「稟議制度」とは、上位者の決定が必要な重要な事項や、自己の権限を越える事項を、稟議書を作成して、回覧や持ち回りなどをして関係者の決裁をもらう制度でいわゆるボトムアップ型の意思決定方式です。
この制度の特徴は、会議を行うことなく、関係者の決裁を文書のみで効率よくもらうことができるとともに、関係部署への周知が徹底できるところです。しかし、何人もの承認が必要で、時間を要する事や、責任の所在が曖昧になるなど、官僚組織的な弊害を生むことがデメリットとしてあげられます。
そもそもこの稟議制度は、日本独特の決裁システムで、組織に置ける上下関係を大切にする日本企業においては、重要な意思決定プロセスであるため、多くの企業に用いられてきた。また、この稟議制度によって、自分の権限外の事項についても、決裁が得られれば、影響を与える事ができます。最近では、日本企業の長所として、欧米企業からも見直され、また、ネット環境の発達により、稟議申請のシステムを使ったり、改善を行い、よりスムーズな決裁制度を導入する企業が増えています。
この稟議制度は、起案、回議、決裁・承認、実施、記録から構成されます。下位者が稟議書を起案し、回議していきますが、このとき、普段なら顔を合わせる事がない下位者と上位者が稟議書を通して顔を合わせたコミュニケーションをとることができます。上位者は、普段の行動を知らない下位者が何を考えているのかを知るいい機会となります。このように、ネット環境が発達する前は、遠回りでも一つ一つをじっくり考え、コミュニケーションを交えながら作り上げていく、日本のものづくりの基本が伺える制度でした。
しかし、近年、日本企業もグローバル化の波にのり、劇的な環境変化の中であっては、この昔ながらの稟議制度は、時代にそぐわないものとなっていました。しかし、欧米企業などによって注目され、現代版稟議制度として、見直されています。たとえば、決裁に期限を設け、時間内にアクションがなければ自動的にその上の決裁者に決裁権が移動するシステムや、否決をする場合には理由を明記するなど、課題とされてきた時間の短縮や、責任回避の問題をクリアするシステムが構築されています。