24卒学生は、大学生活のすべてがWithコロナとなっている学年であるため、採用活動において、これまでとは異なる対応を迫られる場面もあるのではないだろうか。
HR総研では、2022年12月時点における2023年と2024年新卒採用の実態についてアンケートを実施した。本レポートでは2024年新卒採用選考の動向について、以下に報告する。
<概要>
●インターンシップ実施時期、夏期・冬期のピークがなだらかに
●インターンシップ形式、企業規模が大きいほどオンライン形式の比重が高く
●インターンシップの位置付け、大企業はターゲット層の獲得、中堅・中小企業は?
●個別企業セミナー・説明会の形式、大企業ではオンライン主軸が過半数
●24年新卒採用面接の開始時期、大企業では「2023年1月」がピーク
●24新卒採用のガクチカ問題、評価ポイントに配慮する企業も
●24新卒採用の内定出し、大企業の4割が「2023年1月」までに開始、中小企業は両極化か
インターンシップ実施時期、夏期・冬期のピークがなだらかに
2024年卒学生向けインターンシップの実施状況を見てみる。
従業員数1,001名以上の大企業では「前年同様に実施する」が最多で67%と7割近くで、「前年は実施していないが、今年は実施する」の5%と合わせると、「実施する」企業の割合は72%と7割を超えている。301~1,000名の中堅企業でも「前年同様に実施する」が最多で60%、「実施する」企業の割合は69%と7割となり、大企業と同程度の実施状況となっている。一方、300名以下の中小企業では「実施する」企業の割合は40%で、大・中堅企業より顕著に低い実施率となっている(図表1-1)。
【図表1-1】企業規模別 インターンシップの実施状況
インターンシップを実施する企業について、その実施(予定)月を見ると、昨年と同様に夏期と冬期にピークが見られている。大企業では「2022年8月」に46%、「2022年12月」に43%となっており、以前は冬期のピークが「1月」であったが、採用の早期化に伴いインターンシップも早期化していることが推測される。また、夏期と冬期のピーク間でも4割近くの実施率を維持しており、顕著な谷間となる期間は見られない。オンライン開催することで、大学の授業がある期間でも手軽に開催・参加できるようになっていることがうかがえる。中堅企業では、「2022年8月」と「2022年12月」ともに60%で夏期・冬期のピークとなっており、中小企業では夏期は「2022年8月」で50%、冬期は「2023年1月」で58%となり、冬期は大・中堅企業より1ヶ月遅れでピークとなっている。中堅・中小企業でもピーク間の期間でも3割以上の実施率が維持されていることが分かる(図表1-2)。
【図表1-2】企業規模別 インターンシップの実施(予定)月
インターンシップ形式、企業規模が大きいほどオンライン形式の比重が高く
インターンシップの実施形式については、大企業では50%が「対面形式とオンライン形式を混合して実施」で、次いで「すべてオンライン形式で実施」が35%となり、対面形式のみで実施するのは僅か15%となっている。中堅企業では、「すべて対面形式で実施」の割合が大企業よりやや高く25%となり、中小企業ではさらに高く「すべて対面形式で実施」が52%となっている。コロナ禍以降において急激にオンライン形式で実施する企業が増加し、特に大企業や中堅企業では8割前後がオンライン形式を導入しており、学生にとっては対面形式での参加が、貴重な機会となっていることが推測される(図表2-1)。
【図表2-1】企業規模別 インターンシップ実施形式
どのようなインターンシップ期間タイプで開催されているかについて、実施形式別に見てみると、「対面形式」では「1日程度」が最多で41%、次いで「半日程度」、「2~3日程度」、「2週間程度」がともに24%となっている。一方、「オンライン形式」では「半日程度」が圧倒的で56%、次いで「1日程度」が31%、「2~3日程度」は27%となり、「1週間程度」以上では僅か1割程度以下で、対面型より顕著に短期間タイプでの開催となっていることが分かる(図表2-2)。
【図表2-2】実施形式別 インターンシップ期間タイプ
インターンシップ内容タイプを実施形式別に見ると、「対面形式」では「実務体験」が最多で56%、次いで「業界・事業紹介」と「ケースワーク/グループワーク」がともに52%などとなっている。一方、「オンライン形式」では「業界・事業紹介」が80%、次いで「ケースワーク/グループワーク」が73%とこの2つに集中しており、対面形式で最も多い「実務体験」は29%で、対面形式より顕著に低くなっている。また、「会社/現場見学」は、対面形式では43%であるのに対してオンライン形式では僅か13%にとどまっており、前述したとおり、オンライン形式では半日や1日程度の「1DAY仕事体験」で実施できる内容が多くなっていることが分かる(図表2-3)。なお、インターンシップの具体的な内容を記入してもらったところ、「対面形式」と「オンライン形式」でプログラム内容を変えている企業がある一方、全く同じプログラム内容を両方の形式で実施している企業も少なくないようである。
【図表2-3】実施形式別 インターンシップ内容タイプ
インターンシップの位置付け、大企業はターゲット層の獲得、中堅・中小企業は?
