前回の調査は、2月13日~2月18日にかけて行われたが、その後の政府からの「不要不急の外出自粛」「大型イベント開催の見直し」「小中高の臨時休校」等の要請を受け、リクナビ、マイナビ等の就職ナビ会社が主催する就職イベントの相次ぐ中止や、企業による出張抑制、外部の会合への出席自粛、大規模なテレワーク実施など、2週間程度で世の中の動向が一変していることから、HR総研では再調査を実施することとした。本レポートでは、企業活動に関する最新動向についてフリーコメントを含めて以下に紹介する。
<概要>
●中国拠点がある企業の9割超で「企業活動に影響あり」、海外拠点がない企業でも7割超
●8割の企業で「すでに影響が出ている」、海外拠点の有無による差異はほとんど見られず
●受けた影響は「国内での売上減少」「イベント等の開催延期・中止」が最多、政府からの緊急要請が背景に
●8割以上の企業が対策を講じる、初回調査時より23ポイント増
●「社内イベントの開催延期・中止」「スライド出社・フレックス実施の推奨」が7割
●対策の継続は「3月まで」を見込む企業が4割、収束の見通し付かず希望的観測か
海外拠点の保有状況
前回と同様に、まず自社における海外拠点の有無について聞いてみた。
再調査では、「中国に拠点がある」が27%、「中国以外の海外に拠点がある」が29%、「海外拠点はない」が58%であり、初回調査(調査期間:2/13~2/18)とほぼ同様の構成となっている。(図表1-1)。
また海外拠点の有無別に企業規模内訳を見ると、中国拠点がある企業では大企業(従業員数1,001名以上)が6割を占め、海外拠点がない企業では7割を中小企業(同300名以下)が占めているという構成になっている。(図表1-2)。
これらの回答企業における企業拠点の構成を踏まえ、以降の調査結果を紹介する。
【図表1-1】海外拠点の有無
【図表1-2】海外拠点の有無別 企業規模内訳(再調査)
中国拠点がある企業の9割超で「企業活動に影響あり」、海外拠点がない企業でも7割超
再調査における「新型コロナウィルス感染拡大による企業活動への影響」については、「影響がある」が55%、「まあまあ影響がある」が25%となっており、「多少なりとも影響がある」(「影響がある」と「まあまあ影響がある」の合計、以下同様)が80%を占めている。初回調査(56%)と比較すると24ポイントも増加しており、初回調査時から再調査時までの2週間程度のうちに、企業の動向が大きく変化していることが分かる(図表2-1)。
再調査結果について企業規模別に見ると、大企業では「多少なりとも影響がある」は94%、中堅企業(従業員数301~1,000名)では86%、中小企業では71%となっており、初回調査と比べると、いずれの企業規模においても、影響があると認識する割合が大きく増加している(図表2-2)。その中でも、企業規模に比例して「多少なりとも影響がある」と認識する割合が高く、大企業においては9割以上で影響があるとなっている。
海外拠点の有無別に見てみると、「中国に拠点がある企業」における「多少なりとも影響がある」の割合は96%で、ほぼ全ての企業が自社の企業活動への影響を懸念していることが分かる。海外拠点の有無に関わらず、「多少なりとも影響がある」の割合が初回調査時より増加しており、特に「海外拠点がない」企業において初回調査時(47%)より25ポイント増加して72%となっている。
これらの変化は、新型コロナウィルス感染拡大の影響は、中国と関連のある企業に限らず、国内での企業活動に直結する大きな影響を与える段階に入ったことを示唆している(図表2-3)。
【図表2-1】新型コロナウィルス感染拡大による企業活動への影響
【図表2-2】企業規模別 新型コロナウィルス感染拡大による企業活動への影響(再調査)
【図表2-3】海外拠点の有無別 新型コロナウィルス感染拡大による企業活動への影響(再調査)
8割の企業で「すでに影響が出ている」、海外拠点の有無による差異はほとんど見られず
「多少なりとも影響がある」とする企業の「影響度の進捗」について、再調査では「既に大きな影響が出ている」が20%、「影響が出始めている」が63%で、これらを合計した「影響が出ている」が83%と8割を超えており、初回調査(65%)より18ポイント増加している(図表3-1)。前述のとおり、「多少なりとも影響がある」と懸念する企業が急増している中、それら企業のうち、すでに8割の企業で不安が現実のものとなっている。
企業規模別で見てみると、大企業と中小企業では「影響が出ている」とする企業は9割であり、中堅企業では7割となっており、企業規模によって影響度の進捗が異なっているようである。
