早期・希望退職者を募集した企業は20社に。前年同期を1社上回る
昨今、人員構成を整備するため、定年前の退職者を募る「早期退職」や「希望退職」を行う企業もあるという。「早期退職」については、人員構成を整えるために制度が常設されていることが多く、「希望退職」は、業績悪化などで人員整理が必要になった際に期間を限定して募集を行う、“リストラの前段階”との意味合いが強い。新型コロナの拡大期には、人員整理が行われた企業も多いだろう。では、アフターコロナのフェーズに入りつつある今、企業における「早期・希望退職」の募集状況に変化はあるのだろうか。
はじめに東京商工リサーチは、「主な上場企業(1‐5月)希望・早期退職募集状況」を集計した。すると、「早期・希望退職」を募集した企業は20社と、前年の19社より1社増加した。同社によると、募集企業の上場区分の内訳は、プライム市場が13社、スタンダード市場が6社、地方上場は1社だったという。
また、早期・希望退職の「対象人数」は、募集人数が判明した15社で1,217人だった。募集した企業は前年よりも増加したが、対象人数は、前前年の1万1,725名、前年の4,473人から大幅に下降していることがわかった。
コロナ禍で早期・希望退職者の募集を行った「運送業」は3年ぶりに「0社」に
さらに同社は、2023年1~5月に早期・希望退職者を募集した20社を、業種別に集計した。その結果、「情報通信」が5社と最も多く、同業種が最多となるのは統計を開始後23年間で初めてのことだという。次に、「アパレル関連」と「電気機器」が各3社、「サービス」が2社と続いた。一方で、コロナ禍では募集が集中した航空・鉄道を含む「運送」の募集は、3年ぶりに0社となった。
募集実施企業の通期損益は「黒字」と「赤字」が拮抗し二極化
続いて同社は、早期・希望退職を募集した上場20社において、直近の通期損益の集計結果を示した。すると、「黒字」と「赤字」はそれぞれ10社と、二極化していることが明らかとなった。同社によると、黒字企業は、10社中7社がプライム上場企業であり、比較的規模の多い企業に集中していたという。また、黒字企業のうち、「増益」と「減益」は各5社と、いずれも拮抗する結果となった。一方で、赤字企業の10社のうち、プライム上場企業は4社と半数以下にとどまった。また、スタンダード上場企業が5社、地方上場企業が1社と、比較的小さな規模の企業に集中していたとのことだ。
募集人数は「100人未満」が半数超え、「1,000人以上」の大型募集は0社に
最後に、早期・希望退職を募集した上場20社における、「募集人数」(募集時点の人数が非開示の場合、応募人数を適用)を集計した。その結果、「30~49人」が5社(構成比25%)と、最も多かった。以降、「100~299人」が3社(15%)、「1~29人」と「50~99人」が各2社(10%)と続いた。「若干名」(2社)を含めると、募集人数が100人未満であった企業は11社(構成比55%)と半数を超えた。一方、100人以上の募集を行った企業は、「100~299人」の3社と「300人以上」の1社で、合計4社にとどまった。なお、同社によると1,000人以上の大型募集を行った企業は0社であったという。この結果について同社は、「事業所はセグメントを限定した募集のほか、規模の小さい上場企業での募集が集中したことも影響した」との見解を示している。