胃・大腸・肺
胃がん検診胃がんは、かつて日本人に一番多かったがんです。現在のガイドラインとしては、50歳以上にバリウム検診、または内視鏡による検診が勧められており、検診頻度は2年に1回程度が推奨されています。
個人的には、内視鏡のほうが、バリウムよりも病変を見つける能力が高いのでおすすめです。バリウムによる検査は、放射線被ばくの問題も大きいですし、1回のバリウム検診で胸部X線写真の数十倍の被ばくをします。ですから私の身の回りの医師で、自分の検査をバリウムでやる医師はほとんどいません、みな内視鏡です。
また、ピロリ菌が胃がんの主な原因ですから、ピロリ菌の有無の検査も役立つでしょう。もしピロリ菌がいる場合は、除菌療法を行ったほうが、将来の胃がんを減らせる可能性が高いと考えている医者が多いようです。とは言え、たとえ除菌をしても、胃がんのリスクは通常の人よりも高いので、1年おきに検診を受けるなど、受診間隔を短くするのもよいでしょう。
大腸がん検診
大腸がんについては、40歳以上の方には、年1回程度、便潜血検査を行うことを強くお勧めします。検査自体は無害ですので、ぜひやっておくべきです。
そこで便潜血陽性と出た場合、下部内視鏡検査(大腸カメラ)を行うことになります。内視鏡検査で、ポリープと呼ばれる病変が、ある場合とない場合では、次回の検査をいつするべきか変わってくるのですが、このあたりは医師により考え方が異なります。
個人的意見を申し上げると、50歳前後で、便潜血検査の結果に関わらず、一度内視鏡を行ってみてもいいと思います。
肺がん検診
肺がんは、現在日本人に最も多いがんです。40歳以上に対しては、胸部X線検査を、また喫煙者などに対してはそれに加えて痰の検査を行い、がん細胞の有無を調べることが推奨されています。
なお、会社で行っている年に1回の健康診断の胸部X線写真は、主に結核がないかを発見するためのものですので、それだけでがんを見つけるのは難しいのが現実です。
ですから個人的意見としては、低線量CT(通常のCTよりも被ばく量を少なくしたCT)や、ペット検査を行うのがよいと考えます。
肝臓・女性特有のがん・腫瘍マーカー(特に前立腺がん)
肝臓がん検診肝臓がんを見つけようと思えば、腹部の超音波が最も有効です。ただし、必ずしもそれが全員に有効かどうかについては、否定的な意見もあるようです。
子宮頸がん検診
20歳以上の女性に強く勧められます。頻度としては2年に1回です。この検査は、他の検査よりも若い年齢から行うことと、心理的抵抗が強いことから、受検する人が少ないことが大きな問題となっています。他のがんと違い、20代、30代で発症することも多いがんですので、ぜひ検診を受けましょう。
乳がん検診
乳がんが発症するのは圧倒的に女性です。したがって、女性のみが検査の対象となります。そこでは主に、マンモグラフィと呼ばれるX線検査を行います。
専門家でも意見は分かれるところなのですが、個人的には、このマンモグラフィに加えて、もしくはその代わりに、超音波検査をしたほうがいいと思います。何歳から行うかに関しても難しいのですが、確実に勧められるのは40歳からです。できれば、20歳から行うのがよいでしょう。
腫瘍マーカー検査
がん発生に伴い血液中に増加する生体物質のことを腫瘍マーカーといいますが、その数値を調べる血液検査を行っているところもあります。CEA、CA19-9などの値を測定するのですが、この検査は、がん発見にはさほど有効ではないと考えます。
例外として、前立腺がんの腫瘍マーカーとして使われるPSAがあります。これが高い数値を示している場合、肛門からの針生検を行い、そこでがんとの確定診断が出れば治療、あるいは慎重な経過観察を行うことになります。(前立腺がんは非常にゆっくり進むがんであるため、経過観察で天寿を全うできる場合も多いのです)。
これを全員に検診として行うべきかどうかはまた、医師によって意見が分かれるところです。がんセンターなどでは勧めていませんが、個人的には、これを検診に入れるのはアリだろうと思います。
――会社での健康診断の場合、会社や健康保険組合から補助が出るところが多いでしょう。また、健診業者を利用している会社も多いと思います。しかしそうした業者がオプションで勧めてくる検査の中には、有効性に疑問のあるものも含まれていることがありますので、費用対効果について産業医などとしっかり相談をした上で、健診の内容を決めるとよいでしょう。