海外拠点の有無別に見ると、再調査においては、中国拠点がある企業では「影響が出ている」が92%であり、海外拠点がない企業では84%となっており、海外拠点の有無による大きな差異は見られない。一方、初回調査では、中国拠点がある企業と海外拠点がない企業では26ポイントもの差を付けて、中国拠点がある企業で「影響が出ている」とする割合(81%)が高かった。したがって、すでに日本国内での企業活動に大きな支障をきたし始めているとともに、初回調査時から再調査時までの2週間程度のうちに受ける影響の内容にも変化が出ているはずである(図表3-2,3)。
では、どのような影響を受ける企業が多くなっているのだろうか。
【図表3-1】「多少なりとも影響がある企業」における影響度の進捗
【図表3-2】企業規模別 「多少なりとも影響がある企業」における影響度の進捗
【図表3-3】海外拠点の有無別 「多少なりとも影響がある企業」における影響度の進捗
受けた影響は「国内での売上減少」「イベント等の開催延期・中止」が最多、政府からの緊急要請が背景に
「多少なりとも影響がある」とする企業について「影響の種類」をみると、初回調査では「海外出張を伴う業務の遅延・停止」(40%)、「物流の遅延・停止」「製品製造・サービス提供の遅延・停止」(ともに37%)などとなっており、海外との人や物資の往来に関する業務への影響を懸念していた。しかし、再調査では、「国内での売上減少」「イベント等の開催延期・中止」がともに54%で最多となっており、特に「イベント等の開催延期・中止」は36ポイントも増加しており、国内での企業活動に関する影響が上位2つを占めている。
このような激変の背景には、再調査直前に出されたイベント延期・中止や不要不急の外出自粛に関する政府からの緊急要請があると推測される。これを受けてイベント事業を持つ企業は緊急的にイベントを中止・延期の判断を迫られ、会合参加を自粛する企業や外出を自粛する消費者が増加する等、国内の企業活動と消費活動が急速に縮小していることが読み取れる(図表4-1)。
企業規模別に見ると、大企業と中堅企業では「イベント等の開催延期・中止」がそれぞれ54%、73%と最多であり、中小企業では「国内での売上減少」が58%で最多となっている。中小企業では「国内での売上減少」により、すでに経営破綻に追い込まれる企業まで出てきており、この状況が継続すると、全体の9割以上を中小企業が占める日本企業への影響は、より深刻な事態となることは必至である(図表4-2)。
海外拠点の有無別に見ると、中国拠点のある企業では「イベント等の開催延期・中止」「海外出張を伴う業務の遅延・停止」(58%)がともに最多であり、次いで「物流の遅延」(54%)、「国内での売上減少」(52%)と続いている。初回調査時は、中国を含む海外拠点を持つ企業では「海外での売上減少」が「国内での売上減少」より割合が高かったが、再調査では逆転し、海外拠点を持つ企業でも海外市場より国内市場の影響に懸念を持つ企業が増加していることがうかがえる(図表4-3)。
このような先の見えない深刻な状況が続く中、企業はどのような対策を行っているのだろうか。
【図表4-1】「多少なりとも影響がある企業」における影響があると思う業務の種類
【図表4-2】企業規模別 「多少なりとも影響がある企業」における影響の種類
【図表4-3】海外拠点有無別 「多少なりとも影響がある企業」における影響の種類
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【調査概要】
アンケート名称:「新型コロナウィルス感染拡大による企業活動・採用活動への影響」に関する再調査
調査主体:HR総研(ProFuture株式会社)
調査期間:2020年2月28日~3月4日
調査方法:WEBアンケート
調査対象:企業の人事責任者、採用担当者、人事全般担当者
有効回答:182件
※HR総研では、人事の皆様の業務改善や経営に貢献する調査を実施しております。本レポート内容は、会員の皆様の活動に役立てるために引用、参照をいただけます。その場合、下記要項にてお願いいたします。
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※HR総研では、当調査に関わる集計データのご提供(有償)を行っております。
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