慢性的な残業、長時間労働がなかなか改善されないことは、多くの日本の企業に見られる問題の一つ。24時を過ぎるまで深夜残業し、翌日は始業時間の8時30分に出社するといった激務が連日続けば、心身ともに疲弊し、最悪の場合、過労死を招いてしまいかねません。
そうした状況の改善策として、近年、関心が集まっているのが「インターバル制度」。勤務間インターバル制度とも呼ばれるもので、従業員が退社してから翌日に出社するまで一定の時間を空けなければならないと義務付ける制度です。
すでに欧州連合(EU)では1993年に法律を制定し、この制度を導入。EU加盟国の企業に対して、退社から翌日の出社まで最低11時間の休息時間=インターバルを設けることを義務付け、労働者の健康を確保しています。日本の企業でも同様の制度を実施すると、残業で夜23時に退社した人は、翌日は朝10時に出社すればよいということになります。
長時間労働の是正は、ワーク・ライフ・バランスの改善や、女性や高齢者が仕事に就きやすい環境づくりにつながるとあって、安倍内閣が推進する「働き方改革」のテーマの一つとしても重視されています。日本では、インターバル制度を導入している企業はまだごく少数の企業に限られていますが、政府では、今後、導入企業が増えていくよう積極的に後押しする方針です。
厚生労働省では2017年度から、制度を導入した中小企業に対し、取り組みの実施に要した経費の一部を成果目標の達成状況に応じて支給する職場意識改善助成金(勤務間インターバル制度導入コース)を創設させています。
最近、インターバル制度を導入する企業の動きは活発化。以前から導入している三菱重工業、KDDIなどのほか、JTBグループ、三井住友信託銀行、ユニ・チャーム、いなげや、情報処理サービスのAGS、CATVのジャパンケーブルキャストなどもインターバル制度を導入する取り組みを始めています。義務付ける休息時間は「最低8時間」、「最低9時間」、「9~11時間程度」など企業によって異なりますが、「最低12時間」とするホンダのようにEUの11時間を上回るインターバルを設定する企業もあります。働き方改革や健康経営への取り組みが求められている中、導入を検討する企業は今後増えていきそうです。