短期的に企業の競争環境が大きく変化する現代において、これらの変化に柔軟に対応し、経営や事業をけん引できる次期経営幹部候補の育成・確保は、企業の持続的成長と競争力強化の鍵となる。HR総研が実施している人事の課題に関する調査でも、「次世代リーダーの育成」は例年トップの項目になるなど、多くの企業において、優先的に取り組むべき事項として認識されている。
HR総研では、選抜型研修や配置を通じての育成等、各企業の次世代リーダー育成への取り組み実態について最新動向を調査した。調査結果をフリーコメントも含めて以下に報告する。

<概要>
●次世代リーダー育成に取り組んでいる企業、大企業では7割、中小企業では3割
●育成のターゲットポジション「部門長」が最多で7割
●社内人材のスキル・能力把握、できている企業はいずれの企業規模でも4割未満
●育成対象者へのサポートの取り組みができている中小企業は1割
●次世代リーダー育成の課題「社内に候補になる人材が乏しい」が最多で5割
●育成対象者をサポートしている企業、4割が「候補者数を期待通り確保」
●次世代リーダー育成に関する自由意見

次世代リーダー育成に取り組んでいる企業、大企業では7割、中小企業では3割

まず、「次世代リーダー育成・確保のための取り組み有無」のついて見てみる。
企業規模別に見てみると、「具体的な取り組みを行っている」について、従業員数1,001名以上の大企業では65%となっており、301~1,000名の中堅企業では56%となっている。一方で300名以下の中小企業では、「具体的な取り組みを行っている」は30%にとどまっており、企業規模が大きいほど、次世代リーダーの育成・確保の取り組みが実施されていることがうかがえる(図表1-1)。

【図表1-1】企業規模別 次世代リーダー育成・確保のための取り組み有無

HR総研:次世代リーダー育成に関するアンケート 結果報告

「具体的な取り組みを行っていない」企業を対象に、「具体的な取り組みを行っていない理由」を聞いたところ、「次世代リーダーの要件定義ができていないため」が最多で38%、次いで「他の優先課題があるから」が30%、「育成方法がわからないから」が14%などとなっている。「すでに確保できており取り組みは不要と考えるから」は6%にとどまっており、多くの企業においては、取り組みの必要性を認識しながらも、社内で議論が進んでいなかったり、目の前の課題の対応に追われ、次世代リーダー確保のための取り組みが劣後したりしているという実情がうかがえる(図表1-2)

【図表1-2】次世代リーダー確保の具体的な取り組みを行っていない理由

HR総研:次世代リーダー育成に関するアンケート 結果報告

育成のターゲットポジション「部門長」が最多で7割

次に、次世代リーダーの育成において、現在どのようなポジションにいる人材を対象とし、どこを目指すべきポジション(ターゲットポジション)として育成しているのかについて見てみる。まず、「次世代リーダー育成のターゲットポジション」については、「部門長」が最多で74%、次いで「執行役員・事業責任者」が50%、「主要支社長・支店長」が21%などとなっている。「副社長・専務・常務」は20%あるものの、「社長・CEO・COO」は13%にとどまる。経営視点をもった最高機能責任者であるCxOをターゲットとする回答はいずれも1割程度にとどまっているが、中堅・中小企業ではCxOを配置する企業がそれほど多くないことも理由だろう。「部門長」、「執行役員・事業責任者」など、まずは部門や事業を任せられる人材が育成ターゲットとなっていることが分かる(図表2-1)。


【図表2-1】次世代リーダー育成のターゲットにしているポジション

HR総研:次世代リーダー育成に関するアンケート 結果報告

「次世代リーダー育成対象者の現在の役職」については、「課長クラス」が最多で78%、次いで「部長クラス」が49%、「係長クラス」が47%などとなっている。部門長や事業責任者をターゲットのポジションとしている企業が多いことから、1~2階層程度下の役職として、課長を育成対象として設定している割合が高くなっていることが分かる。また、一般社員の段階から育成対象者として選抜・育成している企業も28%と3割程度見られた(図表2-2)。

【図表2-2】次世代リーダー育成対象者の現在の役職

HR総研:次世代リーダー育成に関するアンケート 結果報告

次に、「次世代リーダー候補者のスキル・特性として重視すること」については、「リーダーシップ」が最多で72%、次いで「目標達成意欲・行動力」が57%、「組織・人材マネジメント」が56%などとなっている。ターゲットとするポジションにもよると思われるが、「財務・会計に関する知識」(32%)や「デジタルリテラシー」(26%)、「法務知識」(13%)などの具体的な知識・スキルよりも、より総合的な「人を動かす能力」が重視されていることがうかがえる(図表2-3)。

