、評価となります、求める人材像や見るべきポイントの目線合わせももちろん重要ですが、面接における基本的な態度やマナーを身に付けるように、すべての面接官に指導を徹底する必要があります。面接官の好印象・悪印象は、学生の企業の志望度に大きく影響します。それまで採用ホームページや映像ツール、インターンシップ、セミナー・説明会等を通して熟成させてきた志望度を、たった1人の面接官の態度や不用意な一言で台無しにしてしまうこともあります。逆に、それほど高くなかった学生の志望度を飛躍的に高められることもあります。面接は、企業が自社に合う学生を見極める場であると同時に、学生もまた自分に合うと思われる企業を見極める場でもあります。
学生は面接官のどんなところを見ているのでしょうか。学生アンケートで寄せられたコメントを見ていきましょう。
【印象のよくない面接官】
・終始面倒臭そうな態度。決め付けたような質問(電機)
・早く終わらせたい感じがすぐに伝わった(金融)
・学生をベルトコンベアーに乗せて見るような面接形式で、この面接数分で一体面接官は何が分かったのか甚だ疑問だった(マスコミ)
・質問がすべてマニュアル通りだった(住宅)
・グループディスカッションの面接官が1人で2グループを担当しており、全体を見られていないと思ったから(旅行)
・面接官が寝ていた(サービス)
・あまり自分に対して興味を抱いていないように感じられた(旅行)
・圧迫面接を採用している企業には良い印象が抱けない。入社後、社員を信頼できなくなる(マスコミ)
・態度が高圧的、学生をバカにしたような話の内容だった(ソフトウェア)
・圧迫面接に近かった。言いたいことを理解する姿勢が見られなかった(通信)
・圧迫面接というより人格否定面接(サービス)
・考え方を否定されるような面接をされ、正直唖然としたから(流通)
・面接中に意見を否定され、反論や追加の意見をする時間を与えてくれなかったから(電機)
・面接官がマスクしたままで、とても横柄な態度だった。面接してやっているんだ、というスタンスだった(通信)
・いきなり『こっちも時間ないんで、短めに話してくださいね』と偉そうな態度(食品)
・基準があいまいでどこを見ているのか分からなかった(通信)
・面接官の質問の意味が分からなかったことが度々あった(食品)
・志望企業を言ったら、笑いとばされ、他社批判をされた(運輸)
・集団面接で、明らかに自分に割り当てた時間が少ないように感じた。自分の話には関心がないのかな、と思った(インターネット)
・面接中顔をあまり見てもらえなかった(保険)
・エントリーシートをほとんど読んでいてくれていなかったこと(商社)
・紙に大きく「-(マイナス)」と書くしぐさがその場で見たくなくても目に入ってしまって、話している途中でメンタルがやられた(マスコミ)
・足を組みながら面接された(サービス)
・選考フローが謎すぎる。選考に関係ないリクルーターと言いながら、それだけで内定もらう人もいる(金融)
・懇親会に呼ばれた人と呼ばれない人で選考フローが違う(エネルギー)
どうでしょうか。当社の面接官にはこんな対応をする社員は一人もいないと言い切れますか? これらは学生から寄せられたコメントのごく一部です。ここでは同様なコメントが多くあったものをピックアップしてみました。ポイントを整理してみましょう。
●面接官の熱意が感じられない
マニュアルに従って流れ作業的に面接を淡々とこなしている様が学生に伝わってしまっています。多分、他部門の社員が忙しい業務の傍らに駆り出されて、仕方なく面接官として協力しているのでしょう。面接官として協力してもらう社員やその上司には、採用活動や面接がいかに大切であるかをしっかりと共有してもらえるようにすることが大切です。
●圧迫面接
威圧的な態度や横柄な態度を恣意的に演じたり、学生の回答を全否定したり、「なぜ?」との問い掛けを連発するなどした際の学生の受け答えや態度を確認する手法ですが、当然ながら学生の受けはよくありません。仮にその面接を合格したとしても、次の選考を辞退するという学生もいます。普段は礼儀正しい社員だとしても、そのような対応ができること自体が人間不信につながるというのです。選考手段として圧迫面接が本当に必要なのかどうかを考え直してみる必要もあるでしょう。
中には、企業側は圧迫面接をしているつもりがない場合もあります。学生の考え方や価値観の根元を探るための深掘り面接は、ややもすると圧迫面接と誤解される場合もあります。ただし、こちらの場合はあくまでも受け手側の問題ですので、深掘り面接は有効な手法だと考えます
●面接スキルが未熟
学生のポテンシャルを見抜く目も大切ですが、その前工程として学生の考え方や価値観を引き出すための面接スキルも大切です。緊張を解くアイスブレイク、話しやすい雰囲気づくり、そして聞く力です。もともとそれらの能力が自然と備わっている人もいますが、多くは研修を通じてコツをつかんでいただく必要があります。
●基本的マナーができていない
集団面接ではできるだけ平等に対応する、面接評価表には面接後に記入する、エントリーシートは事前に読んでから面接に臨むなどは、面接の基本的なマナーになります。これらも指導を徹底しておく必要があるでしょう。面接で聞いてよいこと、聞いてはいけないことなども基本的な事項として全員が理解しておく必要があります。もっとも、「話を聞くときは相手のほうを見る」などは面接に限ったことではなく、基本的なマナーです。
無理のない面接者数を設定する
ところで、貴社では1次面接に呼ぶ学生数はどうやって決めていますか? 中には応募者(エントリーシート提出者)全員という企業もあるでしょうが、エントリーシートやWEB適性検査で事前選考し、それらを合格した学生だけを1次面接に呼ぶ企業のほうが多いことでしょう。では、その合格者数をどうやって決めるかです。大きく分けると3タイプになります。一つは、絶対的な合格ラインを設定して、それをクリアしていれば合格とする。つまり、事前に合格者数を設定しない考え方です。二つめは、最終的な採用計画数から逆算して、内々定者数、最終面接者数、3次面接者数、2次面接者数、1次面接者数とシミュレーションして合格者数を決めるやり方。三つめは、エントリーシート提出者数からその何割かを合格者とする考え方です。
どれが正解というわけではありませんが、もう一つ、面接官の数を加味して調整することを考えてみてはどうでしょうか。面接官は、トレーニングによってある程度のスキル向上は期待できるものの、学生とって魅力的な人物であるかどうかはトレーニングでどうにかなるものではありません。誰でも面接官になれるわけではないということです。
面接官にふさわしい社員であり、かつその時期に面接に協力できる社員の数から、面接できる学生の数が決まってきます。面接官の適性のない社員までを駆り出す羽目にならないよう、無理のない面接者数を設定することも大切です。
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