次に、24卒向けインターンシップの参加者を採用選考に結び付けるかについては、大企業では「選考とは結び付けないが、優秀な学生においては考慮する」が最多で39%、次いで「選考と結びつける」が36%となっている。すべての参加者を選考に繋げるわけではないが、自社のターゲット層となる学生を見極めて選考に繋げようという意図がうかがえる。中堅・中小企業では「選考と結びつける」が最多でそれぞれ43%、35%となっており、大企業とは異なり母集団形成を重視する企業が多い傾向となっている(図表3-1)。一方、「選考とは一切関係ない」とする割合は企業規模に関わらず1割程度以下で、インターンシップを実施するほとんどの企業が何らかの形で採用選考を意識していることが分かる(図表3-1)。
【図表3-1】インターンシップ参加者を採用選考に結び付けるか
いずれの企業規模でも3割以上が「選考とは結び付けないが、優秀な学生においては考慮する」としているが、ターゲット層となる「優秀な学生」や「自社にマッチする学生」の見極めやすさについて、対面形式とオンライン形式での違いがあるかを見てみると、いずれの企業規模でも「対面形式の方が見極めやすい」の割合が高くなっており、特に中小企業では94%に上っている(図表3-2)。
実施しやすさはオンライン形式で実際に実施率が高いのもオンライン形式となっているが、ターゲット層の学生の見極めのしやすさとなると対面形式となるようだ。学生としても企業の雰囲気や仕事内容を理解しやすいのは対面形式であるため、対面形式で参加したいと希望する学生も多い傾向にある。企業も学生もお互いに理解を深めるためには、貴重な機会となっている対面形式でのインターンシップを有効に活用する必要があるだろう(図表3-2)。
【図表3-2】実施形式による「優秀な学生や自社にマッチする学生の見極めやすさ」の違い
個別企業セミナー・説明会の形式、大企業ではオンライン主軸が過半数
個別企業セミナー・説明会の実施形式については、インターンシップと同様に「対面形式のみで実施」の企業は少なく、ハイブリッドで実施する傾向が見られている。大企業では「対面形式を主軸にオンライン形式でも一部実施」が最多で33%、中堅企業では「オンライン形式を主軸に対面形式でも一部実施」が最多で44%、中小企業では「対面形式を主軸にオンライン形式でも一部実施」が最多で34%などとなっている(図表4)。
【図表4】企業規模別 個別企業セミナー・説明会の実施形式
24年新卒採用面接の開始時期、大企業では「2023年1月」がピーク
次に、2024年新卒採用の選考面接について見てみる。
選考面接の開始(予定)月は、大企業では「2022年10月」から増え始め、「2023年1月」がピークで18%となっており、ここまでに開始するのは59%と6割に上る。中堅企業では大企業より1ヶ月程度遅れて「2022年11月」から増え始め、「2023年3月」がピークで21%、ここまでに開始するのは72%と7割に上っている。一方、中小企業では「2023年7月以降」が最も多く21%であるものの、「2023年3月」にもピークがあり18%で、ここまでに53%と過半数が始めるとしている。さらに、「2022年7月」までに開始した割合は大・中堅企業より高く17%(大企業5%、中堅企業14%)となっている。中小企業の中でもベンチャー企業や外資系企業など特徴のある企業では、超早期採用や通年採用を推進していることがうかがえる(図表5-1)。
【図表5-1】選考面接を開始する予定の月
選考面接の実施形式については、大企業では「対面形式を主軸にオンライン形式でも一部実施」が最多で46%と半数近くで、「オンライン形式を主軸に対面形式でも一部実施」(38%)と「オンライン形式のみで実施」(10%)を合わせると48%で、対面主軸よりやや多い傾向となっている。中堅企業では「オンライン形式を主軸に対面形式でも一部実施」が53%で過半数となっており、中小企業では「対面形式を主軸にオンライン形式でも一部実施」が最多で35%であるとともに、「対面形式のみで実施」が33%に上り、これらを合わせると68%と7割近くが「対面形式を主軸」として面接を行っていることが分かる(図表5-2)。なお、大企業では「対面形式のみで実施」は0%になっているが、前述したとおり、対面形式の方がターゲット層の学生の見極めやすいことからも、最終面接など重要な判断が必要な面接は対面形式で実施するのだろう。
