1回目は人事システム、タレントマネジメントシステムを取り上げる。
規模の大小、メーカー、非メーカーで異なる「人事管理システム」の導入状況
グラフに掲示していないが、「人事管理システムの導入状況」を見ると「導入済み」は全体では58%。メーカー系は67%と導入が進んでおり、非メーカーは52%と低い。
しかし、グラフに示すように規模が大きいほど導入は進んでおり、小さいほど遅れている。
特に導入が進んでいるのはメーカー系の「1001名以上」であり、96%とほとんどの企業が導入済みだ。しかし規模が小さくなると「301名~1000名」で61%、「300名以下」で48%と急激に低下する。そして「300名以下」の「現時点で導入予定はない」は38%もあるから、メーカー系は規模によって人事管理システムへのニーズで差異が大きいことがわかる。
図表1:人事管理システム導入状況(メーカー系、規模別)
非メーカー系も規模によって導入度合いが異なっている。「1001名以上」は64%、「301名~1000名」81%と中規模の方が進んでいる。しかし「300名以下」は29%と低い。
規模が大きいほど導入が進んでいるのは、社員数が多く手作業での管理が非効率、あるいは無理だからだろう。
図表2:人事管理システム導入状況(非メーカー系、規模別)
人事管理システムの75%はパッケージ
人事管理システムの開発形態については、メーカー系でも非メーカー系でも75%がパッケージだ。自社オリジナル開発は2割程度にとどまっている。
自社オリジナル開発の中身は企業によって異なっているはずだ。企業によって管理項目が異なっているので、パッケージのカスタマイズが困難だったりコストがかかったりするケースもあるだろうし、小規模企業の場合はエクセルやアクセスに手を加えて自社仕様版を作っているケースもあるだろう。
図表3:人事管理システムの開発形態(全体)
大きな差異がない「給与計算システム」の導入
人事管理システムでは、メーカー系、非メーカー系、規模別で大きな違いが出たが、「給与計算システム」の導入については大きな差異は認められない。全体の81%が導入済みであり、5%が導入を検討している。ほとんどの企業が給与計算システムを使っている。
給与計算はシステム化しやすく、人事の負担を軽減できる。多くの企業が導入するのは当然だろう。
図表4:給与計算システム導入状況(全体)
規模により異なる「給与計算システム」開発形態
「給与計算システム」の開発形態はパッケージが圧倒的に多く全体の79%を占めており、自社オリジナル開発は16%にとどまっている。
ただ規模別で見るとかなり異なり、図に示すように規模が大きいほど自社開発の比率が高くなっている。
図表5:給与計算システムの開発形態(全体、規模別)
規模別で大きな差がある「勤怠管理システム」の導入状況
「勤怠管理システム」の導入状況は、メーカー・非メーカーでは大差はないものの、規模による差はきわめて大きい。
「1001名以上」では83%が導入しており、「導入を検討中」4%を合わせると87%だ。ところが「301名~1000名」の導入企業は76%、「300名以下」では56%にとどまっている。そして「300名以下」は「導入予定なし」が30%と多い。
図表6:勤怠管理システム導入状況(規模別)
「勤怠管理システム」の開発形態でも多いのはパッケージだ。全体の61%を占め、自社オリジナル開発は34%にとどまる。もっとも「人事管理システム」や「給与計算システム」と比較すると、自社オリジナル開発は10ポイント以上多く、パッケージは10ポイント以上少ない。
図表7:勤怠管理システムの開発形態(全体)
導入が遅れる「研修受講管理システム」
これまでの人事ITシステムは、導入企業が過半数であり、「人事システム」としてIT化が進んでいることを示している。しかし「研修受講管理システム」は導入している企業は29%に過ぎず、「導入を検討中」10%を含めても39%にとどまっている。そして57%と過半数の企業が「導入予定なし」と回答している。
ITシステムの導入に際しては、初期投下コスト・運用コストをベネフィットと比較検討するが、「研修受講管理システム」にそれほど多くのコストはかからないはずだから、ベネフィットが小さく優先順位が低いと判断しているのだろう。また単なる受講履歴だけなら、社員名簿に紐付けることもできる。
ただし社員数が多くなれば、他のシステム同様に必要になる。アンケート結果を規模別に見ると「1001名以上」では54%が導入済みであり、「導入を検討」の17%を合わせると71%になる。逆に規模が小さい「300名以下」で導入しているのは11%、「導入を検討」の9%を合わせても2割という少なさだ。
この数字から見ると、規模が大きい企業ほど「研修受講管理システム」を必要としており、必要とする理由は研修を頻繁に行うからだろう。
図表8:研修受講管理システム導入状況(規模別)
まだ少ない「タレントマネジメントシステム」導入企業
「研修受講管理システム」よりもさらに少ないのが、各人事系システムを統合した「タレントマネジメントシステム」だ。導入済みの企業はわずかに6%。導入を検討中の企業も11%と少ない。
企業規模別で見ると、「1001名以上」で8%とやや多いが、50%は導入予定がない。「301名~1000名」や「300名以下」は7割以上で導入予定がない。
