約3割の企業がインボイス制度の“対応の遅れ”を実感
2023年10月より「インボイス制度(適格請求書等保存方式)」が開始され、課税事業者への業務負担増や、フリーランスなどの免税事業者に係る課題が浮き彫りになっている。インボイスへの対応においては企業の混乱も想定されるが、企業はインボイス制度に速やかに対応できているのだろうか。はじめに同社は、「調査時点におけるインボイス制度の対応状況」を尋ねた。すると、「順調にできている」が65.1%と、企業のおよそ3社に2社は順調なスタートを切ったことがわかった。
一方で、「対応がやや遅れている」は28.5%、「対応が大幅に遅れている」は3.1%と、約3割の企業で対応の遅れが生じていることも明らかとなった。
自由回答では、「社員や取引先へ早めに対処していたので何とかスタートできた」(機械製造)とする声があった一方、「インボイスの申請はしたけれども、番号の連絡などがない」(鉄鋼・非鉄・工業製品卸売)、「振込手数料など、取り扱いについて手探り状態のものが多い」(運輸・倉庫)といった対応の遅れを懸念する声もあがったという。
“対応の遅れ”は大企業よりも中小企業で多く見られる
続いて同社は、前設問の回答を企業規模別に比較した。その結果、「順調に対応できている」とした企業の割合は、「大企業」が71.5%に対し、「中小企業」が64.2%だった。また、「対応がやや遅れている」とした企業は「大企業」が24.4%、「中小企業」が29.1%となった。大企業と中小企業では、対応のスピードに差があるようだ。自由回答では、「システム変更にお金をかけられない」(建材・家具、釜業・土石製品卸売)、「仕入全額控除に対するルールが細かい。免税事業者対応の税区分など処理内容が増え、少ない人員で対処するには限界がある」(飲食料品・飼料製造)などの声も聞かれたという。
制度導入による「懸念事項あり」とした企業は9割にのぼる
続いて同社は、「現在(調査時点)、および今後のインボイス制度導入にともなう懸念事項の有無」を尋ねたところ、「懸念事項あり」とした企業は91%と、9割を超えた。他方で、「懸念事項なし」は6%、「分からない」は2.9%だった。自由回答には、「社内周知力を高めてきたが、費用の都合上、システムで対応できない部分もあり運用面での不安が残る。その上、大手の販売先でも対応がギリギリまでわからない先もあったため、今後トラブルが起きないかなど、とにかく不安が多い」(機会・器具卸売)、「準備は進めてきたが、後々不備が発覚するかもしれないと不安」(機械製造)などのコメントが寄せられた。準備を進めた上でスタートを切ったとしても、今後の状況に不安を抱える企業は多いことが示された。
懸念事項は「業務負担の増加」が最多。新たな課題が生まれる可能性も
最後に同社が「インボイス制度導入にともなう懸念事項」について「具体的な内容」を尋ねると、「業務負担の増加(他業務への影響含む)」(71.5%)が7割を超え、最も多かった。以下、「社内での理解・連携不足」(51%)、「仕入先への対応」(50.1%)がそれぞれ約5割で続いた。自由回答では、「作業時間が大幅に増加し、残業が増えてスタッフが疲弊している」(飲食料品小売)、「仕入先などのインボイスの確認、免税事業者への対応でこれからが不安。業務量は増加する」(金融)など、事務負担の増大に戸惑う声があがったという。
また、インボイス制度導入に対する自由回答を聞いたところ、「インボイスの発行形式や対応が各企業で異なり、確認や保存の方法で業務負担が増す。社員のインボイス制度の理解度がまだ低い」(化学品卸売)、「とりあえず請求書に番号を記載しているだけで、その他に何をすればよいのかわからない」(専門サービス)などの声があがったとのことだ。