育成が遅れているのは「幹部社員」。マネジメント層の育成不足が顕著か
新型コロナウイルスショックによって社会環境が激変する中、企業における人材育成やDXの推進にはどのような課題があるのだろうか。最初に「育成が遅れていると感じる階層」について尋ねると、「幹部社員」が57.4%と最も多く、「中堅社員(入社5~7年)」が50.7%と続いた。昨年の調査結果と比較すると、「幹部社員」は14.7ポイント増、「役員」は9ポイント増となった。一方で、昨年と比較し数字を下げたのは、「中堅社員」が5.4ポイント減、「若手社員」が9.7ポイント減だった。多くの企業で、部門を動かしマネジメントする人材の育成に遅れを感じており、特に経営幹部の不足はより深刻なようだ。また、昨年比の数字はないが、「後継者」は13.5%が回答している。
採用手法は「求人媒体」と「自社サイト」が多数。新たな採用スタイルは未定着
次に、「実施している、または興味がある採用手法」について尋ねた。その結果、「求人媒体(Web・紙面)」が54.1%でトップだった。以下、「自社採用ページ」が47.4%、「ハローワーク」が33.3%で続いた。一方、「オンライン選考」と「リファラル(縁故)採用」はいずれも約13%で、「ソーシャルリクルーティング」と「ダイレクトリクルーティング」もいずれも約8%だった。これらの新たな採用手法は、まだ充分に浸透していないという結果となった。
全業種で「教育体系・計画の見直し」を重要視する傾向に
続いて、「組織・人材(HR)に関する重要施策」について尋ね、業種別に比較した。全業種とも「教育体系・計画の見直し」が多い傾向にあり、特に製造業・サービス業・卸売業でより重視されていることがわかった。これら3つの業種では「評価制度の見直し」も高く、教育と連動した制度の構築が求められていると示唆された。小売業では、「教育体系・制度の見直し」よりも「評価制度の見直し」が高く、「組織体制の見直し」にも回答が集まった。ここからは、エリアや支店でのマネジメント体制に対する課題がうかがえる。また、住宅・建設業では「ワークスタイルの見直し」や「採用手法の見直し」の割合が高く、働き方改革に対する施策を重視して取り組み始めたといえそうだ。
DXに向けた取り組みをどう評価してるのか?
次に、DX編の調査結果を確認した。「DXに関する投資状況および成果」を尋ねたところ、「実施しているが成果が不十分(不明)」が48.6%と最も多かった。5割弱の企業が、DXを進める中で成果が期待値を下回っている、もしくは過度な期待が評価を下げていると感じているようだ。DXで最も重視するテーマは、全ての業種で共通
最後に、「DXに関する強化領域・重視しているテーマ」について尋ね、業種別で比較した。すると、いずれの業種でも「業種の生産性を高めるためのDX」が最も多く、特に製造業とサービス業でにおいて突出していた。サービス業では、他業種より「人的資源管理のDX」が高い傾向にあった。調査元のタナベ経営によると、他にも「人時生産性」に注目していることや、バックオフィス機能の生産性を主軸としていることがうかがえたという。住宅・建設業では「ワークスタイル変革を目的としたDX」が他業種よりも多く、前述したHR編の重要施策と同様、働き方改革を主としたDX推進を図っていることがわかった。
また、小売業では「マーケティングのDX(MAツール・Web等)」が顕著に高く、マーケティング強化に主軸を置いてデジタル化を進めてしていくと予測される。卸売業は「デジタルを前提とした事業開発」が高い傾向にあり、DXを通してビジネスモデル自体の見直しを図る考えだと示唆された。