アート引越センター株式会社は2023年1月27日、「転勤実態アンケート2023」の結果を発表した。調査期間は2022年12月28日~2023年1月4日で、従業員300人以上の企業で、社員の転勤に関わる業務に従事する総務・人事担当者322名より回答を得た。調査から、転勤に対する企業の取り組み事情や、1999年に実施した同調査との違い、今後の転勤に関する意向が明らかとなった。
現代の“転勤を伴う人事異動”の実態は? 「本人の希望や意思を反映」が4割以上と、1999年調査より大幅に増加

転勤者への支援策は「赴任旅費」が約6割で最多

人材活用戦略である「ダイバーシティ経営」が注目される今、転居を伴う異動の頻度や時期を見直すなど、転勤において社員の希望と企業のニーズのすり合わせが求められている。では実態として、昨今の転勤はどのように実施されているのだろうか。

はじめにアート引越センターが、「転勤者への支援策として実施しているもの」を尋ねると、「赴任旅費」が59%と最も多かった。以下、「単身赴任手当」(47.8%)、「家賃補助」(47.2%)、「社宅・寮の提供」(45.7%)と続いた。転勤者へ何らかの支援策を取り入れている企業は9割を超えた。
転勤者への支援策として実施しているもの

半数以上が「転勤に関する特例制度」を設置

次に同社が、「転勤に関する特例制度は設けているか」を尋ねると、「設けている」が52.5%で半数を超えたという。

さらに特例制度の具体的な内容を聞くと、「介護特例」(28.6%)や「育児特例」(27.6%)、「出産特例」(24.2%)などがあがった。
転勤に関する特例制度は設けているか

転勤者を選ぶ際に「本人の希望や意思を反映」との回答は、1999年調査の約2倍に

続いて、同社は「転勤者を選ぶ際に、どれくらい本人の希望や意思を反映しているか」を尋ねた。その結果、2023年の調査では「かなり反映」(13.4%)と「どちらかといえば反映」(31.4%)の合計が44.8%となった。1999年の同調査では合計22.6%だったことから、20年強で約2倍に増加しており、以前よりも本人の希望や意思を尊重していることがうかがえる。

さらに、「かなり会社の都合を優先」と「どちらかといえば会社の都合を優先」の合計は、1999年が74%、2023年が50.3%となり、23.7ポイント減少した。
転勤者を選ぶ際にどれくらい本人の希望や意思を反映しているか

転勤に伴う相談は「転勤先の住居問題」が最多。1999年の調査と比べ内容に変化あり

次に同社が、「転勤に伴う社員からの相談はあるか」と尋ねると、72%が「ある」と回答したという。

そこで、「転勤に伴う相談内容」を尋ねたところ、2023年編では「転勤先の居住問題」(48.7%)が最も多く、以降、「仕事内容」(46.1%)、「職場環境」(44%)と続いた。一方で、1999年編をみると「転勤先の居住問題」(75.1%)、「引っ越しの問題」(63.9%)、「転勤形態」(44.2%)が上位となった。最多の項目は変わらないものの、全体的に相談内容の傾向が変化していることが見て取れる。
転勤に伴う社員からの相談内容

半数以上の企業が「転勤をきっかけとした退職者がいた」と回答

続いて、「転勤の辞令をきっかけに退職した人はいたか」を同社が尋ねると、「多い」が8.7%、「たまにいる」が48.1%で、合計56.8%が「転勤をきっかけとした退職者がいた」としていることがわかった。
転勤の事例をきっかけに退職した人はいたか

「転勤の有無が新卒・中途採用活動に影響している」との回答が5割にのぼる

次に同社が、「転勤の有無は新卒や中途の採用活動に影響すると感じているか」を尋ねた。すると、「大いに影響している」(15.5%)と「少し影響している」(36%)の合計が51.5%となった。転勤の有無が採用活動に影響していると感じている人は、半数にのぼることがわかった。
転勤の有無は採用活動に影響していると感じるか

2023年春の「転勤者数」は前年春と比べてやや増加傾向か

続いて、「2023年春の転勤が絡む人事異動は、2022年春とくらべてどうなる見込みか」を同社が尋ねた。その結果、「変わらない」が49.1%と、約半数は「前年から変化はない」と見込んでいることがわかった。

他方で、増減の見通しについては、「増える」(8.7%)と「やや増える」(14%)の合計が22.7%であるのに対し、「減る」(4.3%)と「やや減る」(9%)の合計は13.3%だった。全体的として、転勤が絡む人事異動はやや増加傾向にあることがうかがえる。
2023年春の転勤が絡む人事異動は、2022年春と比べてどうなる見込みか

約4割が転勤の制度や内容を「見直す予定あり」、「既に見直し済み」と回答

最後に同社が、「転居を伴う転勤の制度や内容を見直す予定、もしくはここ数年で既に見直したことはあるか」を尋ねた。すると、「ある」が37.9%と、約4割が「見直し予定」もしくは「見直し済み」であることがわかった。この結果に対し、同社は「現在の市況における物価高が影響しているのではないか」との見解を示している。
転居を伴う転勤の制度や内容を見直す予定もしくは既に見直したことはあるか
2023年の調査時点では、9割以上の企業が転勤者へ何らかの支援策を設けていることがわかった。一方で、転勤の辞令をきっかけとして退職者がいたとの企業が半数を超えた。前回調査(1999年)と比較して「個人の意思を反映」して転勤者を選ぶ企業も増加傾向にあることから、経済状況や個人のニーズに応じた転勤の実施方針を検討していきたい。

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