【図表5-2】選考面接の実施形式
24新卒採用のガクチカ問題、評価ポイントに配慮する企業も
コロナ禍により「ガクチカ」を思いどおりにできなかった学生もいる中、2024年新卒採用の面接選考面接で、ガクチカに関する質問の動向を見てみる。
ガクチカに関する質問をするかについて、「している(する予定)」の割合は大企業で41%、中堅企業で70%、中小企業で50%となっており、一方、「していない(しない予定)」はいずれも1割未満で、ガクチカの質問をしている企業の方が質問しない企業より圧倒的に多いことが分かる(図表6-1)。
【図表6-1】2024年新卒採用の面接選考面接で、ガクチカ(学生生活において力を入れて頑張ったこと)に関する質問の有無
ガクチカに関する質問をする企業において、「ガクチカ」に対する評価ポイントにコロナ前との変化があるかを聞いてみると、「ある」とする割合は、大企業では50%、中堅企業では33%、中小企業では48%となっており、少なくとも3割以上は評価ポイントを変化させる意向があることが分かる(図表6-2)。
【図表6-2】「ガクチカ」に対する評価ポイントとして、コロナ前との変化
それでは、「ガクチカ」に対する評価ポイントは、どのように変化しているのだろうか。
変化の内容に関するフリーコメントの主な意見を、一部抜粋して以下に紹介する(図表6-3)。
【図表6-3】「ガクチカ」に対する評価ポイントの変化の内容(一部抜粋)
「ガクチカ」の評価ポイント変化の内容 | 従業員規模 | 業種 |
---|---|---|
コロナ禍でどんな工夫をしたか | 1,001名以上 | 商社・流通 |
不公平感のない面接の実施 | 1,001名以上 | サービス |
活動制限の中で、どのような工夫や活動をしたかを問い、対応力や発想力を見ます | 1,001名以上 | サービス |
行動特性の判断材料としている | 301~1,000名 | 商社・流通 |
以前より、行動した内容に対しての学生の考えを聞くようになった | 301~1,000名 | メーカー |
物事に対する考え方や答え方を総合的に判断しており、内容の良し悪しにはこだわっていない | 301~1,000名 | メーカー |
物事よりもそのプロセスを評価する | 301~1,000名 | メーカー |
自信をもって取り組んできたことを語れるかどうかがポイントなので内容は問わない | 301~1,000名 | サービス |
何に力を入れたかの内容そのものを見ているわけではない | 300名以下 | メーカー |
予定や計画していたことが出来なくなったであろうことは事実なので、できたこと・できなかった事の両方を質問する | 300名以下 | メーカー |
集団での活動等については、こちらからの質問としては控えている | 300名以下 | 情報・通信 |
24新卒採用の内定出し、大企業の4割が「2023年1月」までに開始、中小企業は両極化か
2024年新卒採用の内々定出し開始予定時期については、大企業では「2022年11月」ごろから増え始め、年明けの「2023年1月」(13%)~「2023年3月」(13%)でピークとなる。また、「2023年1月」までに開始する企業は41%で、「2023年3月」までには64%が開始することとなっている。中堅企業では、「2023年5月」(16%)をピークに「2023年2月」~「2023年6月」で67%が開始する予定となっている。さらに、中小企業では、「2023年7月以降」が最多で30%となる一方、「2022年9月」までに開始した割合は20%で、大企業(13%)や中堅企業(16%)より高くなっており、選考面接から内定出しまで中小企業における開始時期の両極化が目立っている(図表7-1)。
【図表7-1】2024年新卒採用の内々定出し開始予定時期