ただ「1001名以上」では21%が「導入を検討」している。一般に新しいシステムや制度の導入は、大手の熱心な人事から始まることが多いから、これから普及していく兆しのようにも見える。
図表9:「タレントマネジメントシステム」導入状況(規模別)
「タレントマネジメントシステム」で目立つクラウド型
「タレントマネジメントシステム」を導入している企業に開発形態を訊ねたところ、パッケージが62%と多く、自社オリジナル開発は18%と少ない。自社開発するには特殊過ぎるのかもしれない。またパッケージなら豊富な運用実績があり、信頼性が高いとも言える。
図表10:「タレントマネジメントシステム」の開発形態(全体)
利用環境で目立つのは「クラウド型」の多さだ。45%もあり、他の人事システムで多い「自社サーバ」は31%にとどまっている。たぶんパッケージ利用企業はベンダーのクラウドサービスを利用しているからだと思われる。
図表11:「タレントマネジメントシステム」の利用環境(全体)
業種によって異なる「タレントマネジメントシステム」への登録者
まだ普及期を迎えていない「タレントマネジメントシステム」だが、数少ない利用企業はなぜ導入したのか? システムに登録する社員の種類と導入目的を見てみよう。まず登録対象者だが、メーカー系と非メーカー系で大きな違いがある。
「次世代後継者候補のみ(海外含む)」は今回の調査では皆無だった。「次世代後継者候補のみ(国内のみ)」はメーカー系で6%、非メーカー系で9%。大差ない。ところが「管理職のみ(海外含む)」はメーカー系は31%と多いが、非メーカー系はゼロ。メーカー系はグローバル化が進み、非メーカー系は国内市場でビジネス展開していると言うことだろう。「管理職のみ(国内のみ)」はメーカー系が13%、非メーカー系が5%。
逆に「全社員(国内のみ)」を見ると非メーカー系は62%なのに対し、メーカー系は31%と半分だ。2つの円グラフを比較すると、非メーカー系では従業員管理のために使われ、メーカー系ではサクセッションプランやマネジャークラスの育成や配置のために使われているような印象を受ける。
図表12:「タレントマネジメントシステム」に登録する人材(メーカー系)
図表13:「タレントマネジメントシステム」に登録する人材(非メーカー系)
メーカー系は「サクセッションプランの遂行」、非メーカー系は「人材育成」を重視
メーカー系と非メーカー系の違いは、導入目的でもはっきりわかる。目立つのは「サクセッションプランの遂行」と「人材育成」だ。メーカー系の「サクセッションプランの遂行」は41%もあるのに、非メーカー系では24%と低い。逆に「人材育成」はメーカー系では53%にとどまっているのに、非メーカー系では95%とほとんどの企業が導入目的としている。
「タレントマネジメントシステム」への登録人材と合わせると、非メーカー系は全従業員対象の育成システムとして利用し、メーカー系では選抜人材の育成という色彩が強いようだ。
図表14:「タレントマネジメントシステム」の導入目的(メーカー・非メーカー比較)
カスタマイズ対応力と人事業務への精通度がベンダー選定の鍵
人事系システムを提供するベンダーはたくさんあるが、その中から1社を選定する際の基準について聞いてみた。
ベンダーの多くは「コンサルティング力」や「信頼性」、「実績」などを謳い文句にしているが、今回の調査結果を見ると、どうやら的外れな惹句のようだ。
選定基準については業種や規模の違いは小さく、最も重視しているのは「人事部門の業務への精通度」55%。続いて「カスタマイズ対応力」50%、「画面の操作性」49%、「価格競争力」48%である。
「製品の信頼性」が31%、「機能の豊富さ」は26%。「技術力」「コンサルティング力」「実績・シェア」「情報提供力」「営業担当の顧客対応」などは1割台にとどまっている。
図表15:人事系システムベンダー選定基準(全体)
小規模であるほど「業務効率化」を要望
次に人事担当者はベンダーに対して何を求めているのかを見てみよう。規模によって要望は異なっている。全体で見るともっとも多いのは「業務効率化」30%、続いて、「コスト削減」21%、「統合管理」19%だ。「操作性・GUIの改善」も14%ある。「システムメンテナンス対応」は10%と低い。しかし規模別でだいぶ違う。図を見て欲しい。
一目でわかるのは小規模であるほど「業務効率化」を要望していることだ。大企業はシステムによる業務効率化を期待していないか、あるいはすでに済ませているということだろう。
次に目立つのは「統合管理」への要望が、規模が小さいほど少なく、大きくなると多くなっていることだ。「システムメンテナンス対策」も同じような傾向になっている。社員数の大小で企業の要望は変わると言うことだ。
図表16:人事系システムベンダーへの最も強い要望(全体)
【調査概要】
調査主体:HR総合調査研究所(HRプロ株式会社)
調査対象:上場および未上場企業の人事担当者
調査方法:webアンケート
調査期間:2013年3月25日~4月3日
有効回答:182社(1001名以上48社, 301~1000名54社, 300名以下80社)
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