社員「店長、人がいなくてヤバイですよ。」
店長「採用を考えないとなあ。」
社員「そうは言っても、今の世の中そう簡単に人は集まらないでしょう。」
店長「新たに高校生も募集対象にしてみようと思うのだが。」
社員「なるほど……、しかし今まで高校生アルバイトを受け入れたことが無いですし、大丈夫ですかねえ。」
この保護規定について、特に注意が必要なポイントとして次の4つが挙げられる。
(1)年齢確認をする
高校生を採用する場合には、その年齢を証明する書面を事業場に備え付けなければならない。(労基法57条)実務上は、住民票記載事項証明書(労基法111条より無料請求が可能)など、生年月日が確認できる書類を提出してもらうケースが多いようである。
(2)高校生本人と労働契約を結ぶ
当然のことながら、労働契約は本人と締結する。高校生の場合、親が「子どもをアルバイトさせたい」と連絡してくることがあるが、親が子の代わりに労働契約を結ぶことはできない。(労基法58条)
(3)高校生本人に賃金を支払う
これも当たり前のようであるが、私が飲食店店長をしていた頃、親から電話があり、“教育上の理由”等で、給料を親の銀行口座に振り込むよう要求してきたケースが何件か実際にあった。しかし親は子に代わって賃金を受け取ってはならない。(労基法59条)もし本人がまだ銀行口座を持っていないというなら、開設してもらう必要がある。
(4)労働時間、休日、深夜業の制限を守る
高校生に対しては、変形労働時間制の適用や、36協定による時間外・休日労働は認められていない。(労基法60条)仮に「夏休みなので毎日朝から晩まで働きます!」と言われても、そういう訳にはいかない。また、午後10時から午前5時までの深夜業についても禁止である。(労基法61条)これらは、年少者保護の観点から当然の規制であると言えるだろう。
以上の特別の保護規定に加えて、高校生の採用にはちょっとしたコツもある。私自身の飲食店店長時代の経験から、最後にそれを紹介したい。
高校生の採用には、普通と異なる要素がある。それは「親」の存在である。いくら労働契約は本人と結ぶと言っても、やはり親の影響力は絶大である。いざとなったら、親はアルバイトを辞めさせることもできるからである。(民法5条、労基法58条)安定的な高校生の勤務の為には、親の協力は欠かせない。
裏を返せば、親が味方になれば、こんなに心強いことはない。何とかしてそうする方法はないだろうか……それがあるのである。“親に挨拶の電話をする”のである。
大切な人様の子を預かるのだ。「責任をもってお預かりします」、と丁寧に心を込めて挨拶をしよう。親が職場に対して好感を持ち、協力的になってくれれば、その後のアルバイト勤務は安定し、早期退職の予防の効果も期待できる。時には、「アルバイト?そんな話聞いてない!」と怒られることもあるかもしれない。その場合は、採用を見送るべきであろう。
高校生でも、大人顔負けの高い意識と能力を発揮する人は大勢いる。職種によっては現場の貴重な戦力になり得る人材の宝庫だ。そしてアルバイトの経験は、高校生本人とっても得難い貴重な人生経験になる筈である。ルールを守って、有意義な高校生アルバイトの活用を目指して頂きたいと思う。
出岡社会保険労務士事務所 出岡 健太郎