前年度と比較して12%減少、全世界で見ても大きく減少
新型コロナウイルス感染症拡大の多大な影響を受けた2020年上半期のアジア太平洋地域では、M&Aにどのような動きがあったのだろうか。まず、昨年の同時期と比較すると取引額は2,550億米ドルと12%減少していた。全体の取引件数は、13%減少して1,744件という結果に。一方、全世界のM&A取引額は昨年比53%、取引件数32%、大きく減少していることが明らかとなった。アジア太平洋地域の全取引額をセクター別に見ると、最も多かったのは「テクノロジー・メディア・通信セクター」の592億米ドルだった。次いで、「工業、製造、エンジニアリング(IME)セクター」が353億米ドル、「金融サービスセクター」が331億米ドルという結果に。「IMEセクター」は、取引額では第2位の業界だったが、最も影響を受けたセクターの一つでもあり、取引額は2019年上半期の総額773億米ドルから54%も減少していることがわかった。
他に大きな影響を受けたのは、「エネルギー、鉱業、石油、ガスセクター」だ。2020年上半期全体の取引額は215億米ドルで、取引額は28%下落した。消費者セクターは、ロックダウン措置や裁量支出の減少により大きな打撃を受けたことにより、取引額は前年比20%下落、2020年上半期の取引額は222億米ドルまで減少したことが判明した。
下半期はアジア太平洋地域での取引量が増加すると予測
Mergermarketのデータによると、今後6カ月間のアジア太平洋地域の取引は、「工業・製造・エンジニアリング(IME)セクター」と「テクノロジー・メディア・テレコム(TMT)セクター」が、最も活発な動きになると予想。レポートからは、2020年上半期にIME企業が市場に参入したケースは556件、そのうち416件が東アジア地域だったことがわかった。またDatasiteの日本担当責任者 清水洋一郎氏は、「同社のプラットフォームデータによると、日本を含むアジア太平洋地域のM&A活動は、ロックダウン措置の解除や新型コロナウイルス感染症の再拡大により回復と鈍化を繰り返していた。しかし、8月にはTMTセクターをはじめとするアジア太平洋地域のM&A活動は10%増加。条件の改善を続けることで、資産の売却や購入の増加につながり、2020年後半には地域や日本での取引量は増えていくのではないかと予想できる」と述べている。
新型コロナウイルスの影響を受けて一時低迷していたアジア太平洋地域でのM&A市場に、回復の兆しが見られるようだ。今後M&Aを考える企業は、自社の条件を一度見直してみてはいかがだろうか。