HR総合調査研究所は2012年3月14日~28日に、人事担当者に対して「人材育成」についてのアンケート調査を行った。回答を得たのはメーカーの人事80名、非メーカーの人事109名の合計189名だ。教育研修に関する調査はたくさんあるが、今回の調査は人材育成とスタンスを広めに取り、規模別、業種別で調べている。その結果、規模やメーカー、非メーカーでの違いが浮き彫りになった。また現在と将来についても質問しており、人材育成の課題が変化していく様子もうかがえた。
 レポートを2回に分け、初回は人材育成の形態や教育体制について述べる。次回は教育課題などの中身について解説したい。

規模が大きいほど人材育成の専門部署がある

教育研修を実施する専門部署について聞いたところ、メーカー、非メーカーともに「1001名以上」は6割以上が専門部署を持っている。規模が大きいほど人材育成の専門部署があることがまずわかる。
 ただしメーカーは残りの39%が「兼任の部署」なのに対し、非メーカーでは「兼任の部署」は20%であり、「決まった部署はなく、プロジェクトチームを組織」が5%、「各現場で個別対応」10%とバラエティに富んでいる。
 非メーカーを規模別で見ると、規模が小さいほど「専任部署」「兼任部署」が少なくなり、「1~300名」では「専任部署」19%、「兼任部署」39%とあわせても58%。「プロジェクトチーム」11%、「個別対応」20%と決まった部署がない企業が増えていく。
 メーカーは「1001名以上」、「301名~1000名」、「1~300名」のそれぞれが個性的だ。とくに「301名~1000名」では「専門部署」は9%であり、メーカー、非メーカーの中で最も低い。しかし「兼任部署」は73%と最高である。理由として考えられるのは、教育研修には取り組んでいるが、人事部の要員が少なく、兼任になっていることだ。

「人材育成についてのアンケート調査」結果報告【1】

「人材育成についてのアンケート調査」結果報告【1】

1000人を境に教育研修スタッフ数は大きく異なる

「1001名以上」では6割強の企業が教育研修の専門部署を持っているが、何人のスタッフがいるのだろうか。
 全体で見てみると、規模が大きくなるほどスタッフ数が多いことがわかる。「1~300名」では「1人」が25%、「2人」「3人」「4人」は19%であり、「5人」は6%、「6~10人」13%で、11人以上はない。
 「301名~1000名」では、「1人」が急減して7%。「2人」は急増して40%になる。「3人」と「4人」は13%ずつで、「5人」20%、「6~10人」7%。「1~300名」と同じく、11人以上はない。
 ところが「1001名以上」になると様相は一変する。「1人」と「2人」はなく、「3人」17%、「4人」21%、「5人」が13%だ。もっとも多いのは「6~10人」で25%。「11~20人」は13%、「21人以上」も13%ある。1000名を境に教育研修のスタッフ数に大きな違いがあるようだ。

「人材育成についてのアンケート調査」結果報告【1】

メーカー系は選抜社員を、非メーカー系は社員全体を重視する傾向

能力開発の方針は、メーカーと非メーカーで大きな差がある。非メーカーは社員全体の能力を高めようとしているが、メーカーは選抜社員の能力開発を重視している。
 メーカーから数字を確認してみよう。「社員全体」は19%、「どちらかというと社員全体」は39%。あわせると54%と過半数だ。一見すると多いようだが、非メーカーに比べるとかなり少ない。後で比較する。「どちらでもない」は14%、「どちらかというと選抜した社員」が32%だ。
 非メーカーでは、「社員全体」28%だ。「どちらかというと社員全体」は42%であわせると70%になる。メーカー系の54%と比べると、明確に「社員全体」が多いのだ。
 「どちらかというと選抜した社員」は15%で、「選抜した社員」が3%で合計は18%だ。メーカー系の32%の半分弱である。
 メーカー系では生産ラインの現業職と、開発や企画事務職では教育研修体系が異なることが推測される。

「人材育成についてのアンケート調査」結果報告【1】

今後の能力開発の方針では選抜社員を重視

能力開発の方針は今後どの方向に進むと思うかも聞いてみた。現在の能力開発の方針と、今後の能力開発方針の予想の違いが興味深い。メーカー、非メーカーともに「社員全体」が落ち、「選抜社員」が急伸しているのだ。
 数字を見てみよう。メーカーの今後の能力開発で重視するのは「社員全体」が14%、「どちらかというと社員全体」が30%、あわせて44%である。「現在の能力開発」の54%から10ポイントも落ちている。
 そして「どちらかというと選抜社員」は44%、「選抜社員」は9%であり、あわせて53%だ。「現在の能力開発」では「どちらかというと選抜社員」が32%だったから、20ポイント以上伸びている。
 非メーカーでは「社員全体」が30%で、「どちらかというと社員全体」は23%。あわせて53%だ。「現在の能力開発」では70%だったから、20ポイント弱も落ちている。
 「どちらかというと選抜社員」は26%、「選抜社員」が9%で、あわせて35%。「現在の能力開発」では18%だったから、10ポイント近く増えている。
 数字を検証して感じるのは、教育研修が転機を迎えようとしていることだ。もともと日本の教育研修は全員参加型が主流だった。現在もそうだろう。しかし、戦略的な経営が必須になりつつあるいま、人材育成にも戦略性が求められ、人材を選抜して育てるという方向に舵が切られつつあるように思える。
 ただし、選抜に値する人物を採用していなければ、選抜することはできない。回答者のフリーコメントに「長期的な目で見ると、採用の時点で“選抜社員”になりうる人材を選んでいくことになるのではないかと考えます」とあったが、その通りだろう。

「人材育成についてのアンケート調査」結果報告【1】

メーカー、非メーカーともに8割がOJTを支持

人材育成にはOJTとOFF-JTという2つの方法がある。今回のアンケート調査では、圧倒的にOJTが支持されているようだ。ただし、メーカー系と非メーカー系で濃淡の差がある。
 「OJT重視」はメーカーで20%、非メーカー系で37%だ。倍近い開きがある。「どちらかといえばOJT重視」はメーカーで59%、非メーカーでは43%だ。「OJT重視」と「どちらかというとOJT重視」をあわせれば、メーカー系79%、非メーカー系80%とほぼ同一だが、非メーカー系の方がOJTを重視する傾向が強いようだ。
 OFF-JTを重視する比率はメーカー系、非メーカー系ともに10%で差がない。
 OJTが支持される理由だが、「OJTは体に染みつく」「強いプレッシャにさらされないと力はつかないと思う」などが挙げられている。ただ「現場スタッフの負担軽減、指導内容の統一」「現場任せには、限界がある」などOFF-JTを評価する声もある。
 現在は圧倒的にOJTが支持されているが、今後については少し変わってくるようだ。全体でみた場合、「OJT重視」が30%→25%、「どちらかというとOJT重視」が50%→43%に減少している。そして「どちらかというとOFF-JT重視」が11%→17%、「OFF-JT重視」が1%→2%と増加している。
 現在は、各現場が「職場で育てる」という意識がかつてよりも薄くなっていること、さらには現場のマネージャーに課せられている役割が管理職というよりもプレイヤーとしての色彩が強くなり、現場での教育が非常に負担になってきているとの思いからではないかと推察する。

「人材育成についてのアンケート調査」結果報告【1】

「人材育成についてのアンケート調査」結果報告【1】

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