最後に、内々定を出し始める時期の前年比較を見てみると、いずれの企業規模でも「ほとんど変わらない」が圧倒的に多く、大企業で85%、中堅企業で72%、中小企業で82%となっている。ただし、「早まる」と「遅くなる」の割合を比較すると、「早まる」の方が顕著に多く、「少なくとも早まる」(「1週間以内早まる」~「1か月超早まる」の合計)は、大企業で15%、中堅企業で23%、中小企業で11%となっている一方、「少なくとも遅くなる」(「1週間以内遅くなる」~「1か月超遅くなる」の合計)は、いずれの企業規模でも1割未満、大企業では0%となっている(図表7-2)。例年、「ほとんど変わらない」が主流ではあるものの、一部の企業では早期化の流れが少しずつ進行していることがうかがえる(図表7-2)。
【図表7-2】内々定を出し始める時期の前年比較
【HR総研 客員研究員からの分析コメント】
株式会社人材研究所 代表取締役社長/HR総研 客員研究員 曽和 利光氏
相変わらずの採用競争激化。中小企業は立ち向かえるのか
調査全体を通じて言えることは、コロナ禍や国際情勢や為替変動など景気の見通しが不安定な状況であるにもかかわらず、少子化を背景とした人手不足の影響の方が強いのか、相変わらずの厳しい採用競争市場であるということだ。例えば、早期化については、既に行くところまで行っているので(これ以上早くしても学生の意識がついてこない)、時期に大きな変化はないものの、3年生夏から冬までびっしりといろいろな会社がインターンシップを実施しており、企業の意欲はまったく衰えていない。
その中でも最も心配なのは、中小企業の動きだ。まず、そもそも採用ブランド的には大手企業や中堅企業に劣るにもかかわらず、採用のオンライン化が低くなっている。例えば、面接において、大手企業で「対面形式のみ」で実施するのはゼロだが、中小企業では3分の1の企業が実施している。コロナ禍への社会的対応が落ち着いて、withコロナになってきているのと呼応して、「そろそろ見極めのしやすい対面での採用ができる」と考えているのかもしれないが、様々な他の調査などを見ていると、オンライン採用への学生の支持は高く、おそらく、応募数の減少、辞退率の向上などをもたらすのではないだろうか。
中小企業はインターンシップも実施率は低い。大企業や中堅企業は7割がインターンシップを実施しているが、中小企業は4割である。ただ、これについては、これだけ加熱しているインターンシップ戦線に中小企業も身を投じればよいというわけでもないので、これをもってして中小企業はダメだということは言えない。ただ、リファラル採用などとかけあわせれば、中小企業も早期のインターンで戦える手法はあるのだが、そこまで行かずに、「どうせ早期は難しい」と諦めてしまっている企業が多いのかもしれない。
活動時期を見ていても、中小企業の一部が、大手企業や中堅企業と競合することを避けて、彼らの採用が終わった後で自分たちの活動を始めようとしている節が見受けられる。戦略的とも言えるが、本当に早期や中期の時期を捨てて後期に賭けることがベストという判断を考え抜いた上でしているのかは心配だ。後期は競合が少なく採りやすいかもしれないが、求人倍率が高まっている今、単に人がいなくなってしまっているだけかもしれない。
【調査概要】
アンケート名称:【HR総研】2023年&2024年新卒採用動向調査(12月)
調査主体:HR総研(ProFuture株式会社)
調査期間:2022年11月28~12月9日
調査方法:WEBアンケート
調査対象: 2023年卒採用活動を実施した企業の人事責任者、新卒採用担当者
有効回答:182件
※HR総研では、人事の皆様の業務改善や経営に貢献する調査を実施しております。本レポート内容は、会員の皆様の活動に役立てるために引用、参照いただけます。その場合、下記要項にてお願いいたします。
1)出典の明記:「ProFuture株式会社/HR総研」
2)当調査のURL記載、またはリンク設定
3)HR総研へのご連絡
・会社名、部署・役職、氏名、連絡先
・引用元名称(調査レポートURL) と引用項目(図表No)
・目的
Eメール:souken@hrpro.co.jp
※HR総研では、当調査に関わる集計データのご提供(有償)を行っております。
詳細につきましては、上記メールアドレスまでお問合せください。
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