約半数が、コロナ危機で「中長期戦略」の再定義が必要と回答
上場企業の財務責任者は、新型コロナウイルスが企業に及ぼした影響と、今後の見通しをどのように捉えているのだろうか。はじめに、「コロナ禍において、企業の社会的責任と経済的成果を両立させた上で、企業価値を高めるために再定義(見直し)が必要と考えるものは何か」を訊いた。すると、「中長期戦略」が46%と最も多く、次に「リスクと機会の認識」が42%、「中期経営計画」が41%と続いた。その一方で、経営資源配分の判断基準「マテリアリティ(重要課題)」は21%、企業が社会全体に与える価値の表明「パーパス(存在意義)」は14%にとどまった。
この結果について、KPMG社は「中長期戦略の再定義には、CEOや取締役会を中心に企業の『存在意義(パーパス)』を見直し、『マテリアリティ』に基づいた財務インパクトの要因を分析し進める重要性がある」と指摘している。
気候変動による財務的影響、「TCFD」への企業の対応実態
コロナ禍を受け、市場では「気候変動リスク」にも注目が集まっている。そこで、「気候変動リスクへの対応について」について尋ねると、売上高5,000億円以上の企業では半数以上の53%が「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)対応」の取り組みを進めていることが明らかになった。一方で、全体の38%は「(対応していることは)特になし」と回答している。しかし、企業が市場からの評価を獲得するには、気候変動リスクに対するレジリエンスを高めていくことがますます求められているだろう。ESGを踏まえた企業価値向上には「従業員の意識づけ」と「デジタル化」が必要との声
続いて、ESGの取り組みに関して「企業価値を高めるために、自社で実行に移すにあたって課題となるもの」を尋ねた。すると、「従業員の意識づけ」が56%となり、半数以上が回答している。続けて、「デジタル化の推進」に46%、「社会的責任と経済的成果の調和」に39%の回答が集まった。売上高3兆円以上の企業を見ると、「社会的責任と経済的成果の調和」が52%(全体平均39%)、「幅広いステークホルダーとの対話」が48%(全体平均25%)と、全体平均に比べて高い割合を示した。売上高が大きい企業のCFOは、社会的責任を常に意識していると考えられる。