日本でも世界でも「今後ディスラプションは一定以上起こる」と予想
新型コロナウイルス感染症拡大により、企業経営をとりまく不確実性がグローバル規模でさらに増大している。そのような状況においては、「危機的状況からの回復」やアフターコロナでの「ベターノーマル」の道を切り拓く「レジリエンス」を備えた組織の特性を分析し社会に応用することが、困難を乗り越える手段として重要といえるだろう。はじめに、新型コロナのように社会に甚大な影響を与える「ディスラプション(混乱、崩壊)」について、「コロナショックと同規模のディスラプションの発生予想」を尋ねた。すると、日本では「時折」が54%、「定期的かつ継続的に」が17%で、計71%が「起こる」と回答。世界の経営者も「時折」と「定期的かつ継続的に」が合わせて63%にのぼり、日本および世界の経営者は、「コロナショックに匹敵する規模のディスラプションが、一定以上の頻度で発生する」と予想している。
日本企業の課題は「短期的・長期的な優先事項のバランス」か
デロイトでは、「レジリエンスのある組織は、順応性や協働といった性質とあわせて、長期的かつ革新的なマインドセットや文化を有している」と特徴づけ、その上で「不慮の事態に備えつつ変革を行えるよう、長期と短期の異なる視点で経営を可能にする必要がある」としている。しかし、「短期的な優先事項と長期的な優先事項のバランスがとれているか」と尋ねると、日本では「うまく/非常にうまくとれている」との回答は44%という結果に。世界の54%と比べて10%低かった。
新型コロナを受け、「医療と病気の予防」は世界的に関心が高まる
最後に、「今後10年間で企業が取り組むべき最も重要な社会課題」を尋ねた。その結果、昨今の新型コロナウイルス感染症拡大を受け、「医療と病気の予防」が日本/世界ともに上位となった。一方、日本と世界の経営者を比較すると、「気候変動と環境の持続可能性」と「既存制度や規範に基づく偏見と不平等」の項目について、日本の経営者の関心が世界に比べて低いことが判明した。
「気候変動と環境の持続可能性」については、世界では47%と約半数の経営者が重視しているのに対し、日本では39%にとどまっている。ただし、日本政府が「2050年までに二酸化炭素ネット排出量をゼロにする(カーボンニュートラル)」という政策目標を表明したのは本調実施後のため、現在は日本の経営者の関心も高まりつつあることが予測される。
また、「既存制度や規範に基づく偏見と不平等」において、海外では女性権利運動(Me Tooなど)や人種差別撤廃運動(Black Lives Matterなど)といった社会運動が展開されているため、世界の経営者は「企業としても取り組むべき重要課題」だと捉えているようだ。今後こういった世界潮流が日本社会へ波及し、日本の経営者の関心事となるかが注目されるだろう。