ノーレイティングとは、評価をしないという意味で、近年、アメリカ企業を中心に広がり始めた、新しい人事制度を指す言葉です。
ただし、まったく評価をしないとうことではありません。社員のランク付けをやめ、年度単位での評価をやめるというものです。
日本企業と同様にアメリカ企業の多くで取り入れられているのが、目標管理制度と評価制度を連動させる方法です。つまり、年度の最初に上司との話し合いで目標を決め、途中で進捗をチェック、そして年度の最後に再び上司との話し合いで目標の達成度を確認し、上司がランク付け(レーティング)とフィードバックを行い、それを処遇や昇進に反映させるという方法です。
アメリカでノーレイティングが広まり始めた背景には、こうした従来の方法が期待したほど組織のパフォーマンス向上に寄与しなくなってきたことがあげられます。
その理由の1つは、従業員に与える心理的な影響です。失敗してランクが下がることを恐れて、思い切ったことができなくなるわけです。
近年、人件費に対する企業の目はシビアさを増していますから、無理をするより無難に過ごした方がいいと思う従業員が増えても不思議ではありません。他には、ますます動きが早くなる現代のビジネス社会で、年に1回の目標設定では、現実との間に乖離が生じるという理由もあげられます。
では、ノーレイティングでどのように処遇を決めるのでしょうか。先に触れたようにまったく評価をしないということではありません。上司はこれまで以上に部下に対してフィードバックをし、対話を重ね、その都度、現実に沿った目標を与えます。それを続けることで自然と評価ができるというわけです。また、フィードバックや対話が増えることで、部下の側も評価に対する納得性が高まっていくことが考えられます。
しかし、この新しい人事制度、今後日本でも広まっていくのかは未知数です。そういった意味においても注目すべき人事用語といえるでしょう。