「次世代経営人材の不足」と「ミドルマネジメント層の過重な負荷」が組織・人材マネジメントの課題
コロナ禍である現在、中長期を見据えた「組織・人材課題の認識」およびその変化は、どのようになっているのだろうか。はじめに「自社の組織・人材マネジメントの現状としてあてはまるもの」および「コロナ禍において課題感が高まったもの」について、複数回答で尋ねた。
すると、「現在の課題認識」は、「次世代の経営を担う人材が育っていない」と「ミドルマネジメント層の負担が過重になっている」がともに55.2%でトップに。続いて、「新人・若手社員の立ち上がりが遅くなっている」が51.9%、「中堅社員が小粒化している」が51.1%となり、これら4項目が突出していた。
この4項目は、「コロナ禍において課題感が高まっている」でも高い傾向を示した。その他、「コロナ禍での課題感の高まり」が指摘されるものとして、「テレワーク・在宅勤務に関する今後の方針が定まらない」(21%)、「職場の一体感が損なわれている」(20.6%)、「従業員にメンタルヘルス不調者が増えている」(18.7%)などが挙がった。
人事評価の課題は「人事評価制度への納得感」。コロナ禍で「テレワーク下での評価の難しさ」が高まる
続いて、「人事評価に関する課題として現在あてはまるもの」および「コロナ禍において課題感が高まったもの」について複数回答で尋ねた。その結果、「現在の課題認識」としては、「人事評価制度への従業員の納得感が低い」が48.7%、「評価基準があいまいである」が48.3%、「テレワーク下での部下の仕事ぶりの評価が難しい」が46%、「管理職によって取り組みや意識・スキルにばらつきがある」が40.3%となり、いずれも4割以上となった。
また、「コロナ禍において課題感が高まったもの」としては、「テレワーク下での部下の仕事ぶりの評価が難しい」が39.3%で突出していた。
昇進・昇格の課題は「そのものの魅力」。管理職の資質が問われるように
次に、「昇進・昇格に関する課題として現在あてはまるもの」および「コロナ禍において課題感が高まったもの」について、複数回答で尋ねた。すると、「現在の課題認識」としては「昇進・昇格そのものに魅力を感じない者が増えている」が57.4%、「昇進・昇格要件(基準)があいまいで納得性がない」が42.6%、「現管理職の後に続く人材が枯渇してきている」と「管理職全体の質(レベル)が低下してきている」がともに41.8%と続き、いずれも4割以上を占める結果となった。
また、「コロナ禍において課題感が高まったもの」では、「昇進・昇格そのものに魅力を感じない者が増えている」が最多で25.9%となった。
このように、コロナ禍でマネジメント層への負担が増えていることが、人事担当者の課題感を強めていると予測される。
約6割が人材マネジメントの成果指標を「従業員満足度」に。今後は「女性管理職比率」も増加か
続いて、「現在」と「今後」において、「『人材マネジメントの成果』を捉える指標として用いるもの」について尋ねと、「現在」では「従業員満足度」が60.3%で最多に。以下、「有給休暇取得率」が48.9%、「時間外労働時間」が47.7%と、半数近い数字で続いた。「今後」については、「女性管理職比率」(31.4%)が、「従業員満足度」(37.1%)に次いで多く選ばれた。従業員を動機づけるために重要なものは「仕事のやりがい」や「多様な働き方の選択」
最後に、「現在」と「5年後」において、「従業員を動機づけるために重要なもの」について複数回答で尋ねた。すると、「現在」については「仕事のやりがい」が58%、「高い給与」が46.4%と多く選択された。「5年後」についても、「仕事のやりがい」が48.7%、「高い給与」が36.7%で同様に多い傾向だったが、「多様な働き方の選択」が26.9%で、「現在」の15.1%より10ポイント以上高い結果となった。
現在、コロナ禍によりテレワークが拡大しているが、多くの企業では急場の対応となっているため、「従業員の動機づけを高める」という目的での「多様な働き方」については、今後の中・長期的な課題として捉えられていることがうかがえる。