さまざまなエネルギーや活用技術の選択肢を広げ、カーボンニュートラルの実現を目指す
産総研は、太陽光発電といった再生可能エネルギーや、水素の製造・利活用を含め、カーボンニュートラル実現に向けた最先端研究を実施している。一方、トヨタと豊田中研は、カーボンニュートラルを実現する先進技術の早期社会実装に向けて、「産官学連携が重要である」との認識から、産総研との連携を模索してきた。「作る」、「運ぶ」、「使う」、「リサイクルする」という循環型社会において、製品のライフサイクル全体で発生する温室効果ガスの排出量を実質ゼロにすることを指す「カーボンニュートラル」。その実現のためには、「どのようなエネルギーを」、「誰が」、「どこで」、「どのくらい」、「どのように」使うかが重要だ。また、エネルギー事情は国や地域によっても異なるため、温室効果ガスの排出量をゼロにする選択肢はさまざまであるという。
そこで今回、産総研・トヨタ・豊田中研の3社は、「カーボンニュートラルの実現に貢献する」という強い決意のもと、温室効果ガス排出量を削減する上で、非常に重要な役割を担う「エネルギー」に注目。「地球にやさしく、いつまでも安心して使えるエネルギー」を社会全体で共有することを目指し、各々の暮らしや企業活動に応じた、さまざまなエネルギーや活用技術の選択肢を広げるための研究に取り組んでいくという。
3社が今後取り組みを検討している共同研究の内容は、以下の4項目だ。
(1)カーボンニュートラル実現に向けた、エネルギーシナリオの構築
産総研が開発したエネルギーモデルを利用し、将来のエネルギー関連技術の動向や、エネルギー環境政策など、社会情勢の変化がエネルギーの活用システムに与える影響を分析する。また、「クリーンエネルギーの消費見込み」、「新技術の導入」、「環境への負荷」、「コスト」など、カーボンニュートラルを実現するためのエネルギーシナリオを構築していく。
(2)カーボンニュートラルと経済合理性を両立する、エネルギーネットワークの構築
再生可能エネルギーの活用により、カーボンニュートラルかつ最小限のコストでの、街の最適なエネルギー構成の実現と、自動車開発で培った電動化技術を通じた、良品廉価なエネルギーインフラを提案する。
(3)車載用高効率太陽光発電システムの開発
「太陽光発電システム」を搭載した電動車両の普及により、太陽電池や太陽光発電システムの変換効率向上および低コスト化を追求する。
(4)水素を「作る」、「運ぶ」、「使う」ための技術開発
水素社会の実現に向けて、「水素生成技術」や「安全かつ低コストでの運搬技術」、「水素をエネルギーとして活用する技術」における、さまざまな課題を解決するための要素技術の開発を行う。