アン・コンサルティング株式会社は2022年9月29日、「インボイス制度」に関する調査結果を発表した。調査期間は2022年8月31日~9月1日で、フリーランスに仕事を依頼する企業の経理担当者150名、および企業から仕事を受けているフリーランス150名の、計300名から回答を得た。調査結果では、「インボイス制度」に関する回答者全体での認知度や各企業の制度開始に向けた準備状況などが明らかとなった。
2023年10月の「インボイス制度」開始まであと1年。企業経理・フリーランス共に「業務量の増加」や「制度理解」に不安を示す声

インボイス制度を「内容まで理解している」と答えたのは5割未満

2023年10月1日から、複数税率に対応した消費税の仕入税額控除の方式として「インボイス制度(適格請求書等保存方式)」が開始される。本制度は、インボイスにより売手と買手の税率と税額の認識を一致させることを目的としたもので、今後、企業が仕入れや経費などで請求を受ける際に、制度への対応が必要となる場合がある。

今回、アン・コンサルティングが「インボイス制度を知っているか」をフリーランスおよび企業担当者双方に尋ねところ、「内容まで理解している」が48.7%、「聞いたことはあるが説明できない」が39%、「知らない」が12.3%となった。
2023年10月の「インボイス制度」開始まであと1年。企業経理・フリーランス共に「業務量の増加」や「制度理解」に不安を示す声

約8割は「適格請求書が仕入税額控除に必要」であると理解

次に同社は、「インボイス制度を知っている」とした回答者に対して、「インボイス制度の準備をしなければ、取引先に適格請求書の発行してもらうことができず、仕入税額控除を受けられないことを知っているか」と尋ねた。すると「知っている」が77.2%、「知らない」は22.8%となった。
2023年10月の「インボイス制度」開始まであと1年。企業経理・フリーランス共に「業務量の増加」や「制度理解」に不安を示す声

過半数が「インボイス制度」の準備を進める一方、「制度の理解が進んでいない」との声も

続いて、「インボイス制度導入に向けた準備状況」を企業の経理担当者に尋ねると、「準備が終わった」が8.7%、「今準備をしている」が27.3%、「これから準備予定」が24.7%となった。何らかの準備を進めている企業は計60.7%と、過半数を占めた。

一方で、インボイス制度の準備を進めていない企業からは、その理由として「会社の方針が決まっていないから」、「対象となるかどうか分からないから」などの声が寄せられた。
2023年10月の「インボイス制度」開始まであと1年。企業経理・フリーランス共に「業務量の増加」や「制度理解」に不安を示す声

準備を進める企業の7割は「インボイス発行事業者登録」と「社内システム改修」に着手

また同社は、「インボイス制度導入に向けた準備の状況」を企業に尋ねた。すると「適格請求書(インボイス)発行事業者の登録確認」と「経理・受注システムなどのシステム改修」がともに71.2%となった。適格請求書の交付に必要なインボイス発行事業者への登録と社内システム整備を並行して準備を進めているようだ。また、以降は「受領するインボイス様式の確認」が55.2%、「インボイス受領方法の確認」が51.2%、「インボイス制度に関する社内研修の実施」が31.2%と続いた。
2023年10月の「インボイス制度」開始まであと1年。企業経理・フリーランス共に「業務量の増加」や「制度理解」に不安を示す声
最後に、「インボイス制度について困っていること・不安なこと」を尋ねると、企業側、フリーランス側からそれぞれ下記のような回答が得られた。

【企業経理担当者】
・消費税をはじめ、税務問題で損失をしないか不安
・関連部署への教育と浸透が必要
・外注先に同意してもらえるかが不安
・業務が煩雑になり、業務量が増えて大変になりそう

【フリーランス】
・消費税の課税によって所得が減少し、事務作業にかかる負担増に不安がある
・「インボイス制度がフリーランスにとって不利になる」という話は見聞きしたが、具体的にどう影響するのかわからない

インボイス制度の開始が1年後に迫っている中、企業の経理やフリーランス事業者それぞれの認知度や準備状況は十分とは言えないようだ。事務処理などの業務量が増え、税負担に懸念があるなどの声から、制度導入に戸惑う企業があることもうかがえた。国税庁から公表されている『インボイス制度への事前準備の基本項目チェックシート(※)』などを参考にして、まずは自社の状況を整理してはどうだろうか。


この記事にリアクションをお願いします!