就活は楽勝だと思っている学生はいるのか
ここからは就活生による「就活川柳・短歌」です。採用担当者からの応募と違って、就活生からの応募作品は圧倒的に川柳で、短歌作品はごく少数でした。まずは、【最優秀作品】からです。
不合格 心もSuicaも チャージ切れ (東京都 ピリオドさん)
地方の学生が東京へ出てきて活動するのと比べれば、都内の学生の移動交通費はそれほどではないかもしれません。ただ、応募先1社だけでも、インターンシップ、セミナー・説明会、OB・OG懇談会、そして複数回にわたる面接と、何度も足を運べば交通費もばかになりません。何社も並行して就職活動をしますので、この間チャージしたばかりのSuica(JR東日本のICカード)もすぐに残高不足になるわ、応募先からはお祈りメール(不合格のお知らせ)が届くわとなれば、心が萎えて折れそうになるのも無理はありません。ぜひ、心のチャージをたっぷりしてほしいものです。
続いて、【優秀作品】を2作。
お祈りを されないように 祈る僕 (埼玉県 森あらしさん)
エントリーシートや面接の不合格者に届くメールの末尾には、「今後のご活躍をお祈り申し上げます」や「充実した学生生活を送られることをお祈り申し上げます」といった文言が挿入されていることが多くなっています。これを「お祈りメール」と呼びます。そして、お祈りメールが届くことを「祈られた」「お祈りされた」と表現します。この手のメールが来ないこと、つまりは合格になることを「祈る」という句ですが、実はこの「お祈りメール」すら届かないこと(「サイレント」と呼ぶ) を、学生は最も嫌います。いつまで待てばいいのか分からないので、もっとたちが悪いのです。メールが届かないことに対して、メールサーバの不具合等によるものかもしれないと思ってしまうことも。採用担当者の皆さん、「サイレント」よりは「お祈り」のほうがまだマシです。
ありのまま 見せたら絶対 落とされる (栃木県 おもちさん)
就職活動(採用活動)は、企業と学生の“化かし合い”だと昔からよく言われます。企業のセミナーや説明会に登場する社員や、リクルーターとして学生の前に現れる社員は、いずれも社内で優秀と評される社員ばかり。企業側だって、不都合な内情は隠しているものです。面接に当たって採用担当者からは、「普段の皆さんをそのまま出してください」とよく言われますが、ありのままの自分に自信を持っている学生など、ほんの一握りです。少しでもよく見せようと躍起になる学生がほとんどです。学生側も身なりや面接での受け答えはもちろんですが、FacebookやLINEなど、普段の姿がまる分かりになるものは要注意です。私たちが学生時代などには、興信所を使って内定者の身辺調査をする会社も実際にありましたが、さすがに最近はありません。それらの行為を禁止されたこともありますが、SNSを見るだけで、もっと手軽にできてしまうからそこまでする必要もないとも言えます。
働き方改革のウソがばれることも
ここからは、【佳作】に入選した作品から4作品をご紹介します。受信時間 残業時間が 浮き彫りに (愛知県 ベルさん)
働き方改革の残業時間抑制の流れを受けて、「残業は多くない」と言う企業は増えています。ですが、そう言っている会社から届くメールの着信時間を見れば、その会社の言っていることが本当かどうかよく分かります。人事がこの時期に忙しいことは学生も理解していますが、夜遅くにメールを送るということは、「私は今残業しています」と言っているようなものです。就活生を不安にさせる要素になるのでぜひご注意を。
サークルの 副代表が 大発生 (千葉県 ブンジさん)
就活期になると、エントリーシートや面接のために、サークルの「副代表・副部長」を名乗る学生が急増します。本当は何の役職にも就いていないにも関わらずです。そのサークルには、そもそも「副代表・副部長」なんて役職はないというところもあるのではないでしょうか。さすがに「代表・部長」とまで名乗ることには気が引けるようです。全国の大学の部やサークルの数を調べてみると面白いと思います。きっと、「副代表・副部長」の人数のほうがはるかに上回っているのではないでしょうか。
祈られた 企業の数だけ 強くなる (東京都 松野ガチョウさん)
学生にとって、筆記試験で落とされることよりも、面接で落とされることはかなりのショックです。筆記試験は得点がはっきり出るわけですから、仮に自分ではかなりできたつもりにも関わらず落ちたとしたら、自分の得点よりもさらに高い得点の受験生がそれだけ多くいたと割り切ることができます。しかし、面接はそうはいきません。どこをどう見られ、どう点数化されているのかも分かりませんし、自分自身の人格を全否定されたように思ってしまいます。特に、高校、大学と挫折を経験することなく、それなりに偏差値の高い大学に進学してきた学生からすれば、初めて不合格を伝えられた時のショックはかなり大きなものになります。ただそれも、企業が求める人材タイプと自分が合わなかっただけだと思い直すことで、2回目からのショックはやや和らぎます。「強くなる」と言っていいのか、「慣れてくる」と言っていいのかは分かりませんが…。
解禁日 名前ばかりで 涙する (埼玉県 ど文系なのにITへさん)
経団連の採用に関する指針では、「3月1日 採用広報解禁(会社説明会解禁)、6月1日 面接選考解禁」とされており、就職ナビの採用情報の公開、プレエントリーの受付開始も3月1日です。ですが、実態は全く異なります。前年の夏からインターンシップという名目での会社説明会はスタートし、6月解禁のはずの面接は、早ければ1年前のインターンシップに参加するための事前選考の時点ですでに始まっています。リクルートキャリアの調査によれば、2018年6月1日時点の内定率は68.1%とのこと。6月1日からが就職活動の本番だと思っていた学生からすれば、すでに7割の学生が内定を持っている現実は、それは「泣きたくなる」状況に違いありません。ただ、これだけインターンシップやら早期化やらが叫ばれ、周りの学生が説明会や面接に奔走し、毎月のように前年を上回る内定率の調査結果が発表されていたことを考えれば、逆に「6月解禁」を信じていた学生に涙したくなります。あなたは、これまでどんな生活をしていたのかと。
ProFutureのオフィシャルページでは、「2019年卒 採用川柳・短歌/就活川柳・短歌」の全入選作品の作者の思いも掲載しています。どんな気持ちでこの川柳や短歌が生まれたのか、ご興味をお持ちいただけましたら、ぜひご覧ください。
■ProFuture 「2019年卒 就活川柳・短歌」オフィシャルページ
https://www.hrpro.co.jp/senryu2019.php
■ProFuture 「2019年卒 就活川柳・短歌」オフィシャルページ
https://www.hrpro.co.jp/senryu2019.php
- 1
- 2