【図表2-3】次世代リーダー候補者のスキル・特性として重視すること

HR総研:次世代リーダー育成に関するアンケート 結果報告

社内人材のスキル・能力把握、できている企業はいずれの企業規模でも4割未満

次世代リーダーの育成・確保にあたっては、「次世代リーダーの人材像の明確化」や「社内人材のスキル・能力の把握」、また「育成計画の策定(研修プログラムや付与する職務経験)」等が重要なステップとなる。ここでは、企業規模別にこれらのステップへの取り組み状況を見てみる。
まず、「経営戦略を実現するうえで必要な次世代リーダーの人材像の明確化ができているか」について企業規模別に見ると、大企業では「できている」(3%)、「ややできている」(40%)を合わせると43%となっており、中堅企業でも「できている」(9%)、「ややできている」(29%)を合わせると38%と4割程度なっている。中小企業では「できている」(3%)、「ややできている」(29%)を合わせると32%となっており、大企業・中堅企業に比べて自社に必要な次世代リーダーの人材像を明確化できていない企業がやや多いことが分かる。(図表3-1)。また、いずれの企業規模においても「できている」と「ややできている」を合わせても5割に達しておらず、このステップに課題を抱えている企業も多いことがうかがえる。

【図表3-1】企業規模別 「次世代リーダーの人材像の明確化」の実施状況

HR総研:次世代リーダー育成に関するアンケート 結果報告

次に、「育成対象者選抜に必要な社内人材のスキル・能力に関する情報を把握できているか」について企業規模別に見ると、大企業では「できている」(3%)、「ややできている」(33%)を合わせると36%となっている。中堅企業では「できている」(9%)、「ややできている」(22%)を合わせると31%、中小企業では「できている」(2%)、「ややできている」(29%)を合わせると31%となっている。(図表3-2)。育成対象者の選抜の前提となる「社内人材のスキル・能力に関する情報」を把握できている企業は、いずれの企業規模でも3割台にとどまっており、人材像の明確化とあわせて、これらのステップから取り組む必要がある企業が多そうだ。

【図表3-2】企業規模別 「社内人材のスキル・能力把握」の実施状況

HR総研:次世代リーダー育成に関するアンケート 結果報告

次に、「育成対象者に対し付与する職務経験や研修プログラムなどの育成計画が策定できているか」について企業規模別に見ると、大企業では「できている」(7%)、「ややできている」(33%)を合わせると40%となっており、中堅企業でも「できている」(9%)、「ややできている」(27%)を合わせると36%と4割近くになっている。一方、中小企業では「できている」(2%)、「ややできている」(12%)を合わせても14%と1割台となっており、大企業・中堅企業に比べて育成計画の策定を行っている企業がかなり少ないことが分かる。(図表3-3)。

【図表3-3】企業規模別 「次世代リーダーの育成計画策定」の実施状況

HR総研:次世代リーダー育成に関するアンケート 結果報告

育成対象者へのサポートの取り組みができている中小企業は1割

次世代リーダー育成の施策の実施段階では、「育成対象者へのサポート」や「育成結果の評価」も重要となる。ここでは、企業規模別にその取り組み状況を見てみる。
まず、「育成対象者をサポートするための施策(メンターをつけてのフォロー・アサインメントが効果的に行われるよう受け入れ先と調整する等)を実施できているか」について企業規模別に見ると、大企業では「できている(3%)、「ややできている」(25%)を合わせると28%となっており、中堅企業では「できている」(4%)、「ややできている」(18%)を合わせると22%となっている。一方、中小企業では「できている」(4%)、「ややできている」(10%)を合わせると14%にとどまっている。企業規模が大きいほど取り組んでいる企業は多いが、大企業であっても3割未満となっており、育成対象者のサポートまで手厚く行えている企業は限られているようだ(図表4-1)。

【図表4-1】企業規模別 育成対象者のサポート施策の実施状況

HR総研:次世代リーダー育成に関するアンケート 結果報告

「次世代リーダー候補者の育成について育成結果の評価を行っているか」については、企業規模別に見ると、大企業では「できている」(3%)、「ややできている」(33%)を合わせると36%となっており、中堅企業では「できている」(7%)、「ややできている」(27%)を合わせると34%となっている。これに対して中小企業では、「できている」(2%)、「ややできている」(14%)を合わせると16%と、大企業・中堅企業の半分以下となっている。育成結果の評価はその後の施策や育成計画の見直しに必要なステップであるが、実施している企業は4割未満にとどまっており、特に中小企業では2割未満となっている。(図表4-2)。

【図表4-2】企業規模別 育成結果の評価の実施状況

HR総研:次世代リーダー育成に関するアンケート 結果報告

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HRプロとは

【調査概要】

アンケート名称:【HR総研】「次世代リーダーの育成」に関するアンケート
調査主体:HR総研(ProFuture株式会社)
調査期間:2022年8月15~8月23日
調査方法:WEBアンケート
調査対象:企業の人事責任者・担当者
有効回答:199件

※HR総研では、人事の皆様の業務改善や経営に貢献する調査を実施しております。本レポート内容は、会員の皆様の活動に役立てるために引用、参照いただけます。その場合、下記要項にてお願いいたします。
1)出典の明記:「ProFuture株式会社/HR総研」
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  ・目的
Eメール:souken@hrpro.co.jp

※HR総研では、当調査に関わる集計データのご提供(有償)を行っております。
詳細につきましては、上記メールアドレスまでお問合せください。

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