転勤者への支援策は「赴任旅費」が約6割で最多
人材活用戦略である「ダイバーシティ経営」が注目される今、転居を伴う異動の頻度や時期を見直すなど、転勤において社員の希望と企業のニーズのすり合わせが求められている。では実態として、昨今の転勤はどのように実施されているのだろうか。はじめにアート引越センターが、「転勤者への支援策として実施しているもの」を尋ねると、「赴任旅費」が59%と最も多かった。以下、「単身赴任手当」(47.8%)、「家賃補助」(47.2%)、「社宅・寮の提供」(45.7%)と続いた。転勤者へ何らかの支援策を取り入れている企業は9割を超えた。
半数以上が「転勤に関する特例制度」を設置
次に同社が、「転勤に関する特例制度は設けているか」を尋ねると、「設けている」が52.5%で半数を超えたという。さらに特例制度の具体的な内容を聞くと、「介護特例」(28.6%)や「育児特例」(27.6%)、「出産特例」(24.2%)などがあがった。
転勤者を選ぶ際に「本人の希望や意思を反映」との回答は、1999年調査の約2倍に
続いて、同社は「転勤者を選ぶ際に、どれくらい本人の希望や意思を反映しているか」を尋ねた。その結果、2023年の調査では「かなり反映」(13.4%)と「どちらかといえば反映」(31.4%)の合計が44.8%となった。1999年の同調査では合計22.6%だったことから、20年強で約2倍に増加しており、以前よりも本人の希望や意思を尊重していることがうかがえる。さらに、「かなり会社の都合を優先」と「どちらかといえば会社の都合を優先」の合計は、1999年が74%、2023年が50.3%となり、23.7ポイント減少した。
転勤に伴う相談は「転勤先の住居問題」が最多。1999年の調査と比べ内容に変化あり
次に同社が、「転勤に伴う社員からの相談はあるか」と尋ねると、72%が「ある」と回答したという。そこで、「転勤に伴う相談内容」を尋ねたところ、2023年編では「転勤先の居住問題」(48.7%)が最も多く、以降、「仕事内容」(46.1%)、「職場環境」(44%)と続いた。一方で、1999年編をみると「転勤先の居住問題」(75.1%)、「引っ越しの問題」(63.9%)、「転勤形態」(44.2%)が上位となった。最多の項目は変わらないものの、全体的に相談内容の傾向が変化していることが見て取れる。
半数以上の企業が「転勤をきっかけとした退職者がいた」と回答
続いて、「転勤の辞令をきっかけに退職した人はいたか」を同社が尋ねると、「多い」が8.7%、「たまにいる」が48.1%で、合計56.8%が「転勤をきっかけとした退職者がいた」としていることがわかった。「転勤の有無が新卒・中途採用活動に影響している」との回答が5割にのぼる
次に同社が、「転勤の有無は新卒や中途の採用活動に影響すると感じているか」を尋ねた。すると、「大いに影響している」(15.5%)と「少し影響している」(36%)の合計が51.5%となった。転勤の有無が採用活動に影響していると感じている人は、半数にのぼることがわかった。2023年春の「転勤者数」は前年春と比べてやや増加傾向か
続いて、「2023年春の転勤が絡む人事異動は、2022年春とくらべてどうなる見込みか」を同社が尋ねた。その結果、「変わらない」が49.1%と、約半数は「前年から変化はない」と見込んでいることがわかった。他方で、増減の見通しについては、「増える」(8.7%)と「やや増える」(14%)の合計が22.7%であるのに対し、「減る」(4.3%)と「やや減る」(9%)の合計は13.3%だった。全体的として、転勤が絡む人事異動はやや増加傾向にあることがうかがえる。