「裁量労働制」とは、業務の進め方が労働者自身の裁量に大幅に委ねられて、かつ上長による指示命令が困難な特定の業務について、労働時間を実労働時間ではなく一定の時間働いたとみなして、賃金の計算などを行う制度です。1987年の労働基準法改正により導入されました。
労働基準法では、実際に働いた時間により賃金などの計算をするのが大原則とされています。したがって、裁量労働制が認められる業務は限られます。
裁量労働制には2つの種類があり、対象となる業務が違います。
1つは「専門業務型裁量労働制」と呼ばれるもので、一定の専門的業務が対象となります。具体的には、省令で定める業務として、新商品・新技術の研究開発の業務、情報システムの分析・設計の業務、取材・編集の業務、デザイナーの業務、プロデューサー・ディレクターの業務、厚生労働大臣の指定する業務として、コピーライターの業務、システムコンサルタントの業務、インテリアコーディネーターの業務、ゲーム用ソフトウェアの創作の業務、証券アナリストの業務、金融工学などの知識を用いて行う金融商品の開発の業務、大学での教授・研究の業務、公認会計士の業務、弁護士の業務、建築士の業務、不動産鑑定士の業務、弁理士の業務、税理士の業務、中小企業診断士の業務があげられています。
この制度を導入するには、事業場の過半数の労働者で組織する労働組合があれば、その組合、なければ、労働者の過半数を代表する者と労使協定を締結し、労働基準監督署に届け出る必要があります。
もう1つは1998年の法改正で加えられた「企画業務型裁量労働制」と呼ばれるものです。こちらは企業の中枢部門で従業員が自律的に行っている企画立案などの業務が対象となります。対象となるかどうかは個々の労働者ごとに判断され、「企画課」などの部門の全業務が対象になるわけではありません。
この制度を導入するためには労使委員会における5分の4以上の多数決による決議が必要となります。なお、決議は労働基準監督署へ届け出なくてはなりません。またその後も、6ヵ月以内ごとに、対象労働者の労働時間の状況、健康、福祉措置の実施状況を労働基準監督署に報告する義務も発生します。