「ミッション」「ビジョン」「バリュー」が組織にもたらす強い効果
では、ビジョンを共有できる組織づくりを実現するためには、どうすればいいのでしょうか。過去の組織は一般的に傘の骨型のピラミッド構図でした。しかし現在は、ミドルマネジャーが「中間」管理職ではなく「中心」の存在となり、社内メンバーや社外の人とネットワークを組む、網目型のコミュニケーションへと変化しています。つまり、意思決定権限は限られていても、チームとしてのミッションは、ミドルマネジャーが指針を示していかなければならないということです。これを体現したのが、2015年ラグビーワールドカップ(WRC)に出場した日本代表チームです。日本代表は初戦で、「絶対に勝てない」といわれた優勝候補の南アフリカを撃破しました。試合終了間際のラストプレーで、ヘッドコーチが着実に同点を狙うキックを指示したにも関わらず、円陣を組んだ時に木津武士選手が「同点じゃ歴史は変わらない」と一言放ち、キャプテンがその場でトライを取りに行くことを決断。メンバーの想いは固まり、わずかな時間で勝負をかけ、勝利できたのです。この勝因は、「目的」「目標」「計画」がチームで語られて共有され、一貫して実行されてきたことにあります。共通認識を持っていたからこそ、選手たち自身は最適な判断をできたのです。
また、同じく下記の「他社の仕事の革新例」の通り、キリンビールや旭山動物園も、使命を持っていたからこそ目標を達成し、革新を起こすことができました。
このように、「ミッション(使命)」、「ビジョン(目指す姿)」、「バリュー(価値観)」によって個々人のエネルギーが活性化されると、組織としてのベクトルも上がります。そして、その組織に属しているというプライドが高まるため、チャレンジが起こり、イノベーションに結びつきやすくなります。そうした効果は、企業の実例からも、脳機能の面からも証明されています。