帝国データバンクによる「TDB景気動向調査」によると、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、過半数を超える企業の売上高が減少していることがわかった。一方、約2割の企業では売上高の増加を見込んでおり、各企業の明暗が顕在化する結果となった。
新型コロナウイルス蔓延の影響で、5割以上の企業で3月の売上高が減少

感染症の収束後を見据えることが鍵?ヒトやモノへの対応がビジネスチャンスに

新型コロナウイルス感染症拡大は、企業の経営資源である「ヒト・モノ・カネ」に大きな影響をもたらしている。拡大防止策として世界各国で入国制限や外出禁止令が発令されたことにより、ヒトの移動が大きく制限され、それに伴い生産活動が停止し、モノの製造と物流が大幅に減少している。

初期段階で「実物経済(ヒト・モノ)」に影響を与えた新型コロナウイルス。それはやがて「金融不安」へと発展してきているのが現状だ。一方、リーマン・ショックではまず「金融システム(カネ)」を直撃し、次第に「ヒト・モノ」へと波及した。リーマン・ショックの時と今回の新型コロナウイルスとでは、影響の現れ方が全く異なっている。

リーマン・ショックの際は、「ヒト・モノ」への対策を進めつつ、「カネ」の解決策として金融システムの強化と効率化が進められ、収束に向かっていった。「フィンテック」といった新しい金融サービスの台頭やクラウドファンディングによる資金調達などの動きも見られた。

今回の感染症拡大による経済対策においては、まず資金繰りや金融不安など「カネ」への対策を進め、次に「ヒト・モノ」に対する解決を進めることが必要だろう。具体的には、テレワークを始めとした働き方改革、通信販売や製造の国内回帰などの動きが進むと予想される。
新型コロナウイルス蔓延の影響で、5割以上の企業で3月の売上高が減少

3月の売上高。5割以上の企業で減少も、約2割の企業では増加見込み

「TDB景気動向調査」によると、企業の売上高については減少傾向が加速しているという。2019年は売上高が増加している企業と減少している企業の割合が同程度で推移していた。しかし今回の2020年3月の集計結果では売上高が減少している企業は55.8%と過半数を占める結果となった。特に旅館やホテル、家具類小売、飲食、娯楽サービス業などで売上高が大幅に減少している。

一方、約2割の企業では3月の売上高が増加していることが分かった。特に電気通信サービスやソフトウェア、IT向け人材派遣業などで増加が見込まれている。また感染症の影響を受けながらも、収束後を見据え、現在の状況を「ビジネスチャンス」として捉えている企業もあるようだ。例として、電子計算機製造業では「中国から輸入不可となった商品の生産依頼を受けている」といった声のほか、ソフト受託開発業では「テレワーク関連の案件増加が見込める」、飲食料品小売業では「外出が減ることで宅配需要が高まる」といった新たな需要開拓を進める意見もあった。

新型コロナウイルス感染症の拡大により、企業活動に大きな影響を与え続けている。一方、2008年のリーマン・ショック後に起こった変化に適応することであらゆる企業が大きく成長を遂げたように、感染症が収束した後に訪れる社会変化を今から想定しておくことは、企業の生き残りの鍵となるだろう。

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